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2005.06.15

ドキュメンタリーは嘘をつく

4794213891ドキュメンタリーは嘘をつく
森 達也


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 『A』『A2』の森達也監督が、テレビと映画のドキュメンタリーについて書いた本。もともと草思社のPR誌「草思」に連載されていた記事に手を入れたものだが、最初から1冊の本にする想定で書かれていたそうで、ありがちな「雑誌の雑文の寄せ集め」にはなっていない。ドキュメンタリー映画の歴史、日本のテレビドキュメンタリーの歩み、森達也流のドキュメンタリー論など、よくまとまった内容になっていると思う。

 これはドキュメンタリーについて現場の人が書いた本のほとんどに言えることなのだが、ドキュメンタリーとは何か、ドキュメンタリーの表現としてどこまで許されるのか、ドキュメンタリーとフィクションの境界はどこにあるのかなどの事柄について、明確な回答というものがない。それはドキュメンタリーの作り手が常に自分で考えるべきことであり、その考える過程そのものがドキュメンタリーを作るという作業とういことらしい。なんだかスッキリしないのだが、これが現場での偽らざる気持ちなのかもしれない。

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2005.06.14

僕が批評家になったわけ

4000271059僕が批評家になったわけ
加藤 典洋


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 僕は映画批評家を名乗っている。なぜ「評論家」ではなく「批評家」でなければならなかったのか。「評論」と「批評」はどう違うのか。そんなことをあれこれ考えた末に、現在は「映画批評家」という肩書にそれなりに満足している。で、この本は文芸評論家が、「批評とは何か?」について述べている本だ。

 僕はここに書かれていることの半分も理解できなかったのだが、それは面倒くさそうな引用文をあらかたすっ飛ばして斜め読みした結果でもある。どのみち映画批評に直接参考になるような本ではないので、僕は著者の言わんとすることが何となくわかればそれでいいかな~と思っている。で、そんなつもりでこの本を読むと、著者の問題とするポイントが、普段僕が考えていることと結構似通っていることに気づいたりもした。

 これは批評家や評論家が、みんな似たようなことを考えるということなのだろうか。それともたまたま、僕がこの著者の記述の中に自分を投影しているだけなのだろうか。そんなことを考えたりもする。

 Amazonの表紙写真によると、この本の表紙は青いカバーに文字だけということなのだが、書店に並んでいるときはその上にさらに、著者名の上に穴の空いた黒いカバーがかかっている。Amazonが見るところによると、これはカバーではなく「帯」ということらしい。そうなのかな~。

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2005.06.10

イエス―あるユダヤ人貧農の革命的生涯

4400120333イエス―あるユダヤ人貧農の革命的生涯
ジョン・ドミニク クロッサン John Dominik Crossan 太田 修司


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 クロッサンの代表作だと思うが長らく品切れ状態。昨年末に新教出版社から重版されたので購入した。ただしAmazonでは扱いがないので、銀座の教文館で買ったのだけれど……。

 僕は同じ著者の「誰がイエスを殺したのか―反ユダヤ主義の起源とイエスの死」を先に読んでいたので、イエスの受難についての記事は前回の復習のようになった。しかし洗礼者ヨハネについて論じた部分や、イエスの宣教スタイルを「ユダヤ的キュニコス主義」と分析した箇所などはなるほどと思わされた。しかしヨハネの宣教についてはまだ「ユニークな仮説」という印象が強い。一歩間違えると小説だ。

 福音書記者のマルコは女性だった可能性があるとか、イエスの弟子たちは男女一組で宣教に派遣されたという説も、「え~、それはないだろう!」と思う。学問的な反論が僕にできようはずがないけれど、「それは違う」と僕の心の中で何者かが叫んでいるぞ。復活のイエスや奇跡伝承についての解説になると、原始キリスト教団の神学や釈義についての仮説ばかりで、説得力が格段に弱くなる。

 既存の「キリスト教」や「キリスト教史」に深く鋤を入れて掘り返した本だとは思うが、まだその後の地ならしができていないような気がする。「キリスト教とはこんなもの」「キリスト教史はこんなもの」という先入観をまず捨てさせて、「本当はこうだったのかもよ?」と読者を挑発するが、その先には特に何もないような……。面白いんだけど、かえってよくわからなくなってしまう本だ。

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2005.06.06

キリスト教の原点―キリスト教概説〈1〉

490221105Xキリスト教の原点―キリスト教概説〈1〉
百瀬 文晃


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 著者が上智大学で行っているキリスト教概説の講義内容をまとめた本の第1巻。イエスの宣教からキリスト教信仰が生まれるまでを、最近の聖書学の成果を取り入れながら丁寧に解説している。クリスチャンでも求道者でもない学生向けの講義がベースになっているため、教養としてキリスト教を知っておこうとする人にとっては打って付けのテキストだろう。もちろんキリスト教を信じる人にとっても、信仰の成り立ちや聖書の読み方について学べると思う。

