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2007.02.15

パワー・フォー・リビング

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 正月早々、テレビや新聞などへの大規模な広告出向で話題となった「パワー・フォー・リビング」だが、その実態はキリスト教系伝道団体による文書伝道だ。申し込むと送られてくる無料冊子には、キリスト教の基本的な教理や聖書の言葉、聖書を読むことの推奨などが書かれている。主張の内容は保守的なプロテスタント信仰に沿ったもので、特に原理主義的だったり、過激だったり、カルト的なものではない。広告の段階でキリスト教の名を少しも出さなかったことで、かえって一般の人に不審に思われたり不気味に思われたりしたようだが、これは日本の事情をよく知らないまま海外の方法論を持ち込んだ結果であって、まあ自業自得だろう。

 ところで「パワー・フォー・リビング」がどの程度、日本におけるキリスト教の伝道に役立つかなのだが、僕は正直言って、これではまるで役に立つまいと考える。細かいところで日本向けに手を入れてはいるものの、この本の内容はある程度聖書やキリスト教について予備知識を持っている欧米人向けなのだ。少なくとも一神教的な「神」の概念を持ち合わせている人でない限り、この本に書かれているイエス・キリストという概念が理解できないのではなかろうか。

 日本に霊的なことを語る土壌がないわけではない。むしろ最近はスピリチュアル・ブームで、さまざまなところで人間の霊性について語られる機会が多い。テレビでもその手の番組をたくさん放送している。雑誌にも記事が出ている。でもスピリチュアリズムというのは、結局のところ「人間が神様になれる」という考えなんだよな〜。それに対してキリスト教は、人間と神の間に絶対的な距離を置き、神と人とを結ぶ唯一の道としてイエス・キリストを置く。これが日本人には馴染めないと思う。まあ中にはこの本を読んでキリスト教に導かれる人もいると思うけれど、それはこの本を配布した団体が期待するものをずっと下回るだろう。

 僕自身はこうした文書伝道を否定はしないし、キリスト教を知る人が日本にもっと増えてもいいと思っている。(キリスト教を信じる必要はないけどね。)でもせっかくこれだけの費用をかけて大々的なキャンペーンをするなら、もっと日本人の現状に適合したやりかたや表現があってもいいんじゃないかな。「パワー・フォー・リビング」はジェイミー・バッキンガムという人が書いているんだけど、これは日本人のキリスト教作家にでも頼んで全面的に書き直してもらうべきだったかもしれない。保守的なプロテスタント信仰を持つ作家として今は誰がいるのか知らないけど、探せば誰かいるんじゃないの?

 あるいは広告のプロであるコピーライターなどに依頼して、キリスト教の魅力をたっぷりと伝えられる冊子を作ってもいい。単なる翻訳ではない、日本独自の何かを作らない限り、日本でキリスト教が理解されることはないんじゃないかな。「パワー・フォー・リビング」にいくらの金をかけたのかは知らないけれど、これはほとんどお金をどぶに捨てたようなものだと思う。

 それにしても、「パワー・フォー・リビング」は露骨に福音派だな〜。巻末の推薦図書で、聖書として「新改訳」と「リビング・バイブル」を勧め、日本で最も流通していると思われる「新共同訳」を無視してしまうというのがすごい。引用する聖書も「リビング・バイブル」だしな〜。「リビング・バイブル」は、果たして聖書と呼べるのか? 僕はあれを、聖書に限りなく忠実な「聖書物語」だと思っているんだけど……。

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