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2006.02.25

カレーライスと日本人

カレーライスと日本人
森枝 卓士
講談社 (1989/02)
売り上げランキング: 124,475
 カレーライスの起源はどこにあり、いかにして日本人の国民食になったのかを探るドキュメント。カレーの源流を求めて東南アジアからインドにさかのぼり、インド人に日本のカレーを食べさせて「美味い!」と言わせるくだりはケッサク。ここでインドのカレー事情を観察した著者は、インドには存在しないカレー粉のオリジナルを求めて、かつてのインドの宗主国イギリスに渡る。そこにある老舗の食品メーカーC&Bこそが、世界で最初にカレー粉を作った会社だったからだ。しかしC&Bにはカレー粉誕生にまつわる資料がほとんど存在しない。著者の旅は続く……。

 カレーライスについては他にも何冊かの本が出ているようだが、カレーのルーツや日本人とカレーの関わりについては、これ1冊読めばだいたいわかる。海軍カレーに代表される「軍隊でカレーを食べた兵士が地方にカレーを広めた」とされる説をあまり重要視せず、古い料理本や聞き書きなどから、洋食店や学生寮などにも幅広くルーツを求めていく姿勢には感心する。

 まあ「軍隊こそカレーの元祖」という説の方が、面白いことは面白いんだけどね……。

日本人はカレーライスがなぜ好きなのか
井上 宏生
平凡社 (2000/11)
売り上げランキング: 163,796
おすすめ度の平均: 3.5
3 証拠がない
4 カレーの歴史がわかる本

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論文をどう書くか―私の文章修業

論文をどう書くか―私の文章修業
佐藤 忠男
講談社 (1980/01)
 映画評論家・佐藤忠男の自伝的な「批評入門」。タイトルは「論文」となっているが、その中身は映画に始まるさまざまな事柄についての「批評」だ。理系の「論文」をいかに書くかという本はたくさん出ているし、文学作品の批評理論についての本もたくさんあるが、映画も含めた文学・文芸批評をいかに書くかという本は、じつは珍しいように思う。しかもこの著者は、理論やハウツーとはまったく別のところから、まったくの独学で自分自身の批評スタイルを作り出している。その試行錯誤の道のりが、同じようにまったくの独学で映画批評家などと名乗っている僕にはじつによくわかるのだ。書かれていることの多くに、大きく肯かされることが多い。

 著者の主張で一番共感したのは、批評というのは結論があって書いていくものではなく、先行きがわからないまま、書いているうちに自分でも思いがけない結論が導き出されていくのだと述べている部分だった。僕が自分で「映画瓦版」の記事を書いているときもまったく同じ。映画を観た直後の漠然とした感想はもちろんあるし、そこで映画評のキーワードや書き出しの一部が頭に浮かぶこともある。しかし実際に書いてみないと、それがどんな形になるのかはまったくわからない。文章を書くことで自分の考えが整理され、こそを深く掘り下げることで、映画を観ていたときやその直後にはまったく気づかなかったことが、いきなり浮かび上がってくることが多いのだ。

 映画を観た直後に最初からきちんとした感想が固まってしまい、それをただ文字にするだけならば、映画評を各作業などつまらないものだろう。それは頭の中にある文章を、文字として固定化するだけのものだからだ。映画評に限らず、作文の面白さは、自分が書いている文章と、自分自身との「対話」の面白さなのだ。何かを書くことで、自分の考えがより深まり、考えの弱点も見えてくる。そこから別方向に仮説を軌道修正すると、そこに思いがけない結論が待ち構えていることがある。書くことで、自分の知らなかった自分に出会える。書くことは楽しいことだ。

 これは映画ライターに限らず、フリーライターという仕事で食べていこうとする人にとっては、とても参考になる本だと思う。しかしこれが、一般の人にどれだけ役に立つのかは謎。普通の人にとっては、やはり「レポートの書き方」とか「理系のための論文の書き方」のような、実践的入門書の方が役立ちそうだ。

わが映画批評の五〇年―佐藤忠男評論選
佐藤 忠男
平凡社 (2003/09)
売り上げランキング: 411,781

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2006.02.15

モンタージュ探究―映画の文法入門

montage

 1981年に神田の矢口書店から出版された本。著者はドキュメンタリー映画監督でもある谷川義雄。矢口書店は神田神保町にある映画演劇関係の本を扱う老舗の古書店だが、こうした本の版元になっているとは知らなかった。しかしこの本、4,500円というとんでもない定価がついている。今の4,500円でもずいぶんな大金だが、25年前の4,500円はもっと大金だ。いったいこの本を、どこの誰が購入して、どう使ったのだろうか。それがまったくわからない。むしろこれは、自費出版に近い扱いではないのだろうか。

