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2007.07.30

映画三国志―小説東映

Photo映画三国志―小説東映
大下 英治
徳間書店 1990-05

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 日本のメジャー映画会社である東映の歴史を、岡田茂など会社経営社たちの側から描いたノンフィクション・ノベル。いろいろな映画関連本、インタビューなどを資料にしつつ、東映に係わった人々の姿やそこで起きた事件を紹介している。知っている話もあれば、知らなかった話もあって面白い。東映の歴史を通して見た、戦後日本映画史でもある。

 あくまでも小説なので、資料にはならない。しかし映画にまつわるいろいろな言葉やエピソードは著者が別の資料から引用しているものなので、それはそれなりに参考にはなる。

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2007.07.28

映画のタイクーン―マス芸術の創造者たち

Photo映画のタイクーン―マス芸術の創造者たち (1972年)
栗山 富夫
みすず書房 1972

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 ハリウッドのメジャースタジオを牛耳っていた大物プロデューサーたちの生態を、細かなエピソードを交えながら浮き彫りにした本。訳者は助監督時代の栗山富夫。人物ごとの伝記ではなく、時代ごとに大きく区切ってあるわけでもないので、資料として使うには少々厄介な本なのだが、ハリウッドのタイクーンたちの姿を生き生きと描き出すには、むしろこのスタイルが良かったのだろう。

 ハリウッドの表現規制や赤狩りについて、会社経営者側からの話が書かれていたのが新鮮。特に赤狩りについてはどうしても、ハリウッド・テンに代表される「被害者」側から見た資料が多いのだが、視点を映画会社の経営者側に移すと、そこにはまったく違った風景が見えてくる。黄金時代のハリウッド(1920年代〜1940年代)について、映画作品とはまったく別の視点から描かれた本として面白く読めた。

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2007.07.21

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ

433403392X字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ
太田 直子
光文社 2007-02-16

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 字幕翻訳家の太田直子さんが、仕事を通じて日本語について感じているアレコレを書きつづったエッセイ。映画字幕についての裏話は既に幾つかの本が出ているので、それらと重複するような話は極力避けられている様子。つまり「映画字幕はこんな風に作られてます」とか、「映画字幕は翻訳とはちょっと違います」なんて話はあまり載ってない。映画字幕製作の舞台裏を知りたいなら、他の本の方が参考になるだろう。(もちろん裏話も少しは書いてあるんだけどね。)

 この本で面白いのは、字幕翻訳家と映画配給会社の綱引きや駆け引きを赤裸々に書いている部分だ。映画作品の意図をねじ曲げてでも、観客に感動を押し売りするかのような字幕を求める担当者たちと、できるだけ映画本来の意図を優先させようとする著者の攻防。(タイトルは伏せられているけれど、実話をもとにした映画ってのは『サルバドールの朝』のことかな。)映画の中に台詞がないのに、そこに無理矢理字幕を付けちゃう話とか、登場人物のちょっとした台詞を、勝手に気持ちをくみ取って超訳してしまう話とか、いかにもアリソウで苦笑いしてしまう。映画の字幕を作るのは確かに字幕翻訳家なんだけど、完成した字幕が配給会社の判断で勝手に直されてしまうことがあるとなると、下手くそな字幕があったとしても、それは字幕翻訳が悪いのか配給会社が悪いのか判断できませんな。

 まあ字幕翻訳家を選ぶのも配給会社の仕事だから、字幕がヘボならその責任は配給会社にあるんだとは思うけどね……。

 いわゆる禁止用語(不快語や差別語)の扱いについての話題もなかなか面白く読めたし、字幕版と吹き替え版についての話も面白い。ただしこの本、全体としてのまとまりはあまりない。個々の話題についても、映画に関係の深い話もあれば、まったく映画と関係のない話も出てきたりする。ものすごく面白い部分もあれば、ひどく退屈な部分もある。しかし映画を通して日々「日本語」と向き合っている著者の言葉には肯けるところも多く、読んでいて刺激にはならないけれど、「よくぞ言った!」と溜飲が下がる箇所も多い。

 著者は字幕翻訳の将来にちょっと悲観的なことも述べているが、日本が映像輸入大国である限り、今後も字幕翻訳の需要はなくならないと思う。ただし労働環境は厳しくなりそうだ。字幕翻訳の仕事はなくならなくても、職業としての「字幕翻訳家」はかなり大変だろうと思う。この本の中にも、薄給で使い捨てられていく翻訳家の話が出てくる。学生アルバイトみたいな形で、映像字幕の仕事に係わる人は増える。しかしそれは素人に毛が生えたようなものであって、長い経験と技術に裏打ちされたプロの水準には達していない。若手のギャラは安く、志望者は多いので人材は使い捨てになる。日本人は相対として国語力が落ちている。配給会社の担当者が字幕の品質にこだわらなくなれば、 字幕翻訳の質だって際限なく低下していく……。悪循環だな〜。

4768477712字幕仕掛人一代記―神島きみ自伝
神島 きみ
パンドラ 1995-11

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2007.07.11

「殺陣」という文化―チャンバラ時代劇映画を探る

4790712362「殺陣」という文化―チャンバラ時代劇映画を探る
小川 順子
世界思想社教学社 2007-04

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 日本の時代劇に特有の「殺陣」を取り上げ、ひとつの映像文化として掘り下げていこうとした本。映画ガイドではなく、中身はあくまでも硬派の研究書。殺陣やチャンバラを取り上げる本が得てして映画論や俳優論、作品論に流れるのに対し、この本は何とかして「殺陣」そのものに踏みとどまろうとしている。その心意気やよし。ただし映像作品を研究する常として、書籍では映像作品そのものを引用できないという弱点がある。この本でも、それが克服できていない。

 他の時代劇本、チャンバラ本では、殺陣のシーンを言葉で再現していこうとするわけだが、この本の著者はそれが苦手なのか、そもそもそれをする気がないのか、「殺陣」というきらびやかな映像世界を取り上げている割には、文章は素っ気なく味気ない。より具体的に言うなら、この本を読んでも取り上げられている映画を観てみたいとはあまり思えないのだ。もちろんこれは、読者を映画作品に誘うガイドブックではないから、そんなことは関係ないと行ってしまうことも出来るんだけど……。

 方法論はともかくとして、議論があまりツボにはまっていないような印象を強く受けるのだ。例えばそれは取材の姿勢にも現れていて、巻末に収録されている藤蔭静枝のインタビューが、そもそもなぜこの本に収録されているのかすらわからない。

 著者も参考にしたという永田哲朗の「殺陣―チャンバラ映画史」の足下にも及ばない本。「殺陣」は現在絶版なので、どこかが復刊してくれないかな〜。

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