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2007.12.06

映画理論入門

4390100106映画理論入門
今村 太平
社会思想社 1993-06

by G-Tools

 今から半世紀以上前に書かれた映画理論の入門書。著者の今村太平はかつて一世を風靡した映画評論家であり映画理論家。今でも彼の「漫画映画論」は、映画関連の古典的書籍を復刊したジブリLibraryで手に入れることができる。それなりに読者がいるということなのかもしれない。僕が今村太平の名前を知ったのは、映画評論家の佐藤忠男さんが自伝的な著書の中で紹介していたからで、そこには「昔読んだときはすごい理論家だと思ったけど、その後は古くさく感じられるようになった」といった意味のことが書かれていた。それは今回、この本を読んで僕も感じた。理論家として映画や映画理論を一刀両断していく姿勢はすごいけど、これはもう時代遅れです。なんたって理論の根幹にあるのが、マルクス主義の唯物論だからなぁ……。

 この本は古典的な映画理論の入門書としては、それなりによくできている。取り上げられているのはミュンスターバーグ、ムウシナック、アルンハイム、ベラ・バラーズ、エイゼンシュテイン、プドフキン、ポール・ローザで、彼らの著書からその理論や思想のエッセンスを取り出して簡潔に紹介してくれているのはとてもありがたい。僕はベラ・バラージュ(バラーズ)の「映画の理論」も読んでるけど、それよりは今村太平流の抜粋と要約の方がよほど彼の理論がよくわかるような気にさせられる。おそらくそれは、他の理論家の著書についても同じことが言えるのではないだろうか。

 しかし僕はその要約の姿勢に、少し疑問を持ったりもするのだ。ここには著者である今村太平の視点が入っている。彼は古典的な映画理論を引用紹介しつつ、そこに自分自身の批判的なコメントも書き加えている。それは紹介している映画理論を相対化し、現代の読者にとってより役に立つ生きた理論にしたいという著者の願いから来るものなのだろうが、著者はなにしろ半世紀前のマルクス主義理論家だから、その批判にせよ、相対化にせよ、マルクス主義のバイアスがかかってしまっている。この本を読んでそこに書かれている理論を我がものにしようとする人は、紹介されている理論と向き合うために、今村太平というマルクス主義理論家の視点を再度自分の中で再検証し、補正していかなければならないのだ。

 現代教養文庫から出されていた本で、僕が入手したのは「現代教養文庫リバイバル・セレクション」の1冊。現代教養文庫を出していた社会思想社もなくなっている今、この本はもう復刊されることはないと思う。ただし古典的な映画理論の紹介という点では、おそらくこれに勝る本はそうそうないと思う。そうしたものが読みたい人にはよい本。ただし復刊を待つまでもなく、こんなものは古書ルートで手に入れればいいのです。数百円で買えるしね。

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