 中身は映画初期の歩みから始まり、名作名画のモンタージュ分析、さらには著者自身による想定シナリオと想定モンタージュからなる。シーンが引用されている映画は以下の通り。

『アメリカ消防士の生活』 エドウィン・S・ポーター
『大列車強盗』 エドウィン・S・ポーター
『國民の創生』 D.W.グリフィス
『母』 フセヴォロド・プドフキン
『ストライキ』 セルゲイ・エイゼンシュテイン
『戦艦ポチョムキン』 セルゲイ・エイゼンシュテイン
『全線―古いものと新しいもの』 セルゲイ・エイゼンシュテイン
『羅生門』 黒澤明
『夜と霧』 アラン・レネ

 モンタージュの組み立てを分析するために映画のシーンを抜き書きしていくことは、勉強としては重要かもしれないが、それを読んだところでどれだけの勉強になるのかはよくわからない。映画をビデオソフトやDVDで簡単に観ることができる時代には、映画からこうして再現された文章より、実際に映画そのものを観た方が手っとり早く、かつ正確なことがわかるのではなかろうか。特にただシーン分析に終始している『羅生門』や『夜と霧』などは、それを特に強く感じさせる。

 モンタージュ理論はロシアで発達したものだし、エイゼンシュテインの「衝突のモンタージュ」はその後の映画に強い影響を与えている。この本でもプドフキンとエイゼンシュテインの作品について述べている部分が多い。『戦艦ポチョムキン』のDVDは購入したのだが、『母』『ストライキ』『全線』なども観ておいた方がいいのかな。『アメリカ消防士の生活』も「映画史」的には観ておいた方がいい作品なんだろうけれど……。まあそんなわけで、この本を一読するとAmazonのカートがさらに古い映画のDVDで埋まっていくという仕組みになっている。

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2006.02.12

魔術師メリエス―映画の世紀を開いたわが祖父の生涯

魔術師メリエス―映画の世紀を開いたわが祖父の生涯
マドレーヌ マルテット・メリエス Madeleine Malthete Melies 古賀 太
フィルムアート社 (1994/04)
売り上げランキング: 612,182
 リュミエール兄弟と共に映画の父と讃えられ、代表作『月世界旅行』(1902)で映画史に永遠にその名を残すであろう幻想映画の開拓者、ジョルジュ・メリエスの伝記。著者のマドレーヌ・マルテット・メリエスは幼いころにメリエスと生活を共にしていたという孫娘だが、祖父の業績を一方的に礼賛するのではなく、その人間的な欠陥(女性関係は相当でたらめ)や映画作家としての限界(最後は時流に取り残されて破産)なども、愛情のこもった筆致で丁寧に描写されている。これを読むとメリエスの本職はあくまでも魔術師であり、映画も彼にとっては魔術の一種でしかなかったのではないかと思えてくる。彼がパテやゴーモンなどの大手資本と提携できなかったのも、彼の魔術師としての立場ゆえだったのではなかろうか。

 メリエスは世界で最初のインディペンデント映画作家のひとりであり、最後までインディペンデントであり続けた。彼は1896年から1912年まで映画を作っていたわけだが、その映画作家としての全盛時代はおそらく10年に満たないだろう。1897年に世界最初の本格的な映画製作スタジオを建設し、1906年ごろにはもう観客から飽きられている。メリエスの何かが変わったというより、これは観客の嗜好が幻想からリアリズムに変化して行った結果なのだろう。

 巻末には500本以上にもなるメリエスの作品リストがあるが、そのほとんどは現在失われている。しかしそのうちの100本以上が現在は発見されていて、この本の著者であるマドレーヌ・マルテット・メリエスは、世界各地でメリエス映画の上映会を行っている。その様子は「メリエス・マジック・ショー」というタイトルで記録され、映画ガイドブック「死ぬまでに観たい映画1001本」の特典DVDになっている。アメリカでは「Melies the Magician」というドキュメンタリーの特典になっているようだ。この伝記を読めば、メリエスの実際の映画を見たくなること請け合い。僕も何枚かDVDを持っているが、その作品の多くは今でも驚きと喜びに満ちている。

Melies the Magician
Melies the Magician
Facets 2002-01-15
Sales Rank : 28759

Average Review star
starReal movie magic
starA good introduction.
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