 現代の批判的な聖書学や神学の流れを十分にくみ、わからないことはわからないと正直に書き、最新研究では概ねこう考えられていると学説を紹介するなど、2千年前の歴史的事実を振り返る限界をきちんと明示してあるのがいい。バランスの取れたキリスト教入門として、誰にでもお勧めできる好著だと思う。

 ただし僕もこの著者の主張に、全面的に賛同しているわけではない。イエスがなぜ殺されねばならなかったのか、イエスの最後のありさまはどうだったのかなど、あちこちで「そんなに簡単な話なのかな~」と納得しかねるところもある。しかしこれは異説を紹介し始めるときりがなくなるわけで、このボリュームではこれが限度なのかもしれない。

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2005.06.03

機長からアナウンス

4101160414機長からアナウンス
内田 幹樹


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 元国際線のパイロットで、ミステリー作家でもある内田幹樹のエッセイ集。単行本が出たのは2001年3月でまだ9.11テロの前だが、文庫化が2004年なのであとがきでそれについてフォローしてある。パイロットとスチュワーデスはそれほど親しくないどころかむしろ仲が悪い(?)とか、訓練用のフライトシミュレーターは大層よくできていて本物以上だとか、自動操縦で離陸はできないが着陸はできるとか、乗客からは余り見えない航空業界の現場がよく見えてくる。

 もっとも僕はあまり飛行機を利用しないので、読んでいてもあまりピンと来ないことも多い。国際線で数時間の長旅をするときに、暇つぶしに読むと面白いと思う。

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2005.06.01

映像プロフェッショナル入門―映画・テレビの現場のクリエーターのために

4845904578映像プロフェッショナル入門―映画・テレビの現場のクリエーターのために
安藤 紘平


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 映画(映像)製作の技術的な入門書。これを読んでおけば、映画やテレビについての技術的な事柄についての基礎的なことがだいたいわかるはず。少なくとも映画評を書いていて、「えーと、こういうテクニックは何て呼ぶんだ?」と思ったときには、サッと答えが出てくる程度の便利さはある。もちろん、企画にしろ、脚本にしろ、撮影にしろ、演出にしろ、各専門分野にはさらに知らなければならない細かな事柄がたくさんあるわけだが、この本は映画の全体を俯瞰できるという意味で優れたものだと思う。

 映画製作そのものには興味のない一般映画ファンも、技術的なことを知れば映画についての視点が広がり、より映画を観るのがより楽しくなるものだ。僕などはそのために、いろんな技術関連書を読んでしまう。監督やキャメラマン、編集マンなど、各分野のスペシャリストにいての本も面白いけれど、それぞれの仕事がどう有機的につながっているのかを、一歩か二歩引いて全体を眺める視点が欠けていることもある。この本は各分野の詳細には踏み込まず、あくまでも全体像を視野に入れている。カメラアングルで言えば全体を捉えたマスターショットのような記述だ。

 2004年初版の本なので、デジタル技術を使った特殊効果やデジタルシネマなど、最新テクノロジーについての紹介もまだそれほど古びていないのがいい。

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ドキュメンタリー 私の現場―記録と伝達の40年

4140808187ドキュメンタリー 私の現場―記録と伝達の40年
相田 洋


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 「東京大空襲」「核戦争後の地球」「電子立国・日本の自叙伝」など、NHKで数多くの優れたドキュメンタリー番組を作ってきた著者による、きわめて実践的なドキュメンタリー講座。NHK入社から退職までの歩みに沿って、ラジオ番組のドキュメンタリー、初期のテレビ・ドキュメンタリー、ドキュメンタリー映画とテレビ・ドキュメンタリーの違い、技術発達と表現の変化などを、具体例を出しながら紹介していく。また、企画の立て方、構成台本の書き方、取材や交渉の方法、素材の整理方法、編集による演出などは、ドキュメンタリーを作る人にも見る人にも参考になるだろう。

 編集機にフィルムをかけっぱなしにしていた何気ない行為から、それまで気づかなかった新しい編集技法を編み出したエピソード。「ウィークエンダー」に触発されて、「石油・知られざる技術帝国」のスタイルを作ったという話。そして「核戦争後の地球」のために開発した、数々の特撮技術。「自動車」で紹介される、文字によるジャーナリズムと映像によるドキュメンタリーの決定的な違い。どのエピソードも、著者が自らの体験を書いている強みで、読んでいてワクワクするような臨場感がある。

 別々にインタビュー取材した対象人物たちが、画面の中でまるで会話や議論をしているように見える編集の面白さ。これを作るために、取材テープから詳細な台帳を作っているというのには驚かされた。言われてみれば、確かにそうでもしないと、あの「擬似会話」は生み出せない。でもテープのチェックだけで何ヶ月もかかるというその作業を、ほとんどまねする人がいないというのもわかるような気がする。

 ドキュメンタリー番組のメイキング本としては、最近読んだどの本より面白い。その方法論や技術は、劇映画やテレビドラマをみたり作ったりする際も参考になるかもしれない。

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