ワールド・シネマ・ヒストリー
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映画の創成期から現代までの歴史的流れを、平明に綴った「映画史」の本。ハリウッド映画やフランス映画、日本映画など、特定の国の映画史についてなら新書サイズの本がいくつも出ているのだが、世界映画史について、しかも現代までを網羅したものは、ありそうでなかなかないのだ。そうした点で、これは便利な本だと思う。
各章ごとに、それぞれの時代の映画以外の主な出来事が年表式にまとめられていたり、映画史や映画技術にまつわるキーワードが簡単な用語集のようにまとめられているし、映画音楽、テレビ、製作などについては、映画史の流れとは別にコラム形式で歴史的な流れを紹介しているのはわかりやすい。
ただし難点もある。それは主として翻訳とブックデザインという、原著者にはまったく責任のない領域での問題だ。映画タイトルや人名が、日本で普通に使われているそれと違っているのが、まず不親切だ。知った上でやっているなら余計なお世話だし、知らずにやっているなら編集者の校閲ミスだろう。「ローランド・エメリッヒ」を、「ローラント・エンマーリッヒ」などと書かれてもピンと来ないし、『いつか晴れた日に』を『分別と感受性』などと書かれても困るのだ。本来の発音を優先するならそれでもいいし、原題の直訳で通すならそれでもいい。しかしこの本の場合、態度が徹底していなくて表記がじつに気まぐれだ。
目次では明確に章の分割がなされているのだが、本文ではそれが不鮮明なのはデザインの悪さだろう。このため映画史の大きな“まとまり”がつかみにくく、全体にノッペリと平板な印象の映画史になってしまっているのは残念だ。個々の映画作品や作家の評価はさておき、全体の記述はそれほど大きな偏りのないもの。それだけに訳文やデザインといった部分で、批判せざるを得ないのは残念。
原著にない90年代後半以降の世界映画事情を、本文の続きとして訳者が補っているのは余計なお世話という印象が強い。これは「訳者あとがき」のような部分で、著者の記述と明確に分けて記述すべき内容だったように思う。
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