2009.11.15

起業家エジソン―知的財産・システム・市場開発

4022597712起業家エジソン―知的財産・システム・市場開発 (朝日選書)
朝日新聞社 2001-03

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 エジソンによる映画の発明と、映画事業囲い込みの挫折について詳しく知りたいと思い読んだ本。しかし映画以外の部分も十分に面白く、つい読みふけってしまった。映画についてはこの本で参考文献とされている「フィルムとカメラの世界史」が面白そうなのだが、アマゾンで探しても品切れだった。残念。図書館に蔵書があるようなので、借りてみようと思ったりしている。

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2009.11.04

『鉄腕アトム』から『電脳コイル』へ―アニメとはなにか

4879842737『鉄腕アトム』から『電脳コイル』へ―アニメとはなにか
松籟社 2009-10

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 テレビ創生期にNHKで番組制作に従事し、その後はさまざまなアニメやドラマで脚本を書きまくっていた辻真先によるアニメ論。しかしアニメ史や理論書のようなものを期待すると期待はずれで、これは自伝的なアニメエッセイとでも言う方がいいだろう。伝わってくるのは「アニメが好きだ!」「アニメよがんばれ!」であり、「アニメを食い物にするな!」「産業として、ビジネスとしてアニメの再興を!」という叫びだろう。

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2009.10.07

クリエイティヴ脚本術―神話学・心理学的アプローチによる物語創作のメソッド

4845903490クリエイティヴ脚本術―神話学・心理学的アプローチによる物語創作のメソッド
James Bonnet
フィルムアート社 2003-06

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 タイトルには「脚本術」とあるが、実態としては「物語論」の本であり、古今東西の物語を分析して体系的にまとめ上げた理論書。これをこのまま実作に応用できるかというと、それはどうなんだろうか……。ストーリーホイールというモデルは面白いし、物語の中には背景となる大きなホイールと、その中に組み込まれた主人公のたどる小さなホイールがあるという説明もわかりやすい。しかし、これをそのまま実作に応用できるかというと、それはどうなんだろうか……。でもこうしたモデルを意識しながら物語を作っていくと、一本調子のストーリーにならずに済むかもしれない。上昇と下降、下降から上昇、上昇したものは必ず下降し、下降したものは必ず上昇する、その繰り返し。

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2009.08.24

ハリウッドストーリーテリング

475000359Xハリウッドストーリーテリング
愛育社 2009-06

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 「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」の実践的な解説書……みたいな本。著者はシド・フィールドの本で学び、自ら脚本を書いたり、脚本のアナリストをしながら、自分の経験をもとにこの本を書いている。ベースはシド・フィールドだが、両者を比べると微妙に異なるところもある。シド・フィールドの本もひとつの脚本理論であり、過去の名作傑作に対する分析と解釈によって成り立っている。この本も同じだ。どちらが正しいかという問題ではなく、どちらも参考にしながら、自分なりの脚本分析や解釈を見いだしていくべきなのだろう。
 

 著者が海外の映画学校で教えている内容がベースになっているようで、これは「英語で脚本を書く方法」や「外国人が英語を勉強する方法」にも言及されている。これは日本で日本語の脚本を勉強しようとしている人にとっては余計な情報だが、著者やこの本の立ち位置を象徴する記述だと思う。この本はあくまでも「ハリウッド流の脚本術」であって(タイトルもそうなっている)、日本の脚本にそれがどれだけ応用できるのかはわからない。このあたりの応用や分析は、今後別の人がしていかなければならないことかもしれない。

 シド・フィールドの本は既に翻訳が出ているので、その理論を紹介するこの本の価値は既に大半が失われていると言えなくもない。(著者や出版社はフィールドの本が翻訳されることを知らなかったようだ。)僕自身は「脚本の勉強としては、シド・フィールドを読んでいればこれは不要かも……」と思ったりもするが、これはシド・フィールドの本がハリウッドで映画を学ぶ人々にどのように受容されているかを知るという点では面白いものだ。またシド・フィールドの本を読んでも内容にピンと来なかった人や、もう少しかみ砕いた解説が読みたい人には参考になる本だと思う。そのわりには、ちょっと高いけどね。この本を買うなら、フィールドの本を2度3度読んだ方が勉強になるかも。

4845909278映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術
安藤 紘平
フィルムアート社 2009-03-31

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2009.08.23

映像史―Image Media Wars

4871002276映像史―Image Media Wars
映人社 2009-06

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 映画の発明にはじまる「映像」の歴史を、映画とテレビという2種類のメディアの覇権争いという切り口から紹介していく新しい映画史本。同時代のさまざまな証言を引用しているのがこの本のみそで、映画がサイレントからトーキーになったときに人々がどう考えたか、ワイドスクリーンはどう受容されたのか、人々はテレビをどう考えていたのかなどが当時の雑誌やインタビューなどから語られていく。これを見ると、映画やテレビの未来に対してじつに正確な予言をしていた人たちが少なくないことに驚かされる。(もちろんそうした「当たった予言」ばかりを引用しているからでもあるけれど。)

 映画からテレビへの転換を詳細に語った「『鉄腕アトム』の時代―映像産業の攻防」を読んだ直後でもあり、個々の事例への踏み込みが浅いように感じる部分もあるのだが、映画史を読み解いていくひとつの取り組みとして示唆に富んだものだった。

4790713903『鉄腕アトム』の時代―映像産業の攻防
世界思想社 2009-02

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2009.08.22

『鉄腕アトム』の時代―映像産業の攻防

4790713903『鉄腕アトム』の時代―映像産業の攻防
世界思想社 2009-02

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 映画とテレビの勢力が逆転していく1950年代から1960年代前半にかけての映画・テレビ業界の様子を、豊富なデータを取り混ぜて再現していく映画史・放送史の本。日本の事例だけでなく、アメリカでの様子も丁寧に紹介してくれているのは参考になる。専門学校で映画史を教えている際、なんとなく概略として生徒に教えていた内容ではあるのだが、自分としてもその詳細については知らないことが多かった。この本によってそのディテールを知ることができたのは大きな収穫だった。

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2009.08.15

日本動画興亡史 小説手塚学校 2 ~ソロバン片手の理想家~

4062155567日本動画興亡史 小説手塚学校 2 ~ソロバン片手の理想家~
講談社 2009-07-22

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 「日本動画興亡史 小説手塚学校 1 ~テレビアニメ誕生~」の続編。話が虫プロ内部とその周辺に限られているのに加え、時間的にもあまり前後しないので1巻よりスピーディに読める。ここでは「鉄腕アトム」の放送開始から、マーチャンタイジング、アメリカへの輸出、バンクシステムの実態などが語られていく。同じフジテレビで「鉄人28号」の放送がはじまるなど、手塚治虫の当初の目論見が早くもほころびはじめる。絶頂期ではあるが、これは同時に「終わり」のはじまりでもある。第3巻以降が今から楽しみ。

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2009.08.14

日本動画興亡史 小説手塚学校 1 ~テレビアニメ誕生~

4062155559日本動画興亡史 小説手塚学校 1 ~テレビアニメ誕生~
講談社 2009-06-20

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 世界的にも評価の高い日本製「アニメ」には、大きなふたつの源流がある。ひとつは「日本のディズニー」を目指して主に劇場長編アニメの世界を確立した東映動画であり、もうひとつは「アンチ・ディズニー」をコンセプトに毎週30分のテレビアニメシリーズを生み出した虫プロダクションだ。東映動画が親会社である東映系列劇場からの収入によって収益を上げていたのに対し、虫プロは制作費の大半をキャラクター商品の販売や海外セールスによってまかなうという、現在のアニメにも通じるビジネス・モデルを打ち立てた。手塚治虫や虫プロについてはこれまでも当事者たちの回想やインタビューを含めて多くの本が出ているのだが、この「小説手塚学校」はそれらの先行本の集大成ともいうべき労作。この第1巻では、手塚治虫が東映動画と組んだ「西遊記」への不満から自身のアニメ制作プロダクションを旗揚げし、やがてテレビアニメの世界に突き進んでいくまでが描かれている。

 第1巻が終わった時点で、まだ「鉄腕アトム」は放送されていない。この本には現時点で2巻までが出ているが、そこでは「鉄腕アトム」による虫プロの全盛時代が描かれる。だが虫プロはやがて瓦解し、虫プロの遺伝子は多方面に散らばって現在につながる「日本製アニメ」の基盤を作っていくことになる。

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2009.08.03

映画にしくまれたカミの見えざる手―ニッポンの未来ぢから

4062725819映画にしくまれたカミの見えざる手―ニッポンの未来ぢから (講談社プラスアルファ新書)
講談社 2009-06

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 個々の映画作品ではなく、映画産業や映画ビジネスについて紹介した一般向けの本。データブックとしては物足りないところもあるのだが、全体的な傾向や雰囲気を知るにはいい本だと思う。解説部分には不満なところもあったりするのだが、こんなものは細かなあら探しをすればいくらでも出てくる。むしろ細かなデータにあたらないとわかりにくい部分に、さりげなく触れていたりする配慮を評価すべきだろう。雑学的な映画知識もあれこれ書かれている本なのだが、著者の本領は3章以降、映画ロケや映画誘致、地域での映画作りなどについて述べているところだと思う。データを見れば映画についてのネガティブな話はいくらでも出せるだろうに、そうしたところは片目をつぶり、映画について前向きで建設的な(それでいて手厳しい)意見が述べられているのは好感が持てた。

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2009.07.16

創 (つくる) 2008年 07月号

B001AGQ9X0創 (つくる) 2008年 07月号 [雑誌]
創出版 2008-06-07

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 「映画界の徹底研究」という特集があったので購入したんだけど、2009年7月号でも同じ特集をやっている。しまった、どうせなら今年の号を購入すればよかった。たぶん購入するだろう。ショッピングカートに入れちゃった。

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2009.07.14

映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術

4845909278映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術
安藤 紘平 加藤 正人
フィルムアート社 2009-03-31

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 アメリカの映画学校でシナリオの教科書として使われている、シド・フィールドの「スクリーンプレイ」の邦訳。シナリオの三幕構造とプロットポイントというパラダイムを紹介した上で、豊富な実例を引用しながらシナリオの全体像を語っていく。映画の中の時系列がどうであれ、登場人物の数がどうであれ、シナリオのパラダイムは変わらないと断言している。映画を観ながら薄ぼんやりと感じていたことが、この本を読むことで一気に霧が晴れるようにスッキリとクリアーになる。そんな本だ。

 僕自身はシナリオライターではないので、書かれている内容の多くがいくら勉強になってもしょせんは他人事なのだが、「妨害反応」について書かれている部分は同じモノカキ稼業として大いに共感しうなずいてしまう内容だった。妨害反応というのは準備万端整えていざ書こうとすると、目先の雑事に心を奪われて本来の書くという作業がどんどん後回しにされてしまうこと。僕もこれには、大いに心当たりがある。今日試写に行かずに部屋でこの本を読んでいたことも、昨日観た映画の感想を仕上げることなくこんなブログの記事を書いていることも、すべて「妨害反応」の結果だったりするのだなあ。やれやれ……。

 しかし原著のタイトルが「スクリーンプレイ」なのに、なんでこんなに翻訳版のタイトルが長くなっちゃうのかね。これじゃ覚えられないじゃんか。脚本の教科書としてはこの本の他に、ロバート・マッキーの「ストーリー」という本が有名だが現時点で翻訳は出ていない。そちらも早く翻訳が出ないかなぁ。

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2009.07.07

誰かが行かねば、道はできない -木村大作と映画の映像-

4873763134誰かが行かねば、道はできない -木村大作と映画の映像-
木村 大作
キネマ旬報社 2009-06-19

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 『劔岳 点の記』で監督デビューした木村大作のインタビュー本。東宝入社の経緯や修業時代の思い出に軽く触れた後、デビュー作『野獣狩り』から最新作『劔岳 点の記』までほぼすべての作品について1本ずつコメントしている。撮影に関してのエピソードや木村監督の映画哲学も面白いし、一緒に仕事をした監督や俳優たちの人柄が伝わってくるようなエピソードも面白い。木村監督が何本かの作品で一緒に仕事をした森谷司郎監督のエピソードには泣ける。深作欣二監督とのエピソード、特に『おもちゃ』の監督交代を巡る話などは、これまで僕が知っていた話とはまた別の話が出ていてなるほどと思った。降籏康男監督の人柄や高倉健を含めたチームの結束力にまつわる話を読んだりしていると、この3人がいつも一緒に仕事をしている理由もわかるような気がするのだ。

 『劔岳 点の記』は最新作であり、また初の監督作であり、この作品の公開に合わせて刊行された本ということもあって特にボリュームを取っているのだが、録音技師が大ケガをして映画撮影が一度は中断しかけたという話は感動的。ここだけでなんだか映画みたいな「いい話」なのだ。映画もヒットしている様子。木村監督は映画の企画がまだあるようなので、この調子で2本目の監督もぜひ撮ってほしい。

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2009.06.03

時計じかけのハリウッド映画―脚本に隠された黄金法則を探る

4827550301時計じかけのハリウッド映画―脚本に隠された黄金法則を探る (角川SSC新書)
芦刈 いづみ
角川SSコミュニケーションズ 2008-02

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 カリフォルニア州立大学ノースリッジ校(CSUN)で映画を学んだ著者たちが、アメリカの大学でどんな風に映画を教えているのかというエッセンスを伝えてくれる軽い読み物……といった雰囲気の本。授業の様子、どんな教科書を使っているか、教授やクラスメイトたちとのおしゃべり、学生たちの業界への売り込みといった話が面白いのだが、あくまでも軽いエッセイみたいなものなので、どれだけ参考になるかというと、じつはほとんど参考にならない。ハリウッド流の脚本術について体系的に書かれているのは1章と2章だけで、それ以降は映画史の話や映画の分析、業界の裏話といった話が続く。

