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2005.02.20

スクリーンの中の戦争

スクリーンの中の戦争
坂本 多加雄


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 映画評論や映画批評を専門としているわけではない著者が、自身の専門である政治思想研究の立場から映画について論じた本。『パール・ハーバー』と『トラ・トラ・トラ!』から現代ハリウッドの歴史に対する怠慢と商業主義について論じたかと思えば、『太陽の帝国』でアジア近代史における日本の立場を、『地獄の黙示録』と『エマニエル夫人』から欧米人のアジアに対する憧れを、『タクシー・ドライバー』から日常の中に潜む庶民のファシズムを、『明治天皇と日露大戦争』から日本人にとっての近代化と戦争の記憶を、『真空地帯』と『拝啓天皇陛下様』から日本人にとっての軍隊を、『陸軍』と『破れ太鼓』から木下惠介の戦争と戦後を、そして『東京物語』で小津安二郎と日本人を論じている。どれも映画についての一流の批評になっている。

 映画をシーンごとに分析して解釈していく第2章(『太陽の帝国』)、第4章(『タクシー・ドライバー』)、第8章(『東京物語』)は読み応えがある。映画ファンが映画を観ながら頭の中で「このシーンのこの台詞にはこんな意味がある」「この小道具にはこんな象徴的意味が込められている」などと分析しながら映画を読み解いていく作業が、紙の上で見事に再現されているのだ。その分析や解釈が正しいのか、その意見に賛同できるのかという点は別にしても、ここはこの本の中で最も面白い部分だと思う。

 著者は2002年10月に亡くなっており、これは著者の坂本多加雄にとっての遺稿集だという。そのため本来ならビデオやDVDで確認すべきところがおろそかになっていたり(例えば『ロボコップ3』についての記述)、他の資料を参照すればすぐわかることが調べず放置されていたり(例えば『地獄の黙示録』のラストシーンのバージョン違いについて記述がないし、『地獄の黙示録・特別完全版』については存在さえ触れていない)、映画解説本としては不備に思える点も多い。おそらく編集者はこうした欠点に気づきながら、あえてそのままにしたのだろう。映画本としては解説や資料の部分で補足しておいてほしかったところだが、必ずしも映画ファンやマニア向けではない一般向けの新書としては大きな欠点とも言えないだろう。

 ひとつの映画の見方を教えてくれる本としては非常に優れた本。語り口調の文体は読みやすく、映画が好きな人ならおそらく半日ぐらいで読めてしまうと思う。これはオススメできます。(2/20)

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2005.02.10

日本映画 ぼくの300本

日本映画 ぼくの300本
双葉 十三郎


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 先に出版された「外国映画ぼくの500本」の姉妹編。双葉先生の星取表は☆☆☆☆★★が最高点なのだが、日本映画編にはこの最高点がない。ほとんどが☆☆☆★★★どまりで、せいぜいが☆☆☆☆まで。でもまあ、こうなってしまった理由は肌合いの問題なので、仕方がないかな~とも思う。このあたりの事情は、第2部を読むとなんとなく察せられるのだけれど……。

 第2部は「外国映画~」を踏襲して私的な日本映画史になっているが、日本映画も大きな「映画史」の流れの中にあるわけだから、外国映画編の時よりも話は小さくなる。しかしその分より「私的」な要素が強まって、得点関係なしに選ばれたお気に入りの映画、監督、男優、女優、脚本家、キャメラマンなどが紹介されているのは興味深い。「ぼくの採点表」には日本映画についての記述がないので、それを補完する意味でも貴重な本となっている。(2/10)

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