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2004.11.22

コーランを知っていますか

コーランを知っていますか
コーランを知っていますか
阿刀田 高

[:しょんぼり:] これまでに同じ作者の「旧約聖書を知っていますか」「新約聖書を知っていますか」を読んでいるが、今回の本はそれらに比べるとまるで面白くない。過去のシリーズ作品(他に「ギリシア神話を知っていますか」「ホメロスを楽しむために」「シェイクスピアを楽しむために」「アラビアンナイトを楽しむために」などがある)と今回の本を比べると、今回は原典をそのまま何の工夫もせずに丸ごと引用している箇所が多すぎる。原典を阿刀田流に噛み砕き、感想を述べたり、再解釈して読者に提示するというのがこれまでのスタイルだったのに、今回は「引用」「解説」「引用」「解説」ばかりで、著者の個人的な見解や解釈があまりにも少ないのだ。またかろうじて個人的見解を述べている場面でも、その声はあまりにも小さくおどおどしている。

 この本のもととなった原稿は、小説新潮の2002年9月号から翌6月号まで連載されていたものだ。この時期にコーランの解説をするというのは、もちろん2001年9月11日の同時多発テロで、イスラム原理主義が注目を浴びたことを受けてのものだろう。その結果、著者は「日本人にあまり知られていないコーランを正しく紹介しなければ」と思ったに違いない。しかし正しく紹介するのは、原文の中から一部を抜粋して、そのまま引用することなのか? いくらコーランが本来的には翻訳すら許されない神の言葉の記録だとしても、イスラム教徒ではない日本人の小説家が、同じくイスラム教徒ではない日本人読者にコーランを紹介する際、ここまで馬鹿丁寧に原典を重視しなくてはならないのか?

 結局この本は、コーランの解説書でもなく、イスラムの解説書でもない、どっちつかずの中途半端なものになってしまっているのではないだろうか。コーランの引用を全編に散りばめつつ、ごく一般的に売られている「イスラム教入門」の知識を水で薄めて地の文にまぶし、阿刀田高風の文体でまとめたのがこの本だろう。この本でもっとも面白いのは、マホメット死後のイスラム共同体分裂を解説した9章「君去りし後」と、著者のサウジアラビア訪問記である10章「聖典の故里を訪ねて」だ。このふたつの章には、コーランの生の引用がほとんど含まれていない。(11/22)

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2004.11.16

プロジェクトX リーダーたちの言葉

プロジェクトX リーダーたちの言葉
プロジェクトX リーダーたちの言葉
今井 彰

[:嬉しい:] NHKの人気テレビ番組「プロジェクトX」の中から、プロジェクトリーダーたちの印象的な言葉を軸に構成し直したダイジェスト版。人間ドラマの細かなディテールは味わうべくもないが、現場を仕切ったリーダーたちの言葉に宿る千金の重みには唸るような迫力がこもっている。いわばこれは、「プロジェクトX」を濃縮して上澄みだけをすくい上げたようなもの。ひとつひとつのエピソードが短くまとめられているので、通勤途中など小間切れの時間に読む本にぴったりだ。だがこれは軽い読み物ではない。この中には実際に生きて汗と涙を流してきた男たち(そして女たち)の生々しい人生の記録がある。この中の言葉のどれかひとつでも心に残れば、この本の価値はあると思う。(11/16)

※この本は現在文庫化されている。

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今井 彰

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2004.11.14

久司道夫のマクロビオティック 入門編

久司道夫のマクロビオティック 入門編
久司道夫のマクロビオティック 入門編
久司 道夫

[:見る:] 玄米食を中心とした和食献立で、体質改善を目指そうというマクロビオティックの入門書。レシピなどは載っていないが、マクロビオティックという考え方の背景にある理論や思想がよくわかる本になっている。これからマクロビオティックに取り組もうとする人は、ぜひこの本を読んでみるべきだと思う。

 僕はこの本を読んで、玄米と味噌汁に温野菜、肉や乳製品は少々という考え方に共感しつつ、その背後にある思想部分についてはオカルトだという印象を持った。マクロビオティックで体質が改善されるだけでなく、人生の諸問題がすべて解決し、それどころか世界平和までつながってしまうような口ぶりなのだ。そんなことは常識的に考えて、あり得るはずがない。それがあり得ると大真面目に考えているのなら、マクロビオティックは食事療法や健康法ではなく、一種の宗教だろう。

 ただマクロビオティックがそうした思想的背景と不可分の存在になっているのは、この食事法がアメリカで発達したことと関係があるようにも思った。マクロビオティックを最初に生活に取り入れたのは、60年代のヒッピーたちだった。彼らは「日本食」の背後に「東洋思想」を見たかったのだろう。そしてマクロビオティックの提唱者であるこの本の著者は、そうした需要側の要求に応える形で、食物の陰陽バランスといった思想体系を作り出していく。

 菜食主義が「主義」という思想の問題であるように、ヨーガが単なる柔軟運動ではなくインド思想と密接に結びついているように、禅がただの瞑想法ではなく仏教思想と切り離せないように、マクロビオティックも一種の思想なのだ。マクロビオティックの実践者は、玄米を食べながら、そのじつ思想を食べているに違いない。

 食物から摂取すべき栄養素の多くを、穀類や豆類から取り込もうというマクロビオティックの考え方そのものに、僕は反対するつもりはない。僕自身玄米食をしていて、体調が改善した経験を持っているからだ。豆も好きだしね。でもマクロビオティックを続けることで、対人関係が改善するとか、仕事がうまく行くようになるとか、性格が変わるといった話を、あまり真面目に受け止めない方がいい。これは「思想」を食べた結果として生じた効果ではないだろうか。(11/14)

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2004.11.12

インタビュー術!

インタビュー術!
インタビュー術!
永江 朗

[:グッド:] 数多くのインタビュー取材を経験している著者による、インタビュー入門。インタビューの定義、具体的な取材方法、取材内容を記事に仕立てるノウハウ、インタビューの文体あれこれなど、実践的な記述が多くて、時々インタビュー取材を行うこともある同業者としては参考になる。最終章では様々なインタビュー本を取り上げて、インタビューに精通した著者がその中身を批評していく。これも面白いし、目の付け所が鋭い。(11/12)

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