 ハリウッド流の脚本術というのは日本にも少しずつ紹介されているのだが、この本の中でアメリカの大学の映画学科では定番の教科書とされているのが、シド・フィールドの「Screenplay」と、ロバート・マッキーの「Story」。このうちシド・フィールドの本は、今年3月にフィルムアート社から「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」というタイトルで翻訳が出た。次はロバート・マッキーも翻訳を出してほしいね。(フィールドの本は早速Amazonのカートに入れました。)

4845909278映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術
安藤 紘平 加藤 正人
フィルムアート社 2009-03-31

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2009.05.08

ジャンル別映画ベスト1000

4054006213ジャンル別映画ベスト1000
安原 顕
学研 1996-02

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 20人のライター(映画人もいればそうでない人もいる)にそれぞれ50本のベスト作品を選んでもらい、のべ1000本の映画タイトルと作品へのコメントを収録した映画ガイド。巻末に編者である安原顕のベスト50も収録されているので(タイトルのみ)、実際にはのべ1050本の映画が取り上げられたことになる。本が出たのが1996年なので、ここには『タイタニック』も『ロード・オブ・ザ・リング』もないのだが、それでも映画ガイドとして困ることはない。映画ガイドなんてものは、所詮その程度のものだからだ。

 重複作品のうち3人以上があげている映画は以下の通り。(五十音順)

・エドワード・ヤンの恋愛時代
・暗黒街
・暗黒街の顔役
・アントニオ・ダス・モルテス
・キッスで殺せ
・恋する惑星
・裁かるるジャンヌ
・ストリート・オブ・クロコダイル
・セブン・チャンス
・セリーヌとジュリーは舟で行く
・存在の耐えられない軽さ
・バンド・ワゴン
・ラルジャン
・我輩はカモである

 巻末の索引をざっと見ただけなので、見落としがあるかもしれないが、だいたいこんな感じ。ちなみに5人があげた『恋する惑星』が最も多く、次が4人があげた『ストリート・オブ・クロコダイル』。残りはすべて3人だ。

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2009.02.28

談志映画噺

4022732458談志映画噺 (朝日新書)
立川 談志
朝日新聞出版 2008-11-13

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 立川談志による書き下ろしの映画本。談志師匠が自分の好きな映画について語っているのだが、言ってみれば「ただそれだけ」の本であって、談志が好きな人はどうぞ……というもの。ところどころに出てくる小話がちょっと面白かったりする。

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2009.01.22

スピルバーグ (FOR BEGINNERSシリーズ)

4768400884スピルバーグ (FOR BEGINNERSシリーズ)
橋本 勝
現代書館 2000-02

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 チャップリンや黒澤明に続く、橋本勝のFOR BEGINNERSシリーズにおける映画監督もの第3弾。発行が2000年なので『プライベート・ライアン』までしか取り上げられていないものの、作品ガイドとしても作品論・作家論としてもよくまとまった内容になっている。ただし「作品ガイド」の要素よりも、著者の批評的な作家論・作品論の方がボリュームがあるので、時にはそれがうっとうしく感じられることもある。しかしながら作品ガイドならネットでデータを調べればいいわけで、こうした本はなにがしかの「批評」がないとやはり面白くないのは事実だろう。

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2008.12.15

マキノ雅弘―映画という祭り

4106036215マキノ雅弘―映画という祭り (新潮選書)
山根 貞男
新潮社 2008-10

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 日本映画黎明期から戦後の日本映画黄金時代に活躍した映画監督、マキノ雅弘の名前が忘れられようとしている。マキノ作品をリアルタイムで観ていた人はともかく、現在の若い映画ファンはマキノなんて名前を知らない。知識で知っていても、作品は観たことがない。そもそも黒澤明の映画すらほとんど観ていないという彼らに、マキノ映画を観ろという方が難しいのかもしれない。しかしそれは、マキノ映画の魅力について縦横無尽に語る人がいない、ということでもあったのかもしれない。この本は映画評論家・山根貞男による「マキノ雅弘作品論」だ。伝記や評伝の類ではない。マキノ映画に肉薄し、その魅力を徹底的に語り尽くしていく。この本を読めば、ビデオ屋に飛んでいってマキノ映画のDVDを数枚借りて来たくなる。そういう言葉のパワーを感じさせる本だ。

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黒澤明

4768400760黒沢明―イラスト版オリジナル (FOR BEGINNERSシリーズ)
橋本 勝
現代書館 1996-07

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 「チャップリン」に続く、橋本勝のイラスト版映画ガイドの第2弾。黒澤映画については膨大な量の本が出ているが、その中でもこれは「観客視点」に徹しているのがむしろユニーク。監督作30本の紹介と批評、出演している俳優たちについての紹介と批評、映画に取り上げられているテーマの3部構成。いわゆる「黒澤組」スタッフの話や、映画製作にまつわる数々の「黒澤伝説」、『トラ・トラ・トラ』降板事件や自殺未遂、日本映画史とのからみなどにはあえて触れていないのだ。これから黒澤映画をまず観てみようと考えている人にとっては、最適な黒澤映画入門書かもしれない。

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2008.12.14

チャップリン―チョビヒゲ世界を制す

476840037Xチャップリン―チョビヒゲ世界を制す (FOR BEGINNERSシリーズ イラスト版オリジナル 37)
橋本 勝
現代書館 1986-03

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 漫画家・橋本勝によるチャップリン読本。チャップリンの生涯と作品を紹介した入門書であると同時に、チャップリンの各作品と正面から向かい合った評論集でもある。初めてのチャップリン・ガイドとしてはよくできた本。初版は今から20年以上前だけど、今でもちゃんと新品で手に入れられる。こういう本が他にないということだろうか。この本が出た時点でチャップリンは既に亡くなっていたので、内容を更新する必要がないというメリットもある。これは同じ著者によるスピルバーグ読本などとの大きな違いだ。

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2008.12.13

オイッチニーのサン

4569702740オイッチニーのサン
高野 澄
PHP研究所 2008-09-27

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 副題は「『日本映画の父』マキノ省三ものがたり」。マキノ省三の生い立ちや映画界での活躍を描くと共に、エジソンやリュミエール、メリエスなどが活躍した映画史のはじまり、稲畑勝太郎や横田永之助、松竹や日活、マキノ映画で活躍したきら星のような剣劇スターたちの姿を活写した伝記小説だ。あくまでも小説なので、これをそのまま資料にするわけにはいかなそうだが(各エピソードの元になった資料にあたる必要がある)、それを言うとメリエスの伝記「魔術師メリエス」だって小説風だし、マキノ雅広の自伝「映画渡世」もかなり脚色が入っちゃってるんだけどね。虚実入り交じるのが伝記ものの面白さでもある。

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2008.12.09

南カリフォルニア大学とアメリカ映画協会の映像教育

499034460X南カリフォルニア大学とアメリカ映画協会の映像教育
NPO法人映像産業振興機構
NPO法人映像産業振興機構 2006-10-24

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 NPO法人・映像産業振興機構(VIPO)の招きで2006年に来日公演した、南カリフォルニア偉大学の映画・テレビ学部長エリザベス・ディリーと、アメリカ映画協会の特別顧問ジェームズ・ハインドマンの講演をまとめたもの。両校の成り立ちや教育方針、教育内容、学生たちの選抜方法や進路など、かなり幅広い内容が紹介されていて興味深い。そしてどの映画学校でも、教師が生徒に言うことは同じだなぁと実感させられる。「もっと映画を観ろ。文学や演劇など映画以外の分野にも興味を持て。仲間を大切にしろ」。万国共通なのだ。

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2008.12.02

生き残るフランス映画―映画振興と助成制度

4434030612生き残るフランス映画―映画振興と助成制度
中川 洋吉
希林館 2003-05

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 フランスが自国の映画産業を保護する政策をとっており、それがハリウッド映画を売り込みたいアメリカからしばしば貿易障壁だと批判されていることは映画ファンによく知られているはず。しかしフランスが具体的にどのような映画保護政策を取っているか、具体的にはよく知られていない。この本はその点を日本の読者向けに紹介した本で、類書があまりないので資料としてとても貴重なものだ。国の政策というのはその時々で変わるので、ここに書かれている内容が今もそのまま通用するわけではないのだが、映画政策の流れや変遷という意味では充分参考にすることができる。

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2008.11.22

ハリウッド物語―去年(こぞ)の雪、いま何処

4861821274ハリウッド物語―去年(こぞ)の雪、いま何処
川尻 勝則
作品社 2007-05

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 ハリウッドの観光名所にもなっている映画館グローマンズ・チャイニーズ・シアターにその名を残す興行師シドニー・パトリック・グローマン、通称シドの生涯を、ハリウッド映画史にまつわる様々なエピソードを折込ながら描いた伝記風の物語。19世紀末にエジソンとリュミエール兄弟が映画を発明するところから、ハリウッドが全盛時代を迎える1930年代〜40年代初頭あたりまでがこの物語の時代背景だ。シド・グローマンの話題を離れたサイドエピソードとして、ハリウッド映画やハリウッド映画人についての雑学的な挿話が縦横に挿入されている。エピソードが時系列に配置されていないので映画史の教科書としてはまったく使えないのだが、小説としてならこれで十分に面白い。映画会社の役員の給与だの、映画会社の部門別従業員数だの、当時のロサンゼルスやハリウッドの人口だの、細かな数字を資料から引用して紹介してくれているのはありがたい。これが第1部。これに細かな索引があると便利だった。

 その後のハリウッドについては、第2部で戦争中にハリウッドに作られた兵士向けの慰問施設「ハリウッド・キャンテーン」について書かれているのがユニーク。僕は今回、この部分を目当てにしてこの本を買った。第3部は戦後のハリウッドを襲った赤狩りについて。これは他にもたくさん本が出ているのだが、ハリウッド黄金時代の終焉を象徴するエピソードとしてこの位置に書かれているのもうなずけるかも。

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2008.11.02

テレビは日本人を「バカ」にしたか?―大宅壮一と「一億総白痴化」の時代

4582853625テレビは日本人を「バカ」にしたか?―大宅壮一と「一億総白痴化」の時代 (平凡社新書 362)
北村 充史
平凡社 2007-02

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 今でもテレビを批判的に語る際に取りざたされる「一億総白痴化」という言葉が生まれた経緯を解説しつつ、テレビ創生期から現代まで続くテレビの問題点を論じた本。半分以上は昔話なので、この本自体を批判的に読まない限り、これは現代人にとっての啓発書とはならないだろう。あくまでも「テレビ放送史」の中で語られてしまうものだと思う。僕自身はつい先日、学校で学生相手に映像メディア論の講義をしたばかりで、そこで大宅壮一の「一億総白痴化」も紹介したので、この本はとても面白く読めた。

 本書の中で紹介されている言葉の中では、清水幾太郎のテレビ論が僕の考えに近いように思えた。(引用されている清水幾太郎の発言は半世紀前のものなので、もちろん清水幾太郎が僕に似ているのではなく、僕の考えが結果としては清水幾太郎に似ていると言うことなのだけれど。)

(テレビジョンの)人間をノック・アウトする映像は、人間に対して映像を補強するためのイマジネーションの必要を感じさせないと同時に、映像とは別のイメージの形成へ向かうイマジネーションの発生する余地を与えない。それは人間を全体的に呑み込む。……活字の時代から映像の時代への変化は、われわれが証拠を握る時代から証拠を奪われる時代への変化である。(「テレビジョン時代」)
本書162ページより

 映像が人間をノックアウトして思考を奪ってしまうのは事実だが、それは人間が映像情報を批判的に受け入れる訓練をしていないからだ、というのが僕の認識。しかし現実には、世の中の誰も映像情報の読み解き方を体系的に教えられてはいないのだ。清水幾太郎が上記の発言をした50年前ならいざ知らず、今に至っても人間は映像にノックアウトされっぱなしで、それ以上に何もモノを考えないままではないだろうか。

 そんなことを考えつつ、僕は「映像の読解力」というものに興味が出てきた。手がかりは「文章の読解力」にあると思うので、これから少しその手の本をまとめて読んでみるつもりでいる。文章の読解力を身に着けるための訓練は、そのまま「映像の読解力」を身に着けるためのひな形になるのではないだろうか。

418321713X必ず「PISA型読解力」が育つ七つの授業改革―「読解表現力」と「クリティカル・リーディング」を育てる方法
有元 秀文
明治図書出版 2008-02

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2008.09.26

INTRODUCING メディア・スタディーズ

4861822041INTRODUCING メディア・スタディーズ
田村美佐子 町口哲生
作品社 2008-09-10

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 メディア・スタディーズの入門書。イラストたっぷりで読みやすいのだが、内容的にはかなり専門的な部分もある。メディア・スタディーズへのイントロダクションとしては重宝しそうだ。

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2008.09.20

ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読

4006000197ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読 (岩波現代文庫)
多木 浩二
岩波書店 2000-06

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 ベンヤミンの代表作「複製技術時代の芸術作品」と解説を1冊にまとめた本。解説部分は正直あまり面白くないのだが、ベンヤミンの論文自体は今でもひとつの「映画論」として通用すると思う。もちろん時代の制約を受けているところは多いんだけど、映画の本質をうまくつかまえているなぁと感心させられる記述も多いのだ。

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2008.08.15

アニメ・特撮・SF・映画メディア読本―ジャンルムービーへの招待

4878923199アニメ・特撮・SF・映画メディア読本―ジャンルムービーへの招待
浅尾 典彦
青心社 2006-04

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 専門学校でメディア論を教えているという著者が、映画やテレビなどの映像作品をジャンル別に整理して、その歴史を解説したジャンル別「映像史」の本。類書があまりないので、これはとても参考になる。ただし個々の内容は物足りない部分も多い。自分が詳しくない分野については「そうなのか!」と感心できるのだが、自分が知っている分野については「記述が抜け落ちている!」と思うところも多いのだ。例えばアニメの歴史の部分で、エミール・レイノーと彼の発明品プラクシノスコープやテアトル・オプティックの存在がまったく無視されているのは疑問だよなぁ……。でも入門編としては良書だと思う。

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2008.07.11

最新映画産業の動向とカラクリがよ~くわかる本―業界人、就職、転職に役立つ情報満載

4798018066最新映画産業の動向とカラクリがよ~くわかる本―業界人、就職、転職に役立つ情報満載 (How-nual図解入門業界研究)
中村 恵二
秀和システム 2007-11

