エイゼンシュテイン
映画史に残る古典的名画『戦艦ポチョムキン』の監督、セルゲイ・ミハイロヴィッチ・エイゼンシュテインの伝記。革命前のロシアに生まれ、革命の動乱で家族が離散し、革命の中で新しい演劇運動に身を投じ、やがて映画の世界に移り、『戦艦ポチョムキン』という一世一代の作品で国際的な名声を博したエイゼンシュテイン。しかしその彼の目の前で、革命は専制に取って代わり、新しい芸術運動は音を立てて崩れ落ちていく。エイゼンシュテインが理論化したフォルマリズムは政治的非難を浴び、リアリズムこそが政治的に正しいとされる社会の中に、エイゼンシュテインの居場所はなくなっていく。これはエイゼンシュテインという一人の芸術家の視点から見た、ロシア革命史でもあるのだ。著者は映画監督の篠田正浩。
20世紀思想家文庫の第3巻として岩波書店から発行されていたもので、現在は絶版になっているのを僕は古書店で見つけて手に入れた。この初版は1982年で、定価は1,500円。このシリーズでは他に、トーマス・マン、チョムスキー、ハイデガー、ピカソを取り上げているのだが、作家もいれば思想家も映画監督も画家もいるという、ちょっと変わったシリーズだ。しかもそれらを「思想家」としてとらえようとしているところが面白い。
エイゼンシュテインは映画に関する論文を数多く発表して、キネマ旬報社から未完の全集も発行されていた。(現在も部分的には手に入るが大部分は品切れ状態。)エイゼンシュテインの思想を解説していく著者の筆致は、さすがに早稲田大学文学部卒という感じ。日本の古典文学や歌舞伎の伝統を踏まえつつ、エイゼンシュテインの理論を日本人向けにアレンジしているのだ。しかし僕は日本の古典の素養がないので、この置き換えでも意味がよくわからない部分が多かった。

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