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2007.11.21

神と科学は共存できるか?

4822245721神と科学は共存できるか?
スティーヴン・ジェイ・グールド 新妻 昭夫
日経BP社 2007-10-18

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 僕はキリスト教徒ではないが、聖書やキリスト教は面白いと思っているし、それに関する本をよく読んだりもする。身近なところにクリスチャンがいたりもするし、クリスチャンたちと信仰について話すこともある。しかし僕は一部のクリスチャン(保守的な信仰の人が多い)が、生物の進化(進化論)という、いわば科学の常識に類する事柄をかたくなに拒絶することが不思議でならなかった。本書「神と科学は共存できるか?」の著者は、世界的な古生物学者であり進化生物学者。そんな著者の主張は「科学と宗教は対立しない」というものだ。科学と宗教は互いに守備範囲が違い、その境界に重なり合う部分はないから対立しようがないのだという。科学の側にいる人間と宗教の側にいる人間がそれを尊重しあえれば、科学と宗教はこの世界の中で仲良く共存できるというのだが、それは本当だろうか?

 僕自身も著者と同じで、科学と宗教は矛盾することがないと考えている。科学と宗教は人間の両目のようなもので、同じものを見つめていても左右の目が見ているものはちょっとずつ違うわけだ。その違いは決して埋まらない。右目の見ているものが正しくて左目が間違いだということではないし、左目が正しくて右目が誤りだということでもない。ふたつの視線は決して交わらず、だからこそ人間は世界を豊かな立体感の中でとらえることができるわけだ。

 著者のグールドの主張も、結局はそれと同じことなのだと思う。科学の世の中で宗教が役割を終えたということではない。宗教には今後も人間の生きる世界の「意味」を考え続ける役割がある。一方で科学は、人間が生きる世界の「仕組み」について考え続けるだろう。(進化論も「仕組み」のひとつだ。)ふたつは手を取り合って、人間の世界を豊かにしていくことができればいい。

 この本は原著にはない日本語版だけの解説が掲載されていて、そこにはアメリカにおける進化論裁判の流れや、アメリカの教育界を蝕みつつあるID論(インテリジェント・デザイン論)についての紹介が書かれている。これだけでも興味深いレポートだと思うので、この分野の事柄に興味を持つ人はまずここから読んでみるのもいいと思う。

 僕自身は最近の進化論にあまり詳しくないのだが、この本をきっかけに、グールドやドーキンスの本を読んでみてもいいなぁと思うようになった。(でも買い込んで手を付けていない本があまりに多いので、進化論については後回しになりそうだけど。)

4480088784ドーキンス VS グールド (ちくま学芸文庫)
キム・ステルレルニー 狩野 秀之
筑摩書房 2004-10-07

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2007.11.03

作劇術

4000230174作劇術
新藤 兼人
岩波書店 2006-11

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 新藤兼人のシナリオ論やエッセイをまとめた「シナリオの構成 」の延長にあるものを期待したらさに非ず。これは脚本家としての新藤兼人へのインタビュー本でした。自身の監督作だけでなく、他の監督に提供した脚本について膨大なコメントがあるのは貴重。そこから見えてくるのは、脚本と演出の関係性だったり、各監督の個性だったりするわけで、これはこれとして面白く読めるものでした。もちろんコメントの合間には、著者なりの脚本論なり方法論なりがあって、これもとても参考になるのです。著者は映画化された脚本だけでも200本以上という人だから、もちろんそのすべてについてコメントがあるわけではない。でも主だった作品についてはコメントしてあるので、これを見れば「映画人・新藤兼人」についての全体像はだいたい見えてくると思う。

 それにしても、新藤兼人の脚本執筆スピードには驚く。3日ぐらいでだいたいの構成を考えて、実際に書くのは5日間だという。仕事の依頼があってもなくても脚本だけはどんどん書いておいて、できのいいものはストックしておき、駄目なものは躊躇なく捨ててしまう。その上で「何かないか」と言われたら、「こんなのあります」とポンと出せるようにしておくのが新藤流なのだそうだ。もっともこうしてストックの中から映画に結びつくものはほとんどないようで、実際には依頼に沿って書き下ろすことが多いみたいだけど。

 これはスポーツ選手がオフの時もトレーニングを欠かさないのに似ていると思う。依頼がなくても日々シナリオを書き続けていくというのは、著者が修業時代から行っているシナリオ作家としてのトレーニングであると同時に、今も現役でいるための体力を維持するトレーニングなのだろう。新藤兼人はこの過酷な自主トレによって、誰の弟子になるわけでもなく独学で日本有数のシナリオライターになったのだ。

 新藤兼人の素地になっているのは「近代劇全集」44巻を読破したという経験だそうで、これは笠原和夫が「仮名手本忠臣蔵」と「松竹新喜劇」を読んだというのと似ている。笠原和夫も、独学の人だった。

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