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 音楽業界、ゲーム業界、放送業界、ホテル業界など、特定の業界についてざっくりと大まかにまとめたシリーズ企画本の映画業界編。映画についての本は無数に出ているのだが、映画を産業という視点からとらえた本はそれに比べるとずっと数が少ない上に、数年ごとに内容をアップデートしていかないと意味がなくなってしまう。この本は「映画産業」について書かれた最新の本という意味で、最近の映画業界の様子を知るには打って付けのものだと思う。ただし内容はあくまでも、これ1冊で全体が俯瞰できる内容とレベルになっている。これ以上詳しいことについては、業界紙などを見ていくしかない。

 本書の中では、いわゆる古典的な映画産業の仕組みについて語られた部分はごくわずかで、そこから派生した新しいビジネスや考え方について解説した部分の方が多い。アニメに大きくページを割いているのも特徴だと思うが、地域振興と映画についての関係で撮影誘致や観光誘致、映画祭について語ったり、デジタルシネマの現状と将来性について記してあるのは気になるところだろう。

 物足りないのはDVD市場や放送事業との係わり、映画や出版とのメディアミックスなどについて、あまり触れられていなかったこと。古典的な映画産業の解説では、映画配給の仕事についてほとんど何も語られていないのは気になった。

 これが完全だとは思わないけれど、映画産業論が「映画製作」中心に語られがちなことを考えると、これは相当手広く映画について語っていると思う。

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2008.07.04

リュミエール元年―ガブリエル・ヴェールと映画の歴史

4480873031リュミエール元年―ガブリエル・ヴェールと映画の歴史 (リュミエール叢書)
蓮實 重彦
筑摩書房 1995-12

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 本書は世界最初の映画であるリュミエール作品についての貴重な資料集だ。日本で最初に映画を撮影したリュミエール社のカメラマン、コンスタン・ジレルと入れ替わるように日本にやってきたカメラマン、ガブリエル・ヴェール。彼が撮影のため訪れた日本やメキシコやベトナムから、フランスの家族に向けて送った手紙を紹介している部分が全体の半分ほど。他にリュミエール作品についてのインタビューや、ルイ・リュミエール本人へのインタビューなどが紹介されている。

 ガブリエル・ヴェールの手紙や作品については、吉田喜重監督が刺激的なドキュメンタリーを作っている。ヴェールはなぜ映画の撮影から離れてしまったのか? 吉田監督流の大胆な仮説にはドキドキさせられる。

B000BKJJ6K吉田喜重・短篇ドキュメンタリー集 2
吉田喜重
ジェネオン エンタテインメント 2005-11-25

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2008.06.24

〈映才教育〉時代―映画の学校はどこにでもある!

4845907100〈映才教育〉時代―映画の学校はどこにでもある!
岡 博大
フィルムアート社 2007-08-29

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 芸大の大学院として新設された国立映画学校の様子をレポートしている本として、面白く読ませてもらった。序盤は芸大大学院映画学科の話で、中盤は映画学校で教える人たちや、映画学校卒業生、映画学科と無関係に映画作りをしている若手映画監督たちのインタビュー。終盤は映画教育に携わっている大物映画人の話。ただし本の最後で、舞踏家や建築家など映画と直接関係のない人たちのインタビューを入れている意図がいまいち不鮮明。映画は映画学校以外でも学べるし、映画以外の分野からも学べると言いたかったのかもしれないけど、映画教育という本書のコンセプトからはちょっとずれていると思う。たぶん著者の中ではつながりがあるんだろうけど、それが読み手には伝わってこなかった。

 これから映画学校に入りたいと思っている人や、映画を自主制作している人たち、自主制作しようとしている人たちには面白い本だと思う。僕は映画学校で教える立場なので、いろいろと参考になる点が多かった。そのままマネはできなくても、姿勢や考え方は参考になる。

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2008.06.20

ヒルマン・カーティス:ウェブ時代のショート・ムービー

4845906953ヒルマン・カーティス:ウェブ時代のショート・ムービー
吉田 俊太郎
フィルムアート社 2006-09-25

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 市販されているハイアマチュア用のデジカムを使って、プロさながらのショートムービーを作る方法が具体的に書かれている本。デジタルムービーの入門書であると同時に、著者の試行錯誤と実験の軌跡を綴ったものでもある。著者が迷ったり悩んだりしながら映画を作っていく様子がダイレクトに伝わってきて、これを読んでいると自分でもデジタルムービーを作れるんじゃないだろうか、作りたいなという気持ちにさせられるのだ。本の中で紹介されている作品の中には、著者のホームページで観られるものもある。

http://www.hillmancurtis.com/

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2008.06.15

アメリカ映画の大教科書〈下〉

4106005360アメリカ映画の大教科書〈下〉 (新潮選書)
井上 一馬
新潮社 1998-03

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 アメリカ映画通史の下巻は、1930年代から現代まで。ただし50年代までを丁寧に描写しているのに比べると、60年代以降はまったくおざなり。要するにこの本は1910年代から50年代までのオールド・ハリウッドについては思い入れたっぷりに描くが、ニューシネマ以降のニュー・ハリウッドについては完全にお留守なのだ。現代のアメリカ映画を考えるには、60年代〜70年代のビジネスモデル大転換は大きな事件なのだが、俳優や監督のゴシップ中心にハリウッド史を浮き彫りにしていくこの本では、結局のところハリウッドの「映画産業」が描けていないということだろう。

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2008.06.11

黒澤明「乱」の世界

4062017245黒沢明「乱」の世界
伊東 弘祐
講談社 1985-05

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 1985年に製作された黒澤明晩年の代表作『乱』のメイキング・ドキュメンタリーだが、それは全体の3分の1ほど。残りは映画記者として黒澤明とその作品を取材してきた著者による、黒澤明論、黒澤作品論風のエッセイだ。著者が『トラ・トラ・トラ』の宣伝を担当していた関係で、同作での黒澤明解任劇について現場からの意見が述べられているところが興味深い。ここではとかく悪者とされがちな青柳哲郎プロデューサーをかばって、むしろ後から入ってきた松江陽一プロデューサーを批判的な目で見ている。立場が変われば、物の見方も変わるのだ。

 この本が書かれたのは『乱』完成前だったため、『乱』の公開は前途洋々で大ヒット間違いなしであるかのような書かれ方をしている。でも蓋を開けてみると、製作費26億円にP&A費でおそらく数億円を注ぎ込んでも、配給収入は20数億円という赤字作品。海外との合作だったため、海外での売り上げは海外配給担当のパートナーに取られてしまい、製作会社のヘラルド・エースはずいぶんと痛い目に遭っている。

B0014IMRSA
仲代達矢, 寺尾聰, 根津甚八, 隆大介, 黒澤明
角川エンタテインメント 2008-05-23

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2008.06.02

アメリカ映画の大教科書〈上〉

4106005352アメリカ映画の大教科書〈上〉 (新潮選書)
井上 一馬
新潮社 1998-03

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 アメリカ映画の歴史をエジソンによるキネトスコープの発明や、それに先立つエドワード・マイブリッジの連続写真から時代を追って語っていく
「物語風のアメリカ映画史」
である。今から10年前に出ている本なのだが、人物中心にエピソードを紡いでいく手法は読み物として面白く、一般向けの映画史読本としてはよくできている。ただし書かれている内容には
「本当にそうなのか?」
と首をかしげることがらがないわけでもない。面白さを優先するあまり、映画史の中で伝説となってはいるものの史実ではないエピソードが、史実であるかのように書かれていたりするからだ。そうした伝説やゴシップもまた、映画の歴史と言えば映画の歴史ではあるのだけれど。

 著者は池波正太郎を敬愛しているそうで、文書のスタイルにもその影響が大。しかしそれが、まるでパロディかパスティーシュのように見えてしまい、上記の伝説も史実もごちゃまぜという姿勢とあわせて
「なんだかなぁ」
という違和感を感じさせることも多い。

4106005360アメリカ映画の大教科書〈下〉 (新潮選書)
井上 一馬
新潮社 1998-03

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2008.05.20

シネ・ミュージック講座―映画音楽の100年を聴く

4845998882シネ・ミュージック講座―映画音楽の100年を聴く
秋山 邦晴
フィルムアート社 1998-11

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 無声映画の時代から映画音楽はあった。その歴史をたどりつつ、映画音楽を「現代音楽」の中に位置づけていく好著。かつてクラシックの作曲家がオペラやバレエの中で新しい表現技術を磨いたように、映画音楽には映画音楽でしか成立しない表現技法がある。そんな当たり前のことに気づかせてくれる本だ。

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2008.04.12

映画プロデューサーが語るヒットの哲学

4822243591映画プロデューサーが語るヒットの哲学
原 正人 本間 寛子
日経BP社 2004-04-01

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 戦後の独立プロブームの時代に映画業界に入り、現在はアスミック・エースの相談役、最近は『明日への遺言』で久しぶりに現場復帰した原正人さんの自伝的なプロデューサー入門講座。インタビューから書き起こした本ということもあり、文章は平易でわかりやすい。全体の流れは原さんの映画業界入りから今日まで(本が出た2004年まで)を順番に語っていきながら、それぞれの場面での人との出会いや、失敗と成功、そこから学んだこと、現在にも生かせることなどをコメントしていく形式だ。

 映画業界裏話としては、配給宣伝を担当した『地獄の黙示録』の話、プロデューサーとしての成功作『戦場のメリークリスマス』の製作秘話、日仏合作の黒澤映画『乱』にまつわる話などが面白い。『乱』は最初、三船敏郎と高倉健主演で企画されていた……なんて話は新鮮。『戦場のメリークリスマス』も、最初はビートたけしの演じた役に緒方拳が、坂本龍一が演じた役には滝田栄を考えていて、それぞれ出演交渉もしたらしい。う〜む。これが実現していると、これはまったく別の映画になっていただろうなぁ。

 プロデューサーという仕事は具体的に何をしているのかわかりにくいところもあるのだけれど、この本を読むとその全体像が具体的に見えてくる。出版当時も話題になった本だけど、こんなことならもっと前に読んでおくべきだったと、ちょっと反省。

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2008.04.03

日本映画のヒット力 なぜ日本映画は儲かるようになったか

4270002727日本映画のヒット力 なぜ日本映画は儲かるようになったか
大高宏雄
ランダムハウス講談社 2007-11-30

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 ここ数年、日本映画が盛り返してきている。人によってはそれを「邦画バブル」と言ったりもするが、この本の著者はそうした立場には立たず、こうした邦画の好況ぶりには何らかの実質が伴っていると見る。では日本映画はダメダメだった10数年前に比べて、何がどう変化してきているのか? それをレポートしたのがこの本だ。ただしこれは現状レポートであって、分析や今後の提言にまでは至っていない。日本映画の今後を考えるには、この本をひとつの踏み台として、さらに先を見ていかなければならないだろう。

 

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2008.02.24

リヨンで見た虹―映画をひっさげてきた男 稲畑勝太郎・評伝

4526040258リヨンで見た虹―映画をひっさげてきた男 稲畑勝太郎・評伝 (B&Tブックス)
岡田 清治
日刊工業新聞社 1997-05

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 明治時代に京都府の官費留学生としてフランスに渡り、帰国後は京都の織物・染色産業の発展に寄与。その後独立して事業家として大成し、大阪商工会議所の会頭、貴族院議員などを歴任した稲畑勝太郎の評伝。彼はフランス留学時代にオーギュスト・リュミエールと同級生だったことがあり、発明直後のシネマトグラフを日本に輸入している。ただし興行は自分では行わず、同じ官費留学生の仲間だった永田萬壽之助の実弟・横田永之助に譲った。この横田永之助が作った映画会社が、日本活動写真株式会社(のちの日活)だ。

 実業家・稲畑勝太郎を紹介する目的で書かれている評伝なので、映画にまつわる部分はそれほど多くのページが割かれているわけではないし、それほど詳しく書かれているわけでもない。著者は現代の社会のありようと勝太郎が生きた時代のありようを対比させながら、稲畑勝太郎というひとりの実業人のエネルギッシュな人生を浮き彫りにしていこうとしているのだが、そこに著者の価値観や時代感覚、歴史観が強く反映しすぎて、少々うっとうしく感じられることも多い。記述には繰り返しも多く、くどくどと同じことを何度も書かれている部分もある。

 肝心の映画についての記事も、それが勝太郎の人生の中でどう位置づけられているのかがよくわからない。勝太郎3度目の渡仏はモスリン紡織の研究と機械購入のためだったようだが、その仕事とシネマトグラフ輸入という映画史上の出来事が別々の章に振り分けられているのがわかりにくい。要するにこの本全体の構成やコンセプトに、かなりの難があるのだ。

 稲畑勝太郎についてまとまった記事の書かれた本はあまりないので、資料としては貴重なもの。リュミエール兄弟と稲畑勝太郎の関係、稲畑勝太郎と横田商会の関係など、これを読んでようやく納得できた部分も多い。

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2007.12.20

『フラガール』を支えた映画ファンドのスゴい仕組み

4827550085『フラガール』を支えた映画ファンドのスゴい仕組み (角川SSC新書 (008))
岩崎 明彦
角川SSコミュニケーションズ 2007-10

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 日本の映画ビジネスを資金調達の面から下支えする新しい仕組み「映画ファンド」について、『フラガール』を含むシネカノン作品のファンド化に係わったファンドマネージャーが解説した本。単に『フラガール』がらみの話だけでなく、映画業界の仕組みや、映画ファンド誕生のいきさつなど、日本の映画ビジネス全般について語られているのがいい。映画作品に興味がある人より、むしろ映画産業に興味がある人が読むべき本だろうと思う。

 映画ビジネスの解説書で資金調達について書かれた記事を読んだことは何度もあるが、ほんの数年前までは「日本では映画ファンドなど夢のまた夢」というのが常識だった。その常識がいかにして覆されたのかは、法的な問題のクリアとともに、この著者のように実際に金融畑の知識を持ち、なおかつ映画ビジネスに参入しようという熱意のある「個人」ががんばらないと話にならないのだろう。しかしこれはひとつの突破口。映画ファンドによって日本映画ビジネスの形が大きく変わるとは思わないけれど、これまで以上に柔軟な資金調達が可能になり、それは必ずや映画の企画や製作そのものも変えていくことになると思う。

