禁じられた福音書―ナグ・ハマディ文書の解明
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カトリック教会(カトリック信仰)成立以前の多様で多彩なキリスト教の世界を、「トマスによる福音書」に代表される正典外資料や、エイレナイオスの「異端反駁」に記載されている異端論争を通して浮かび上がられる初期キリスト教史。異端の福音書とされた「トマスによる福音書」と新約聖書正典となった「ヨハネによる福音書」を比較しつつ、初期カトリシズム信仰におけるキリスト論の発達を論じる視点はユニークで新鮮。いわゆる正統派キリスト教はその後、ヨハネのキリスト論を通してマタイ・マルコ・ルカの共観福音書を解釈しているという指摘は、当たり前のようだけれど目から鱗が落ちるようなものだった。
キリスト教の誕生から数百年の間、キリスト教内部にはさまざまなキリスト論があり、それにもとづいた教会論と教会運営が存在した。しかしそれらをひとつの「普遍的な教会」にまとめるために、それまで数百年にわたって「正統」とされてきた信仰の多くを「異端」として切り捨てたのだ。これは周囲から迫害され続けたキリスト教が一致結束して生き延びるために必要な歴史的な必然だったのかもしれないが、それによって失われたものも多い。
「トマスによる福音書」の再読を迫る本だと思う。「トマス」の描くイエスを通して、共観福音書を再読してみたい。それによって、我々は2~3世紀に確かに存在した、別のキリスト教に出会うことができるのかもしれない。
| ナグ・ハマディ写本―初期キリスト教の正統と異端 | |
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