 同じ著者による「コンテンツビジネスの資金調達スキーム」にも興味がわくけど、それはまた後日。

4901676962コンテンツビジネスの資金調達スキーム
ジャパンデジタルコンテンツ
九天社 2004-05

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2007.12.06

映画理論入門

4390100106映画理論入門
今村 太平
社会思想社 1993-06

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 今から半世紀以上前に書かれた映画理論の入門書。著者の今村太平はかつて一世を風靡した映画評論家であり映画理論家。今でも彼の「漫画映画論」は、映画関連の古典的書籍を復刊したジブリLibraryで手に入れることができる。それなりに読者がいるということなのかもしれない。僕が今村太平の名前を知ったのは、映画評論家の佐藤忠男さんが自伝的な著書の中で紹介していたからで、そこには「昔読んだときはすごい理論家だと思ったけど、その後は古くさく感じられるようになった」といった意味のことが書かれていた。それは今回、この本を読んで僕も感じた。理論家として映画や映画理論を一刀両断していく姿勢はすごいけど、これはもう時代遅れです。なんたって理論の根幹にあるのが、マルクス主義の唯物論だからなぁ……。

 この本は古典的な映画理論の入門書としては、それなりによくできている。取り上げられているのはミュンスターバーグ、ムウシナック、アルンハイム、ベラ・バラーズ、エイゼンシュテイン、プドフキン、ポール・ローザで、彼らの著書からその理論や思想のエッセンスを取り出して簡潔に紹介してくれているのはとてもありがたい。僕はベラ・バラージュ(バラーズ)の「映画の理論」も読んでるけど、それよりは今村太平流の抜粋と要約の方がよほど彼の理論がよくわかるような気にさせられる。おそらくそれは、他の理論家の著書についても同じことが言えるのではないだろうか。

 しかし僕はその要約の姿勢に、少し疑問を持ったりもするのだ。ここには著者である今村太平の視点が入っている。彼は古典的な映画理論を引用紹介しつつ、そこに自分自身の批判的なコメントも書き加えている。それは紹介している映画理論を相対化し、現代の読者にとってより役に立つ生きた理論にしたいという著者の願いから来るものなのだろうが、著者はなにしろ半世紀前のマルクス主義理論家だから、その批判にせよ、相対化にせよ、マルクス主義のバイアスがかかってしまっている。この本を読んでそこに書かれている理論を我がものにしようとする人は、紹介されている理論と向き合うために、今村太平というマルクス主義理論家の視点を再度自分の中で再検証し、補正していかなければならないのだ。

 現代教養文庫から出されていた本で、僕が入手したのは「現代教養文庫リバイバル・セレクション」の1冊。現代教養文庫を出していた社会思想社もなくなっている今、この本はもう復刊されることはないと思う。ただし古典的な映画理論の紹介という点では、おそらくこれに勝る本はそうそうないと思う。そうしたものが読みたい人にはよい本。ただし復刊を待つまでもなく、こんなものは古書ルートで手に入れればいいのです。数百円で買えるしね。

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2007.11.03

作劇術

4000230174作劇術
新藤 兼人
岩波書店 2006-11

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 新藤兼人のシナリオ論やエッセイをまとめた「シナリオの構成 」の延長にあるものを期待したらさに非ず。これは脚本家としての新藤兼人へのインタビュー本でした。自身の監督作だけでなく、他の監督に提供した脚本について膨大なコメントがあるのは貴重。そこから見えてくるのは、脚本と演出の関係性だったり、各監督の個性だったりするわけで、これはこれとして面白く読めるものでした。もちろんコメントの合間には、著者なりの脚本論なり方法論なりがあって、これもとても参考になるのです。著者は映画化された脚本だけでも200本以上という人だから、もちろんそのすべてについてコメントがあるわけではない。でも主だった作品についてはコメントしてあるので、これを見れば「映画人・新藤兼人」についての全体像はだいたい見えてくると思う。

 それにしても、新藤兼人の脚本執筆スピードには驚く。3日ぐらいでだいたいの構成を考えて、実際に書くのは5日間だという。仕事の依頼があってもなくても脚本だけはどんどん書いておいて、できのいいものはストックしておき、駄目なものは躊躇なく捨ててしまう。その上で「何かないか」と言われたら、「こんなのあります」とポンと出せるようにしておくのが新藤流なのだそうだ。もっともこうしてストックの中から映画に結びつくものはほとんどないようで、実際には依頼に沿って書き下ろすことが多いみたいだけど。

 これはスポーツ選手がオフの時もトレーニングを欠かさないのに似ていると思う。依頼がなくても日々シナリオを書き続けていくというのは、著者が修業時代から行っているシナリオ作家としてのトレーニングであると同時に、今も現役でいるための体力を維持するトレーニングなのだろう。新藤兼人はこの過酷な自主トレによって、誰の弟子になるわけでもなく独学で日本有数のシナリオライターになったのだ。

 新藤兼人の素地になっているのは「近代劇全集」44巻を読破したという経験だそうで、これは笠原和夫が「仮名手本忠臣蔵」と「松竹新喜劇」を読んだというのと似ている。笠原和夫も、独学の人だった。

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2007.10.30

ハリウッドの神話学

B000J7FP4Aハリウッドの神話学 (1983年)
川本 三郎
潮出版社 1983-04

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 今から20年以上も前の本だが、当時高校生ぐらいだった僕は、こういう本を読んで往年のハリウッド映画がいかなるものなのかを勉強していたのです。その後自分でも映画の歴史を勉強したりしているので、この本の書く映画の歴史が、必ずしも映画史全体を見渡したものではないことに気づいたりします。例えば著者は1950年代をハリウッドの黄金時代と言いますが、その頃のハリウッドは赤狩りで企画力が減退し、テレビに押されて観客数も激減していたはず。反トラスト法違反で興行を切り離した結果、スタジオ・システムは音を立てて崩壊しつつあったのです。

 ハリウッドの黄金時代は1930年代から40年代であって、50年代は黄昏の時代、60年代のハリウッドは廃墟です。しかしその黄昏を黄金時代と呼ぶのは、著者とハリウッド映画の出会いの原体験がその時代にあったからに違いありません。つまりこの本は、著者の目から見たハリウッドについての私的エッセイなのです。

 この本はその後文庫化もされていますが、同じ著者による「アカデミー賞―オスカーをめぐるエピソード」が今でも版を重ねているのに対して、「ハリウッドの神話学」は絶版状態です。データとエピソードに徹した「アカデミー賞」に比べると、本書はやはり個人的な思い入れが強い本であり、その分、古びてしまったということなのかもしれません。

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2007.10.26

アニメーション学入門

アニメーション学入門 (平凡社新書)

 アニメーションを学問的に研究する「アニメーション学」について、その研究領域とおまかな研究内容を概略的に記した入門書。具体的な研究内容を記した論文や読み物ではなく、あくまでも研究対象の範囲を示しているに過ぎない印象を受けた。参考文献が詳しく記してあるので、具体的な研究についてはそれらの本を読めということだろう。

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2007.08.23

白井佳夫の映画の本

B000J8P3BE白井佳夫の映画の本
白井 佳夫
話の特集 1977-11

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 映画評論家の白井佳夫がキネマ旬報の編集長だった頃の仕事から代表的なものを幾つかピックアップし、同時に彼がどのようにしてキネ旬の編集長になり、どのような編集方針で雑誌を再生させ、どんないきさつで編集長を解雇されたのかを記録した本。キネ旬時代の白井佳夫の代表的な仕事としては、黒澤明の『トラ・トラ・トラ』解任をめぐるレポートなども有名なのだが、この本にはそうした白井佳夫個人の仕事は載っていない。ここで取り上げられているのは、「編集者・白井佳夫」なのだ。だから座談会とか、インタビューとか、シナリオの採録とか、そういう裏方仕事が取り上げられている。

 年配の映画ファンと話をしていると、「白井さんがキネ旬の編集長だった頃」という話がよく出てくる。僕はそうした時代をまったく知らなかったので、この本で「キネ旬時代の白井佳夫」を知ったのは大きい。白井佳夫の解任事件そのものが今から30年も前の話(1976年)なのだが、この本はその翌年に出ている。映画についての記事は古びていないけれど、解任事件をめぐるごたごたについてまとめた部分は、読んでいてさすがに隔世の感がある。ロッキード事件の話とか出てくるし……。

 この本が出たときはキネ旬のごたごたもリアルタイムの出来事だったわけだが、その後もキネ旬は二転三転しつつ今もなお老舗の映画雑誌として続いている。この本はキネマ旬報という雑誌の歴史について記した、貴重な証言でもある。

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2007.07.30

映画三国志―小説東映

Photo映画三国志―小説東映
大下 英治
徳間書店 1990-05

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 日本のメジャー映画会社である東映の歴史を、岡田茂など会社経営社たちの側から描いたノンフィクション・ノベル。いろいろな映画関連本、インタビューなどを資料にしつつ、東映に係わった人々の姿やそこで起きた事件を紹介している。知っている話もあれば、知らなかった話もあって面白い。東映の歴史を通して見た、戦後日本映画史でもある。

 あくまでも小説なので、資料にはならない。しかし映画にまつわるいろいろな言葉やエピソードは著者が別の資料から引用しているものなので、それはそれなりに参考にはなる。

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2007.07.21

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ

433403392X字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ
太田 直子
光文社 2007-02-16

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 字幕翻訳家の太田直子さんが、仕事を通じて日本語について感じているアレコレを書きつづったエッセイ。映画字幕についての裏話は既に幾つかの本が出ているので、それらと重複するような話は極力避けられている様子。つまり「映画字幕はこんな風に作られてます」とか、「映画字幕は翻訳とはちょっと違います」なんて話はあまり載ってない。映画字幕製作の舞台裏を知りたいなら、他の本の方が参考になるだろう。(もちろん裏話も少しは書いてあるんだけどね。)

 この本で面白いのは、字幕翻訳家と映画配給会社の綱引きや駆け引きを赤裸々に書いている部分だ。映画作品の意図をねじ曲げてでも、観客に感動を押し売りするかのような字幕を求める担当者たちと、できるだけ映画本来の意図を優先させようとする著者の攻防。(タイトルは伏せられているけれど、実話をもとにした映画ってのは『サルバドールの朝』のことかな。)映画の中に台詞がないのに、そこに無理矢理字幕を付けちゃう話とか、登場人物のちょっとした台詞を、勝手に気持ちをくみ取って超訳してしまう話とか、いかにもアリソウで苦笑いしてしまう。映画の字幕を作るのは確かに字幕翻訳家なんだけど、完成した字幕が配給会社の判断で勝手に直されてしまうことがあるとなると、下手くそな字幕があったとしても、それは字幕翻訳が悪いのか配給会社が悪いのか判断できませんな。

 まあ字幕翻訳家を選ぶのも配給会社の仕事だから、字幕がヘボならその責任は配給会社にあるんだとは思うけどね……。

 いわゆる禁止用語(不快語や差別語)の扱いについての話題もなかなか面白く読めたし、字幕版と吹き替え版についての話も面白い。ただしこの本、全体としてのまとまりはあまりない。個々の話題についても、映画に関係の深い話もあれば、まったく映画と関係のない話も出てきたりする。ものすごく面白い部分もあれば、ひどく退屈な部分もある。しかし映画を通して日々「日本語」と向き合っている著者の言葉には肯けるところも多く、読んでいて刺激にはならないけれど、「よくぞ言った!」と溜飲が下がる箇所も多い。

 著者は字幕翻訳の将来にちょっと悲観的なことも述べているが、日本が映像輸入大国である限り、今後も字幕翻訳の需要はなくならないと思う。ただし労働環境は厳しくなりそうだ。字幕翻訳の仕事はなくならなくても、職業としての「字幕翻訳家」はかなり大変だろうと思う。この本の中にも、薄給で使い捨てられていく翻訳家の話が出てくる。学生アルバイトみたいな形で、映像字幕の仕事に係わる人は増える。しかしそれは素人に毛が生えたようなものであって、長い経験と技術に裏打ちされたプロの水準には達していない。若手のギャラは安く、志望者は多いので人材は使い捨てになる。日本人は相対として国語力が落ちている。配給会社の担当者が字幕の品質にこだわらなくなれば、 字幕翻訳の質だって際限なく低下していく……。悪循環だな〜。

4768477712字幕仕掛人一代記―神島きみ自伝
神島 きみ
パンドラ 1995-11

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2007.07.11

「殺陣」という文化―チャンバラ時代劇映画を探る

4790712362「殺陣」という文化―チャンバラ時代劇映画を探る
小川 順子
世界思想社教学社 2007-04

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 日本の時代劇に特有の「殺陣」を取り上げ、ひとつの映像文化として掘り下げていこうとした本。映画ガイドではなく、中身はあくまでも硬派の研究書。殺陣やチャンバラを取り上げる本が得てして映画論や俳優論、作品論に流れるのに対し、この本は何とかして「殺陣」そのものに踏みとどまろうとしている。その心意気やよし。ただし映像作品を研究する常として、書籍では映像作品そのものを引用できないという弱点がある。この本でも、それが克服できていない。

 他の時代劇本、チャンバラ本では、殺陣のシーンを言葉で再現していこうとするわけだが、この本の著者はそれが苦手なのか、そもそもそれをする気がないのか、「殺陣」というきらびやかな映像世界を取り上げている割には、文章は素っ気なく味気ない。より具体的に言うなら、この本を読んでも取り上げられている映画を観てみたいとはあまり思えないのだ。もちろんこれは、読者を映画作品に誘うガイドブックではないから、そんなことは関係ないと行ってしまうことも出来るんだけど……。

 方法論はともかくとして、議論があまりツボにはまっていないような印象を強く受けるのだ。例えばそれは取材の姿勢にも現れていて、巻末に収録されている藤蔭静枝のインタビューが、そもそもなぜこの本に収録されているのかすらわからない。

 著者も参考にしたという永田哲朗の「殺陣―チャンバラ映画史」の足下にも及ばない本。「殺陣」は現在絶版なので、どこかが復刊してくれないかな〜。

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2007.06.30

シネマ今昔問答・望郷篇

4403210872シネマ今昔問答・望郷篇
和田 誠
新書館 2005-12

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 イラストレーターで映画監督でもある和田誠が、インタビュー形式で綴る私的映画史。前作「シネマ今昔問答」は和田誠が案内人になって世界の映画史を語るという趣向だったが、今回はそうした教科書的な内容を離れて、もっとプライベートな領域に踏み込んでいる。著者が初めて観た映画の話、子供の頃に好きだった映画の話、個人的な映画の趣味、映画の仕事との係わり、映画監督になったいきさつや撮影裏話、映画批評についての考え方、映画に出演することになった理由などなど。

 前作がオーソドックスな映画史の教科書にもなりそうな内容だったのに対して、今回はあくまでも個人的な話に終始しており、そこがこの本の魅力にもなっている。ひとりの映画ファンが、映画にのめり込み、はてはそれを職業にしてしまうまでが綴られているのだから、これが面白くないはずがない。特に面白く読んだのは、やはり「麻雀放浪記」から始まる監督作についての話。僕は和田監督の『麻雀放浪記』と『快盗ルビー』は好きだが、それ以降の作品はイマイチだな〜という印象を持っているのだけれど、この本で裏話を読んだりすると、『怖がる人々』や『真夜中まで』をまた観てみたいな〜と思ったりもする。

 映画というのは、じつは裏話の方が面白かったりするのだ。

4403210848シネマ今昔問答
和田 誠
新書館 2004-01

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2007.03.07

ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学

4622083035ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学
加藤 幹郎
みすず書房 2005-06

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 ずいぶん前に購入して、なかなか読まなかった本。まあこれはこれで、映画批評のひとつの形ではある。でも僕の趣味ではないけどね。まあ出版社がみすず書房だから、余計にこういう文体になるのかもしれないけど。

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2007.02.13

シナリオ人生

4004309026シナリオ人生
新藤 兼人
岩波書店 2004-07

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 映画監督であり脚本家でもある新藤兼人の自伝的エッセイ。生い立ち、映画界を目指したきっかけ、シナリオとの出会い、習作時代、溝口健二監督の想い出、シナリオの三段階理論など、いろいろと盛りだくさんの内容だ。しかしこの本の底に流れているのは、最初の妻・久慈孝子との短い結婚生活に対する思いだ。ふたりの出会いとプロポーズ、そして貧しかった新婚時代、ようやく世間に認められ始めたときにやってくる、妻の病気と死……。淡々とした筆致が、逆に大きな感動を呼ぶ。

 新藤兼人監督はこの「久慈さん」との想い出をもとに、映画監督デビュー作『愛妻物語』を作った。その映画で妻・孝子を演じたのが、その後の新藤監督の公私に渡るパートナーとなる乙羽信子だった。

B000I0RE4W愛妻物語
乙羽信子 新藤兼人 宇野重吉
角川エンタテインメント 2006-11-24

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2007.02.12

黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて

4163677909黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて
田草川 弘
文藝春秋 2006-04

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 映画監督黒澤明にとって晩年のトラウマとなった『トラ トラ トラ!』監督解任事件に、新たに発掘されたアメリカ側の資料や、プロデューサーのエルモ・ウィリアムズへの新しいインタビューなどを通してまったく新しい光を当てたドキュメント。『トラ トラ トラ!』についてはこれまでも様々な説が出されていたし、そこでは黒澤を解任に追い込んだ犯人捜しが行われるのが常だった。(例えば「黒沢明集成〈3〉」にあるレポートや「異説・黒沢明」にある、日本側プロデューサー青柳哲郎を悪役にする説。)しかしこの本は、それらとは一線を画している。これは日本とアメリカという異なった文化が出会い、互いに強く惹かれあいながらも相互を理解し得ないまま破局を迎える物語なのだ。

 黒澤監督が撮影所で起こしたとされる数々の奇行については知っていたが、この本にはそれも克明に再現されている。(コミック「クロサワ―炎の映画監督・黒沢明伝」にもその様子が描かれている。)こうした奇行ぶりを見ると、やはり黒澤明がフォックスに解任されるのもやむを得ないのかなと思う。しかしこうした奇行の出現は、それまで水面下で進行していた事柄が一気に表面に浮かび上がったものにすぎない。本書はそこに至る相互の行き違いを、映画の企画時点までさかのぼって解読していく。『史上最大の作戦』の太平洋戦争版として企画された映画が、いかにして黒澤明のもとに回ってきたのか。黒澤はどんなつもりでその仕事を引き受け、そこにどんな情報の行き違いがあったのか。本書を読めば、この映画の製作にはフォックスの側にも黒澤側にも、最初からボタンの掛け違いがあったことがわかる。そしてそのボタンの掛け違いに、なぜか互いが最後まで気が付かずにいたのだ。

 1960年代の日本には、ハリウッドの映画ビジネスがいかなるものなのかを知る人が誰もいなかった。またハリウッドの側にも、日本の映画製作事情を知る人が誰もいなかった。双方が勝手に「映画作りの方法は万国共通」だと思って、どんどん企画が進んでいったのが実情ではなかろうか。ハリウッドのプロデューサー・システムがいかなるものなのかぐらい、今ならちょっとした映画ファンでも知っているだろう。しかし黒澤明とその周辺の人たちは、それをまったく知らなかったし、知ろうとすらしなかった。

 いずれにせよ、『トラ トラ トラ!』事件については、この本が今後も決定版の底本として映画史の中に位置づけられることは間違いなさそうだ。(あとは青柳哲郎プロデューサーからの証言が聞いてみたいけれど。)黒澤明については、他にもまだなぞめいた事件がいくつかある。例えば三船敏郎との不仲はなぜ生じたのか。『影武者』での勝新太郎解任事件はなぜ起きたのかなどだ。こうした問題についても、いずれは決定的な本が出てくることを望む。

自著を語る

トラ トラ トラ!
トラ トラ トラ!リチャード・フライシャー 舛田利雄 深作欣二

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2007.01.26

キム・ギドクの世界 ~野生もしくは贖罪の山羊~

4861910064キム・ギドクの世界 ~野生もしくは贖罪の山羊~
チョン・ソンイル 秋那 南 裕恵
白夜書房 2005-03-26

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 韓国映画界の異端児キム・ギドク監督についてのまとまった本で、中身は作家論あり、インタビューあり、作品紹介ありと盛りだくさん。しかし全体としては、ちょっとまとまりに欠ける。資料としての価値を期待したのだが、簡単な年譜もないのでは話にならない。ちょっと期待はずれ。

 キム・ギドク監督については、もっと多くのことが語られてもいいはずだし、おそらく今後、さまざまな場所で語られることになると思う。これはその第一弾。

魚と寝る女
魚と寝る女キム・ギドク ソ・ジョン パク・ソンヒ

コロムビアミュージックエンタテインメント 2005-03-02
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春夏秋冬そして春 悪い男 サマリア 悪い女 受取人不明

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2007.01.20

複眼の映像 私と黒澤明

4163675000複眼の映像 私と黒澤明
橋本 忍
文藝春秋 2005-10-25

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 「脚本家・橋本忍の世界」に続いて読んだ、橋本忍本人の手による自伝的な黒澤明論。黒澤明との共同作業が、具体的にどのような方法で行われていたのかという詳細が手に取るようにわかるのは、さすがに脚本家の手によるものと言うべきだろうか。『七人の侍』までの脚本作りと、『生きものの記録』以降の脚本作りが、同じような脚本家連名の共同作業であっても、内実はまったく別物であることがこれを読むとよくわかるのだ。これは黒澤明を研究する人にとって、必読の資料となることだろう。またシナリオライターを目指す人にとっても、よい手引き書になるに違いない。橋本忍は戦前の名監督であり名脚本家でもあった伊丹万作にとって、唯一の例外的な弟子となった人でもある。本人のキャリアの中では、黒澤明、小國英雄、菊島隆三など、やはり超一流の書き手たちと共同で作業をしている。だからその脚本哲学の中には、戦前から戦後にかけての日本映画黄金時代を支えた脚本作りのエッセンスが詰まっている。

 黒澤明の作風が大きく変化して行った理由としては、さまざまな問題が考えられると思う。必ずしもそのすべてを、脚本作りにのみ結びつけることはできないだろう。しかし映画の青写真である脚本をいかにして作るかというのは、映画の土台をどうするかということであって、これに着目した、しかもその現場にいた当事者の視点からの黒澤明論という点で、これはとてもユニークであり、黒澤明と共同で脚本を書いた当事者たちが(この本を書いた橋本忍を含めて)全員が亡くなっていることを考えると、今後決して書かれることのない唯一無二の本となるだろう。

 『七人の侍』や『生きる』など、著者と黒澤明の共同作業についてはもちろん詳しく書かれているし、黒澤明に対する野村芳太郎監督の評価や、挫折した国立映画劇場と国立映画撮影所の建設計画など、これまでに聞いたことのない話題が出てくるのも新鮮。これはじつに面白い本だった。

B00006ITSR七人の侍
黒澤明 橋本忍 三船敏郎
東宝 2002-10-25

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2007.01.18

脚本家・橋本忍の世界

4087203050脚本家・橋本忍の世界
村井 淳志
集英社 2005-08

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 戦後日本映画界を代表する脚本家・橋本忍の代表作9本を取り上げ、作品誕生の背景、執筆の裏話、作品の反響などについて論じた本。随所に橋本忍本人へのインタビューがあるのが貴重だ。研究書と呼ぶには軽すぎるし、映画ガイドブックとしてはマニアックすぎる。また評伝としては、取り上げていない作品が多すぎる。1冊の本としてはちょっと中途半端にも思えるが、個々の作品につての記事は読み応えがあって面白かった。取り上げられている作品は、『七人の侍』『羅生門』『真昼の暗黒』『私は貝になりたい』『切腹』『白い巨塔』『日本のいちばん長い日』『八甲田山』『砂の器』。

 ここで取り上げられた作品は確かに橋本忍の代表作ばかりだが、著者自身が後書きで述べているとおり、『生きる』や『張込み』などの作品が取り上げられていないのは残念。インタビューも断片的で、まとまった読み応えのあるものになっていないのは残念。しかし黒澤明との共同脚本がどのように書かれていたのかなど、これまで映画ファンにもなかなかわかりにくかった部分を解明しているのはありがたい。(ただしこれらの共同作業の詳細については、この本と同時期に書かれた橋本忍自身の自伝的著書「複眼の映像 私と黒澤明」に、より克明な記事があるので、黒澤映画のファンはそちらも参考にすべきだと思う。

B0007W7GPS日本のいちばん長い日
橋本忍 岡本喜八 三船敏郎
東宝 2005-07-22

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2007.01.10

パパ、黒澤明

416355890Xパパ、黒澤明
黒沢 和子
文藝春秋 2000-01

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 黒澤明が亡くなり、遺作シナリオの『雨あがる』が小泉堯史監督に映画化された直後、黒澤監督の長女である黒澤和子が書いた父・黒澤明との思い出の記録。事前に「回想 黒沢明」を読んでいたのだが、内容的にはこの「パパ、黒澤明」の方が重く悲しい。天才とも天皇とも呼ばれて戦後の日本映画界を背負った黒澤明が、挫折し、年老い、ケガで寝たきりになって衰弱し、死んでいく様子が、ごく身近で世話をしていた娘の視線で克明に描かれているのだ。

 しかしながら、他の映画本やインタビューではうかがい知ることの出来なかった「家庭人としての黒澤明」の姿が記録されているという意味で、これはなかなか読み応えのある本でもある。黒澤明にまつわる数々の伝説や逸話も、なるほど黒澤明がこんな人だったからこそ生まれたのかと納得できる点が多い。

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2007.01.06

回想 黒澤明

4121017617回想 黒澤明
黒沢 和子
中央公論新社 2004-08

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 黒澤明監督の思い出を、娘の黒沢和子が綴ったエッセイ集。他の映画本やインタビューには現れない、黒澤明の日常が描かれているのが面白い。

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2006.11.30

トットチャンネル

4101334021トットチャンネル
黒柳 徹子
新潮社 1987-03

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 大ベストセラーとなった黒柳徹子の自伝「窓ぎわのトットちゃん」の、いわば続編として書かれた著者の青春記。テレビ放送開始直後の放送局の様子を、生き生きと描いたエッセイ風の自伝だ。先日これを映画化したものをDVDで見て、面白かったので原作を読んでみようと思った。映画では多くのエピソードを割愛しているので、原作の方がエピソードの数は豊富で面白い。特に殺された忍者が「それは拙者の扶持でござる」と言って絶命するエピソードは傑作。

 おそらくテレビ放送初期のエピソードというのは多くの人たちが書き残していると思うのだが、これはその中でも間違いなく面白さナンバーワンだと思う。映画を事前に見ていたので、文字でエピソードを読みながらも情景が手に取るように見えてくるのが楽しい。

トットチャンネル
トットチャンネル斉藤由貴 黒柳徹子 大森一樹

東宝 2006-11-23
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2006.10.05

映画・映像業界就職ガイド (2006)

4873766133映画・映像業界就職ガイド (2006)
キネマ旬報社
キネマ旬報社 2004-11

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 キネマ旬報がここ数年、毎年出している映画業界就職ガイドの2006年版。現在は最新の2007年版が出ているが、じきに2008年版も出るだろう。就職希望の学生は毎年入れ代わるし、会社案内などのデータも毎年差し替えなければならないので、この手のガイド本には毎年決まった一定数の需要がある。キネマ旬報は、いい商売をしているよな~。まあそれはともかくとして、これはこれでよくできたガイドブックだ。映画業界の仕事の内容や、どうしたら就職できるか、企業側はどんな人材を求めているのかなどを、完結にまとめている。これを見れば、映画業界の全体像がなんとなくわかるのだ。「就職」を切り口にした映画業界の案内本として、就職を考えていない普通の映画ファンが読んでも興味の持てる内容になっていると思う。

 巻末には映画会社や配給会社の連絡先リストがあるので、ライターやメディア関係者が、配給会社に問い合わせをしたり試写の案内を聞いたりする時も便利だと思う。(配給会社や宣伝会社には、タウンページに載ってないところも多いからね。)

映画・映像業界就職ガイド (’07)
映画・映像業界就職ガイド (’07)キネマ旬報映画総合研究所

キネマ旬報社 2005-12
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映画プロデューサーの基礎知識―映画ビジネスの入り口から出口まで 映画・アニメ・CMの全仕事 (2006) 映画の仕事はやめられない! きらめく映像ビジネス! 映画検定公式テキストブック

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2006.09.25

外国映画ビジネスが面白い

4873765188外国映画ビジネスが面白い
キネマ旬報社
キネマ旬報社 1999-09

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 キネ旬ムックの1冊として1999年に発行された本で、内容的には今見るとちょっと古びたトピックが散見されるものの、洋画配給や宣伝の仕事について知りたい人や、それらの仕事に就きたいと思っている人が読めばとても参考になるであろう本。外国映画の輸入から劇場公開、二次セールまでの流れを簡単に紹介するイントロダクションに続き、本書のほとんどを占めていてるのは、映画配給会社で実際に仕事をしている人たちへのインタビュー。これがじつに面白い。取材テープをもとに詳細に作られた記事からは、時として喋っている人の息づかいまで伝わってくるような気がする。

 この本ができたころと比べると映画業界もかなり様子が変わっていて、会社が統合したり別会社になったりして、取材した配給会社の幾つかは姿を消している。(例えば日本ヘラルド映画など。)紹介されている各種のデータも、ちょっと古めかしい。しかし配給会社の仕事自体はそれほど大きく変わっていないので、語られている中身は今でも参考になるだろう。アマゾンのマーケットプレイスなら百数十円で購入できる(送料がかかるけど)本なので、配給会社への就職を目指している学生などは必読だ!

映画・映像業界就職ガイド (’07)
映画・映像業界就職ガイド (’07)キネマ旬報映画総合研究所

キネマ旬報社 2005-12
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外国映画 ハラハラドキドキぼくの500本

4166604767外国映画 ハラハラドキドキぼくの500本
双葉 十三郎
文藝春秋 2005-11

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 「外国映画ぼくの500本」「日本映画 ぼくの300本」に続く、文春新書判の双葉十三郎流映画ガイド。いわゆる名作名画に限らず、観ていてハラハラドキドキできる娯楽映画を中心に、映画史初期のサイレント映画から最近の作品まで500本を選び出して紹介している。内容紹介と評価を兼ねる簡潔な文章も歯切れがよく、紹介文を読んでいるとついその映画を観たくなってしまうような記事も多い。しかしそうした気分にさせられる映画ほど、DVDにはなっていなかったりするんだよな~。

 いずれにせよ、たったひとりの選者による映画ガイドという点では価値のある本。複数の選者が投票形式でベスト作品を選ぶと、どうしても無難な名作名画に票が偏って教養主義の匂いがしてくるものだが、この本にはそうした傾向がまったくないのがヨロシイ。サスペンス映画やホラー映画、B・C級のアクション映画など、映画ファンがにやりとするような選出ぶり。探偵映画がご贔屓なのは双葉さんの個人的な趣味だろう。

外国映画ぼくの500本
外国映画ぼくの500本双葉 十三郎

文藝春秋 2003-04
売り上げランキング : 72399

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日本映画 ぼくの300本 映画検定公式問題集―2級・3級・4級全300問 ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200 外国映画 ハラハラドキドキぼくの500本 映画検定公式テキストブック

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2006.09.21

モンローもいる暗い部屋

4106017229モンローもいる暗い部屋
和田 誠
新潮社 1985-08

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 昭和60年(1985年)に編集された映画エッセイ集。エッセイというのはかなり幅の広い概念で、中身は20数人の著者による、コラム、随筆、映画評論、映画批評、映画論、女優論、ジャンル論、はたまた対談、短編小説までが収録されている。映画にまつわる文章のショーケースとでもいった内容で、これは映画にまつわる文章で飯を食っている僕にもとても勉強になる本だった。

 近所のブックオフで100円棚から拾ってきたものだが、これはまさに予想外の拾い物でした。

それはまた別の話
それはまた別の話和田 誠 三谷 幸喜

文藝春秋 2001-02
売り上げランキング : 51106

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これもまた別の話 仕事、三谷幸喜の 俺はその夜多くのことを学んだ 気まずい二人 オンリー・ミー―私だけを

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2006.09.20

たたかう映画―ドキュメンタリストの昭和史

4004300827たたかう映画―ドキュメンタリストの昭和史
亀井 文夫
岩波書店 1989-08

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 戦時中に監督したドキュメンタリー映画『戦ふ兵隊』が上映禁止になり、その後に撮った何本かの作品とソビエト留学の経歴から治安維持法違反で逮捕拘禁され、戦後は『日本の悲劇』がGHQの手で上映禁止にされ、東宝争議では契約社員であるにもかかわらず社員並に会社から解雇された亀井文夫監督の自伝。とはいえこれは、著者があちこちに書いた記事の断片を寄せ集め、時系列にまとめて編集された「モンタージュ自伝」だ。

 亀井文夫の名前は日本のドキュメンタリー映画(映像)史をひもとけば必ず登場するので、その人柄や映画についての考えには興味があった。特にドキュメンタリー映画における「やらせ」の問題は、海外のドキュメンタリーならロバート・フラハティの昔から、日本のドキュメンタリーなら亀井文夫の時代から行われていたというので有名。ドキュメンタリー映画の中の「フィクション」については、この本の中にもちゃんと書かれている。

マンモスの骨が発掘された時、学者たちはこの骨を組み立てるために、不足の骨を模造して全体の型を再現する。この場合、全体の型を正確につくり出すことが必要なのである。模型の骨は、そのための一つの手段なのであって、模型を使ったから全体が偽物だという人はいないだろう。記録映画のフィクションは、ちょうどこのような骨の作用をすると考えればよいと思う。(P140)

 『戦ふ兵隊』や『日本の悲劇』についてはある程度知っていたので、この本では著者がソビエトで映画の勉強を始めた経緯や、戦後の活動などについて書かれている部分が面白かった。

戦ふ兵隊
戦ふ兵隊亀井文夫

ビデオメーカー 2004-11-21
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上海 支那事変後方記録 南京 戦線後方記録映画 轟沈 印度洋潜水艦作戦記録 陸軍航空戦記 ビルマ篇 支那事変海軍作戦記録

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2006.09.19

回想の日本映画黄金期

4389500260回想の日本映画黄金期
舟橋 和郎
清水書院 1996-12

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 『きけ、わだつみの声』など戦後の日本映画界で多数のシナリオを執筆し、シナリオライター志望者のバイブル「シナリオ作法四十八章」の著者でもある舟橋和郎が、月刊「シナリオ」に連載していたコラムをまとめたもの。著者のシナリオ第一作目『彼と彼女は行く』が映画化された昭和21年から、映画産業が規模的なピークを迎える昭和31年ごろまでの10年間を、著者自身の脚本家としての歩みと映画界の様子をからめながら綴った回顧録だ。

 もともとが雑誌連載ということもあって、ひとつひとつの記事が短めで歯切れがいい。当時の映画界の様子や、あまり他の文献などに紹介されていない映画界と作品にまつわるエピソードが盛りだくさん。特に菊島隆三が映画『野良犬』(黒澤明監督)の着想をいかに得たかといった話など、読んでいてワクワクしてくる。大映のミュージカル映画『アスファルト・ガール』の裏話も面白かった。(ただし僕は著者のミュージカル映画の定義には異論がある。)

 著者はこの本の随所で、映画が原作によりかかってオリジナルを作る工夫を怠ったことや、監督の権限を絶対視するディレクター・システムの弊害を訴え、そうした映画界の体質が映画産業を斜陽化させたと主張する。でもテレビは無関係とまで言われると、それは言い過ぎだろうと思う。映画料金を下げれば観客が倍になるという主張も疑問。昭和30年代半ばから映画の観客が激減した最大の原因は、やはりテレビだと思う。

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2006.09.13

映画館と観客の文化史

4121018540映画館と観客の文化史
加藤 幹郎
中央公論新社 2006-07

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 観客と映画を結ぶ「映画館」という媒体を通して見た映画史の試み。これは面白い本だった。普通の映画史の本に載っていないような話を、ずいぶんたくさん知ることができた。初期の映画館(ニッケルオデオン)ではスライド映写される歌詞に合わせて観客全員が大合唱をしていたなんて、普通の映画史の本には決して載っていない。「観客が歌う」という行為は映画と直接関係ないので、映画史からは排除されてしまうのだ。ファントム・ライドというバーチャル列車の興行もしかり。こんなものは普通の映画史の本では、まず絶対にお目にかかれない。

 著者は映画批評家なので、目の前の現象と切り結ぼうとする言葉の閃きが時折見られることがあるのだが、新書というサイズの問題もあって、この本のではそれは最小限に留められている。むしろそれが、この本のスピード感につながっているようにも思う。著者個人の解釈や考察より、まずは映画館における映画受容の変遷という事実そのものが、僕には興味深く面白いものだったからだ。

 他の映画史の教科書ではあまり知ることができなかった事柄の他にも、今まで映画史の中の言葉として漠然と知っていても実態がよくわからなかった事柄について、細かく記しているのはありがたい。例えばそれは、本書冒頭にあるパノラマ館についての記述だったり、ドライブインシアターについての細かな記事だったり、日本映画初期の連鎖劇についての記事だったりする。

 最近読んだ映画関連本の中では、まず間違いなく一番面白かった本だ。この著者の本を読むのはこれが初めてだったんだけど、他にも読んでみようかな~。

映画の論理―新しい映画史のために
映画の論理―新しい映画史のために加藤 幹郎

みすず書房 2005-02
売り上げランキング : 130614

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映画とは何か ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学 映画 視線のポリティクス―古典的ハリウッド映画の戦い 「ブレードランナー」論序説 鏡の迷路―映画分類学序説

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2006.08.27

シナリオ構造論 改版

シナリオ構造論 改版
シナリオ構造論 改版野田 高梧

宝文館出版 1987-06
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 小津安二郎監督とのコンビで数々の名作を生み出した脚本家の野田高梧が、戦後すぐに雑誌「シナリオ」に連載した「シナリオ方法論」をもとに、1952年(昭和27年)に発行されたシナリオ指南書。「シナリオ」誌自体がシナリオ作家同士の交流を目的とした専門誌だったこともあり、この本の内容もシナリオの“入門書”というより、プロが読んでも納得するシナリオの理論書に近いものだ。読者としては同業のシナリオ作家、映画監督、製作者などの映画人はもちろん、シナリオ作家志望の若者、映画批評家、映画ファンなどまでが視野に入っていたのだろう。ここにあるのはシナリオの「技術」や「ノウハウ」ではなく、シナリオを形作っている「思想」だ。

 それにしても、この本が書かれたときの映画の「若さ」には驚いてしまう。映画誕生からわずか60年に満たない時期、トーキー発明から20年に満たない時代にこの本は書かれている。それでいて、内容は今読んでもまず古びているところがない。実例として取り上げられている作品タイトルはいささか古めかしいが、それでもほとんどは映画史に残るような名作傑作の類で、この程度のものは実際に観ないまでも、タイトルぐらいは知っておくべきかもしれない。

 歴史的な名著のひとつだと思うが、版を重ねて半世紀以上。残念ながら現在は品切れ状態になっているらしい。内容的に特に難しいところもないし、言葉づかいも問題ないのだが、漢字は難しいので、これだけ改めた改定版を出してくれると、今現在映画を学んでいる学生などにとっても有益なテキストになるだろう。ついでに映画タイトルや人名などに注を入れて、現代の読者にわかりやすい体裁にしてくれてもいいかもしれない。タイトルや人名、地名などの表記に、現代とはちょっと違っているものがいくつか見受けられるためだ。

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2006.08.23

俳優になろうか―「私の履歴書」

4022607033俳優になろうか―「私の履歴書」
笠 智衆
朝日新聞 1992-03

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 小津安二郎監督作品の常連として映画ファンにお馴染みの、俳優・笠智衆の自伝。日経新聞の「私の履歴書」に連載されていたインタビューを加筆したものだ。生い立ちから俳優生活に入ったきっかけ、出演作や監督、俳優仲間との思い出など、話はほぼ時代に沿って進んでいくのだが、時々時代を超えて話が脱線したりするのがインタビュー記事のお楽しみでもある。

 松竹鎌田時代の話や、サイレントからトーキーに移る時代の苦労話など、今となっては貴重な証言が数多い。小津監督はもちろん、脚本家の野田高悟、清水オヤジこと清水宏監督、五所平之助監督、木下恵介監督、稲垣浩監督、俳優の三船敏郎などなど、映画史に残る有名人たちとの逸話も楽しい。

小津安二郎 DVD-BOX 第一集
小津安二郎 DVD-BOX 第一集小津安二郎 野田高梧 笠智衆

松竹 2003-09-25
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小津安二郎 DVD-BOX 第二集 小津安二郎 DVD-BOX 第三集 小津安二郎 DVD-BOX 第四集 成瀬巳喜男 THE MASTERWORKS 1 小早川家の秋

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2006.08.21

ハリウッドで勝て!

4106101777ハリウッドで勝て!
一瀬 隆重
新潮社 2006-08-17

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 『リング』や『呪怨』で始まったJホラー・ブームの仕掛け人であり、『呪怨』のアメリカ版リメイク『THE JUON/呪怨』で日本人プロデューサーとしては初の全米No.1を獲得した一瀬隆重プロデューサーの著書。全体は自伝的な構成をとっていて、著者の生い立ちや少年時代の映像体験、自主映画作りからプロデューサーを目指した時代、海外とのコラボレーションやアメリカ進出、日本での業界刷新の試み、Jホラーの誕生、拠点をアメリカに移しての活動など、著者の映画との関わりを通して、日本とアメリカの映画業界の違い、映画プロデューサーの仕事、アメリカ映画界の現状などを語っていく。

 僕は著者の5歳年下で、この著者が関わった作品やプロジェクトをリアルタイムで横目に見ながら現在に至っている。1980年代のミニシアター・ブームやインディーズ映画ブーム、Vシネマのアメリカ版「Vアメリカ」、著者の唯一の監督作『帝都大戦』も観ている。著者が体験した日本映画の停滞ぶりは、僕もひとりの観客として知っていたが、それを内側から観た人の言葉はとても興味深かった。

 自伝形式なので全体を貫くストーリーが存在し、この手の映画業界解説書にありがちな情報の羅列になっていないのがいい。登場するのは著者の体験談なので、個々のエピソードにも情報と同時にストーリーがある。これは「映画プロデューサーってどんな仕事なの?」という素朴な疑問に答えてくれる入門書であると同時に、ここ20年ほどの映画界の流れがわかる映画史の証言でもあり、これから映画界を目指す人への励ましの書、映画を観る映画ファンに業界の裏側を紹介する解説書でもある。

 インタビューをもとにして作られた本らしく、しゃべり口調の文体はスピーディーで読みやすい。僕は他の仕事をしながら3時間ぐらいで読んでしまった。かといって情報が薄いわけではない。最近読んだ映画本の中ではもっとも面白い1冊だった。

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2006.07.25

映画はやくざなり

4104609013映画はやくざなり
笠原 和夫
新潮社 2003-06

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 以前も一度読んでいるので今回は再読。全体は三部構成。第一部は著者が任侠映画の脚本に関わり始めたきっかけから、実録やくざ映画の終焉、そして著者が筆を置くまでを綴った自伝的エッセイ。第二部はシナリオ・ライターとしての心得をまとめた「シナリオ骨法十箇条」。シナリオに取りかかるまでの準備なども解説してあり、シナリオに興味のある人にはバイブルとなり得る内容だと思う。第三部は未映画化シナリオ「沖縄進撃作戦」。事前に「十箇条」を読んでいると、シナリオを見ながらそれを再検証できる。つまりここにあるのは、理論(十箇条)と実践(シナリオ)だ。

 第一部の自伝エッセイ部分は、膨大なインタビューをまとめた「昭和の劇」や、自伝小説「『妖しの民』と生まれきて」ともだいぶ重なり合っている。しかし「やくざ映画の脚本家」として知られる著者がまさにやくざ映画と格闘していたその時代を切り取っているという意味で、本書の第一部は著者の人生の凝縮されたエッセンスとも言えそうだ。それにしてもここに登場する映画人たちのなんと魅力的なことか。『仁義なき戦い』などで暴力の中にある人間喜劇を描いた著者の人間観が、こうした部分にも反映しているように思う。

昭和の劇―映画脚本家・笠原和夫
昭和の劇―映画脚本家・笠原和夫笠原 和夫 スガ 秀実 荒井 晴彦

太田出版 2002-10
売り上げランキング : 185327

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「仁義なき戦い」調査・取材録集成 『仁義なき戦い』をつくった男たち―深作欣二と笠原和夫 破滅の美学 映画はやくざなり 「妖しの民」と生まれきて

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2006.07.23

映画ビジネス最前線―新たなる挑戦!GAGA

4750001562映画ビジネス最前線―新たなる挑戦!GAGA
大高 宏雄
B!インターナショナルブックス 2003-06

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 日本の映画ビジネスを精力的に取材している著者による、配給会社GAGAの歩み。3年前(2003年6月)に出た本なので、GAGAがUSENの子会社になる2004年以降の出来事についてはまったく触れていない。USENと提携して以来、GAGAには配給会社としてかつての勢いがなくなっているように感じられる。配給半数も激減したし、内容的にも地味になった。これが一時的なものなのか、それとも会社の方針に大きな変化があってのことなのかはわからないが、角をためて牛を殺すということにならなければいいのだけれど……。

 インターネットの普及や全国津々浦々に至るシネコンの浸透によって、映画ビジネスは大きく変化している。今後はテレビがハイビジョン化、多チャンネル化し、各家庭に張りめぐらされているインターネット配線も過渡的なADSLから光ケーブルに変わっていく。映画ビジネスは、3年や5年という短いスパンで、その勢力図や業界地図を大きく書き換えるダイナミックな世界になっているのだ。(それだけ市場の規模が小さいということでもあるのだけれど……)GAGAとUSENの関連の中で、GAGAが既存の配給会社とは違うどのような道をたどっていくのかについては、著者によるさらなる取材を期待したい。

482224508XUSEN宇野康秀の挑戦!カリスマはいらない。
和田 勉
日経BP社 2006-04-20

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2006.07.22

目からウロコのシナリオ 虎の巻

4779111323目からウロコのシナリオ 虎の巻
新井 一
彩流社 2005-11

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 老舗のシナリオ・ライター養成所「シナリオ・センター」の主催者だった著者が、シナリオ・センター発行の「月刊シナリオ教室」に書いた巻頭言の中から、シナリオ執筆の秘訣やアドバイスとなる記事を選りすぐったもの。著者の考えのエッセンスが語られていて参考になるが、これはあくまでもシナリオの書き方を学んでいる人向けの記事であって、この本を読めばシナリオの書き方がわかるというものではない。シナリオの書き方を学びたい人は、同じ著者の「シナリオの基礎技術」から読み始めるのがいいと思う。

 読んでいて気になる点がいくつかある。まず第一に、映画界で伝えられている名言や金言として著者が紹介している言葉の出典が、間違っているのではないかという疑問だ。例えば著者は松竹の故城戸四郎社長の言葉として「一筋、二抜け、三役者」という言葉を紹介しているのだが(P.103)、これはもともと牧野省三の「一スジ、二ヌケ、三ドウサ」が本当なのではないだろうか。また著者はこの「二抜け」の部分をシーンとシーンの間にある「明暗」や「対照」と解釈し、映画のメリハリのことだと解説しているのだ。これは少なくとも、牧野省三の述べた「ヌケ」(フィルムの現像技術=映像のヌケ)とは違う。しかし長年映画界で働いてきた著者が、こうした重要なことをまったく勘違いしているとも思えないので、ひょっとすると城戸四郎は牧野省三の有名な言葉を、自己流に再解釈していたということなのかもしれないけれど……。

 著者の明らかな勘違いに思えるのは、豊田四郎監督が『雪国』(1957)のカットを会社から命じられて、「どこを切っても不完全になる。それでよけれどフィルムをタテに切りたまえ」と言ったというエピソード(P.185)。これは黒澤明の『白痴』(1951)のエピソードと完全に混同している。著者は『雪国』が上映時間4時間だったと言うのだが、『雪国』の上映時間は2時間14分。それに対して『白痴』の上映時間はオリジナルで4時間だったと言われているから、ピッタリと符合するのだ。

 こうなると、著者が引用する他のエピソードや解釈もなにやら怪しげなものに見えてくる。例えば近松門左衛門の「虚実皮膜」を、著者は『事実と虚構の中間(皮膜の間)に人生の真実があるのだ』と解説する。虚実の間にあるのは「芸の真実」だから、それを「人生の真実」としてしまうと誤解を招きそうな気がする。ひょっとすると「月刊シナリオ教室」にこの記事が発表される前に、近松の演劇論について詳しい記事が載っていたかで、当時の読者にはこの説明で意味が通じたのかもしれない。でもそれならそれで、単行本化する際にきちんとそれを補う工夫は必要だろう。

 全体としてはシナリオと映画(あるいはテレビ)について語った実践的好エッセイで、読んでいて今でもためになく部分は多いと思う。シナリオ・ライターを目指している人、映画やテレビに関わる仕事に就きたいと思っている人、映画をもっと楽しみたいと思っている映画ファンなどは、読めば必ず発見があるだろう。少なくとも僕は、読んでいて「ああなるほど」と思うところが少なくなかった。それだけに、著者の勘違いや思い違いを、まったく何の解説もなしにそのまま再掲載している(らしい)編者や編集者の姿勢がちょっと残念だと思う。

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2006.07.21

キリング・フォー・カルチャー―殺しの映像

4845998785キリング・フォー・カルチャー―殺しの映像
デヴィッド ケレケス デヴィッド スレイター David Kerekes
フィルムアート社 1998-02

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 映像メディアの中にはこれまで多くの「人の死の瞬間」が描かれており、その中には撮影のためのトリックもあれば、本当にカメラの前で人が死ぬ様子を記録したものもある。人間の死は究極の見世物映像として、その後も多くの場面で引用され、中には作り物の映像が本物として流通している例もあるという。この本はそうした「死の瞬間の映像」について、細かく調査し検証を加えたものだ。特に大きく繰り上げているのは、「スナッフ映画」と「モンド映画」だ。前者は一部の裕福な好事家のために、地下組織が製作し流通していると言われる本物の殺人ポルノ映画。後者は世界中からさまざまな残酷映像を集めて編集した、いかがわしい(疑似)ドキュメンタリー映画だ。

 本書は全体で三部構成になっている。第一部は『スナッフ』『血を吸うカメラ』『食人族』から『ありふれた事件』に至る、フィクション映画の中に描かれた「本物の殺人映像」についての解説。(この延長に井坂聡の傑作『[Focus]』があるのだが、執筆時期の関係でこれには言及されていない。)第二部は『世界残酷物語』に始まるモンド映画の網羅的な年代記。これを見ると、石井輝男監督の『猟奇女犯罪史』など一連の作品も、モンド映画の文脈の中で語る必要があるように思えてくる。そして第三部が、ニュースや監視カメラなどに収録された、本物の死の映像についてだ。(最近ならこの中に、インターネットで配信されるイスラム過激派の人質殺害映像などを加えるべきかもしれない。)

 次々出てくるタイトルの中には、70年代に『グレート・ハンティング』の洗礼を受け、80年代スプラッタ映画ブームの真っ只中で育った僕にとって懐かしいものも多い。この手の映画が好きな人は、資料として持っていてもいい本だと思う。(巻末に作品リストでもあれば完璧だったのに。)

ヤコペッティの世界残酷物語<ノーカット完全版>
ヤコペッティの世界残酷物語<ノーカット完全版>グァルティエロ・ヤコペッティ ロッサノ・ブラッツィ

ジェネオン エンタテインメント 2004-01-23
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続・世界残酷物語 ノーカット完全版 ヤコペッティの世界女族物語 ヤコペッティの残酷大陸 グレートハンティング 残酷猟奇地帯

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2006.05.29

映画の理論

4905640857映画の理論
ベラ バラージュ Bela Balazs 佐々木 基一
學藝書林 1992-03

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 ハンガリーの映画理論家、ベラ・バラージュ(1884~1949)による映画理論書。著者は映画の誕生からサイレント映画の発展、トーキー映画の出現と発達などをすべてリアルタイムで見ている。サイレント映画の芸術性についてこれほど力強く的確に書ける人は、映画といえば何の断りもなしにトーキーであることが当たり前である現代にはもう現れないと思う。サイレント映画について、サイレントからトーキーへの移り変わりについて、そしてサウンド映画の可能性について考える際は、とても参考になる本だ。

 ただし著者のマルクス主義的な立場や、紹介作品が半世紀以上前の作品に偏っていること(しかもソ連や東欧の作品も多い)、著者の理論を1950年代以降の映画の歴史が一部乗り越えてしまっている部分も多いこと、テレビジョンという新しい映像表現についてまったく記述されていないことなどを考えると、この本の歴史的な限界というものも見えてくる。映画史的には意味のある本だし、理論の多くは現代にもそのまま通じ、あるいは応用が利くものだと思う。したがってそうした理論のふるい分け作業ができる読者には、この本はとても有益なものだろう。そういう意味では、ちょっと上級者向けなのだ。

 現代の読者がすぐとっつきやすいという意味では、ルイス・ジアネッティの「映画技法のリテラシー」など、最近書かれた本の方が優れていると思う。映画というのはその時代性や、技術発達に大きく制約され、影響を受ける芸術なのだ。(このことはベラ・バラージュも論じている。)いずれそう遠くない未来、新しい技術の登場によって、現在の映画も「過去の遺物」になってしまわないとも限らない。映画やそれについての理論は常に発展途上であり、常に書き替えられるべき対象だ。この本を読むと、そんなことが見えてくる。

映画技法のリテラシー〈1〉映像の法則
映画技法のリテラシー〈1〉映像の法則ルイス ジアネッティ Louis Giannetti 堤 和子

フィルムアート社 2003-11
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映画技法のリテラシー〈2〉物語とクリティック 映像プロフェッショナル入門―映画・テレビの現場のクリエーターのために 傑作から学ぶ映画技法完全レファレンス 図解映像編集の秘訣―映画とテレビ番組、コマーシャルから学ぶ映像テクニックのすべて 映画監督術〈2〉cinematic motion

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2006.04.22

ドニー・イェン アクション・ブック

ドニー・イェン アクション・ブックドニー・イェン アクション・ブック
ドニー イェン Yen Donnie 浦川 とめ


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 香港のアクションスターであり、監督やアクション監督もこなすドニー・イェンが、自らのアクション哲学と実践的ノウハウについて書き下ろした本。香港映画のアクションがなぜ世界の追随を許さないのか、その一端がかいまみれる内容になっている。僕はドニー・イェンという俳優が特に好きではなかったのだが、この理論派ぶりには頭が下がる。間違いなく、次世代の香港映画を引っ張っていく大物だと思う。

 この本を読むと、彼がア監督した『ツインズ・エフェクト』などの映画が観たくなってしまう。本の中で説明されていることが、具体的にどんな場面に仕上がっているのか観たくてしょうがないのだ。この本にはDVDも綴じ込んであるが、これはドニー・イェンがどんな人かまったく知らない人と、ドニー・イェンのファン以外にはあまり役に立たないかも。でもカメラの前でドニーが実際に幾つかのアクションを演じて見せ、ひとつのシチュエーションでも無数にアクションが考えられると語る場面には説得力がある。

ツインズ・エフェクト プレミアム・エディション
ツインズ・エフェクト プレミアム・エディションシャーリーン・チョイ ダンテ・ラム ドニー・イェン

ジェネオン エンタテインメント 2004-08-25
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ツインズ・エフェクトII -花都大戦- プレミアム・エディション 香港国際警察 NEW POLICE STORY コレクターズ・エディション (初回限定生産) ベルベット・レイン セブンソード 特別版 (初回限定豪華BOX仕様) 頭文字[イニシャル]D THE MOVIE プレミアム・コレクターズ・ボックス (初回限定生産)

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2006.03.31

映画技法のリテラシー〈2〉

映画技法のリテラシー〈2〉物語とクリティック映画技法のリテラシー〈2〉物語とクリティック
ルイス ジアネッティ Louis Giannetti 堤 和子


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 上下2卷に分かれた映画学の教科書の下巻。図版を多用したとてもよい本で、映画を勉強したい人には間違いなくオススメの1冊(実際には2冊か)。2巻合わせて5千円は高価に思えるかもしれないが、読めば絶対にそれだけの価値はあったと思えるはず。これを読めば映画を分析的に観る目が養われて、これまでの何倍も映画を楽しめるようになると思う。僕は映画について体系的に学んだことがないので、この本はとても参考になった。

 映画を分析的に観るという意味では、フォトグラフィ、ミザンセヌ、動き、編集、サウンド、演技などについて書かれた上巻の方が僕には面白かった。これはあくまでも、上下巻通して読むべき本だ。最後の『市民ケーン』の分析も面白い。『市民ケーン』がまた観たくなってしまった。

映画技法のリテラシー〈1〉映像の法則映画技法のリテラシー〈1〉映像の法則
ルイス ジアネッティ Louis Giannetti 堤 和子

映画技法のリテラシー〈2〉物語とクリティック 映像プロフェッショナル入門―映画・テレビの現場のクリエーターのために 傑作から学ぶ映画技法完全レファレンス 映画監督術〈2〉cinematic motion 映画監督術 SHOT BY SHOT

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2006.03.28

テレビドラマ・映画の世界

テレビドラマ・映画の世界
鳥山 拡
早稲田大学出版部 (1993/08)
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 かつて庶民の娯楽の王様だった映画は、1950年代にテレビが一般家庭に浸透したことで観客数を激減させた。映画にとって、テレビはライバルだ。しかし映画からテレビへの流れについて調べると、ふたつはまったく別の発想で作られているメディアであることがわかる。テレビの特徴は遠隔地への同時中継なのだ。最初のテレビドラマは、劇場ならぬテレビスタジオで俳優たちが芝居を演じ、それを各地に生中継することから始まった。テレビドラマの創成期、それは映画というより舞台劇に近かったのだ。これらのテレビドラマの中から名作といわれるものは、その後舞台化されたり映画化されたりした。『マーティ』や『十二人の怒れる男』は有名だ。

 今ではほとんど消滅してしまった生ドラマから、フィルムやVTRを使った収録ドラマを経て、テレビ映画(テレフューチャー)へ。この本はそんなテレビドラマの歴史を、アメリカや日本の事例を引きながら解説している。セリアル、シリーズ、ミニシリーズ、テレフューチャーなど、アメリカの番組が日本に紹介されることも多いため、大きな流れはアメリカも日本もほぼ似通っている。1993年発行なので事例はやや古めかしいが、それでも十分参考になる本だった。

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2006.03.06

アカデミー賞―オスカーをめぐる26のエピソード

アカデミー賞―オスカーをめぐる26のエピソード
川本 三郎
中央公論社 (1990/03)
売り上げランキング: 214,769
 初版が今から16年前の1990年なのだが、ハリウッド映画がもっとも輝いていた時代、アカデミー賞がもっとも権威を持っていた時代はせいぜい1970年代ぐらいまでだと思うので、読み物としてのこの本の価値はまったく減じていない。(一部手直しをした改訂版が文庫で出ているが、Amazonのレビューを見る限りではあまり改訂が徹底していない様子なので、購入するならこの新書判で構わないと思う。)僕はこの本を、16年前の発売時に一度読んでいる。今回たまたま古書店で見つけて購入したのだが、面白さは以前読んだときのままだった。アカデミー賞の由来から、運営をめぐるごたごたやスキャンダル、受賞をめぐる悲喜こもごもの人間模様、スターや監督やハリウッド映画産業の栄枯盛衰などなど、これは「アカデミー賞」を切り口にしたハリウッド映画史であり、ハリウッド・ゴシップ史なのだ。

 1990年発行の本書は、内容的に1988年度のアカデミー賞までしか扱っていない。スピルバーグがオスカーを受賞できないことについて批判的なコメントをしている本書が出た後、スピルバーグは1993年度のアカデミー賞で『シンドラーのリスト』が作品賞と監督賞を受賞し、98年には『プライベート・ライアン』で監督賞を受賞しているのだから、ハリウッドやアカデミー賞の風向きもずいぶん変わったものだ。しかし1980年代のスピルバーグが、映画界でいかなる扱いを受けていたかという記録として、今となってはこの記事も貴重なものになっていると思う。

 アカデミー賞については公式サイトも充実しているし、第1回からの記録を写真入りで網羅したムック本のようなものがいくつか発売されているので、受賞歴を見るだけならそうしたものが役に立つ。(僕は共同通信社から出ている「保存版 アカデミー賞 アメリカ主要映画賞全記録」という本を本棚に突っ込んでいる。)しかしこの本を見ると、アカデミー賞というものがいかにハリウッドの映画人たちにとって特別な賞なのかがよくわかる。映画ファンなら一度は読んでおいていい本だと思う。

保存版 アカデミー賞 アメリカ主要映画賞全記録
Bsfan特別編集
共同通信社 (2004/04/16)
売り上げランキング: 80,462
おすすめ度の平均: 5
5 つばさからロード・オブ・ザ・リングまで★
5 映画ファンならぜひこの1冊を!

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2006.03.05

映画ライターになる方法

映画ライターになる方法
まつかわ ゆま
青弓社 (2005/08)
売り上げランキング: 64,404
 雑誌や新聞やウェブ媒体に、映画の紹介記事や解説を書くライターを「映画ライター」と呼ぶ。読んで字のごとく、これは「映画専門のフリーライター」程度の意味だ。この本は自ら「シネマアナリスト」という肩書で映画ライターをしているまつかわゆまさんが、映画ライターという仕事の実態を紹介しつつ、いかにしたら映画ライターになれるかを指南した本だ。まつかわさんは映画ライター養成講座の講師も勤めているため、その経験や実績がこの本の中には十分に盛り込まれている。試写室でのマナーから、映画会社や編集部との付き合い方、パソコンやワープロの使い方、インタビューの方法、原稿料はいくらぐらいか、締め切りはどのくらい延ばせるかなど、「こんなことまで書いちゃっていいの?」「こんなことまで書く必要があるの?」という情報の量にはびっくり。これは今後同様の本がなかなか出そうにない、唯一無二の画期的な労作と言えそうだ。

 書かれている内容では、映画ライターの仕事の実態や位置づけについてはまったく異論がない。しかし「映画評論家」や「映画批評家」と「映画ライター」がどう違うのかは、著者の中でまだ整理しきれていない部分があるように感じた。映画評論や映画批評という仕事が現在も存在し、それも含んだ形で映画ライターという職業が成立しているような書き方をしている部分もあれば、映画評論家や映画批評家と映画ライターは、仕事の種類がそもそも違うと書かれている部分もある。いったいどちらが、著者の本音なのだろうか。

 僕自身は映画ライターという仕事を、映画作品について原稿を書いて生活している人……ぐらいにゆるく定義していて、その中には当然「映画評論家」や「映画批評家」が入るだろうと考えている。僕は自分で「映画批評家」を名乗っているが、同時に「映画ライター」として批評以外の仕事もしているわけだ。(たまに映画から離れた「フリーライター」にもなる。)映画評論家と映画ライターは別概念の言葉だとは思うけれど、これは「チワワ」や「シェパード」と「犬」という言葉の違いみたいなもので、後者の中に前者が含まれているという関係になっている……というのが僕の認識。そのためこの本の中で著者がしばしば、映画評論家と映画ライターを分離して語っている部分を見ると少し気になってしまう。

 この本が「映画ライター」という言葉を使って、映画について記事を書く文筆業者の仕事の広がりや位置づけをかなり明確にしているのは大切なことだと思う。しかし「映画ライター」は、著者が定義するポジション以外にも存在し得るのではないだろうか? 映画ライターの役割のひとつが、映画会社と媒体の間を取り持つフリーのパブリシストである場合も確かにあると思うし、映画ライター専業で食べていこうとすれば、確かにそこが一番オイシイのは確かだろう。でも映画ライターという仕事は、決してそれだけではないとも思う。現に僕などはそのオイシイところと無縁に仕事をしているわけだし……。

 この本で著者が提示している「映画ライター」という仕事の領域は、普通の人が「映画評論家」や「映画批評家」という言葉から連想するであろう領域よりもずっと広い。しかしじつは著者の提示した領域のさらに外側に、まだまだ未開拓の領域があるような気がするのだ。そこはなにしろまだ「未開拓」だから、どれだけの労力でどれだけの収量が上がるのかはまったく未知数。ひょっとするとどこかで大化けするかもしれないし、いつまでも不毛の原野なのかもしれない。でも僕自身は、どちらかというとそちらに興味があるんだよね。「映画」を起点として、どこまで自分の仕事を広げていけるかが、「映画ライター」としての僕のテーマかもしれない。

 なお僕はこの本を著者本人から送っていただいたのだが、それはこの本に僕のHPの文章が一部引用されているからだ。引用された部分は本書の23ページに出てくる。どこがどう引用されたのかを知りたい人は、本を買って読んでいただきたい。

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2006.03.04

映画の誕生

the_birth_of_the_movies

 1980年に日本語版が発行された初期映画史。著者はD・J・ウェンデルで訳者は横川真顕。公論社刊で定価は2,700円というハードカバーの立派な本だ。銀座の古書店で1,000円で購入したが、中身はそれ以上だったかもしれない。映画の発明からトーキー映画の登場までをひとつの区切りとし、その間に起きた技術的発展や、産業としての拡大を描いている。著者はサイレント映画の終焉を描くことで、映画のひとつの形式が終わったことを嘆いているようだが、僕自身はサイレント映画の培った資産が、その後のトーキー映画の中にもそのまま継承されていると見るので、本書がトーキー普及とサイレント衰退で筆をおいているのはちょっと残念。しかしこれは「映画の誕生」についての本なのだから、これはこれでいい区切りだったのかもしれない。

 アメリカのAmazonでこの本を検索すると、マーケットプレイスにペーバーバックの古本が安価にまとまった数出品されている。この時代の映画についての古典的テキストになっいてるのかな……。30年前の本だが(原書の初版は1975年)、この本が扱っているのは1930年ごろまでなので、内容的には古くなりようがない。

 原題の「The Birth of the Movies」は、グリフィスの古典映画『國民の創生(The Birth of a Nation)』のもじりかもしれない。だとしたら邦題は「映畫の創生」とでも訳す方がよかったのかも。

Birth of the Movies
Birth of the Movies
posted with amazlet on 06.03.04
D J Wenden
Macdonald (1975/03/20)

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2006.02.25

論文をどう書くか―私の文章修業

論文をどう書くか―私の文章修業
佐藤 忠男
講談社 (1980/01)
 映画評論家・佐藤忠男の自伝的な「批評入門」。タイトルは「論文」となっているが、その中身は映画に始まるさまざまな事柄についての「批評」だ。理系の「論文」をいかに書くかという本はたくさん出ているし、文学作品の批評理論についての本もたくさんあるが、映画も含めた文学・文芸批評をいかに書くかという本は、じつは珍しいように思う。しかもこの著者は、理論やハウツーとはまったく別のところから、まったくの独学で自分自身の批評スタイルを作り出している。その試行錯誤の道のりが、同じようにまったくの独学で映画批評家などと名乗っている僕にはじつによくわかるのだ。書かれていることの多くに、大きく肯かされることが多い。

 著者の主張で一番共感したのは、批評というのは結論があって書いていくものではなく、先行きがわからないまま、書いているうちに自分でも思いがけない結論が導き出されていくのだと述べている部分だった。僕が自分で「映画瓦版」の記事を書いているときもまったく同じ。映画を観た直後の漠然とした感想はもちろんあるし、そこで映画評のキーワードや書き出しの一部が頭に浮かぶこともある。しかし実際に書いてみないと、それがどんな形になるのかはまったくわからない。文章を書くことで自分の考えが整理され、こそを深く掘り下げることで、映画を観ていたときやその直後にはまったく気づかなかったことが、いきなり浮かび上がってくることが多いのだ。

 映画を観た直後に最初からきちんとした感想が固まってしまい、それをただ文字にするだけならば、映画評を各作業などつまらないものだろう。それは頭の中にある文章を、文字として固定化するだけのものだからだ。映画評に限らず、作文の面白さは、自分が書いている文章と、自分自身との「対話」の面白さなのだ。何かを書くことで、自分の考えがより深まり、考えの弱点も見えてくる。そこから別方向に仮説を軌道修正すると、そこに思いがけない結論が待ち構えていることがある。書くことで、自分の知らなかった自分に出会える。書くことは楽しいことだ。

 これは映画ライターに限らず、フリーライターという仕事で食べていこうとする人にとっては、とても参考になる本だと思う。しかしこれが、一般の人にどれだけ役に立つのかは謎。普通の人にとっては、やはり「レポートの書き方」とか「理系のための論文の書き方」のような、実践的入門書の方が役立ちそうだ。

わが映画批評の五〇年―佐藤忠男評論選
佐藤 忠男
平凡社 (2003/09)
売り上げランキング: 411,781

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2006.02.15

モンタージュ探究―映画の文法入門

montage

 1981年に神田の矢口書店から出版された本。著者はドキュメンタリー映画監督でもある谷川義雄。矢口書店は神田神保町にある映画演劇関係の本を扱う老舗の古書店だが、こうした本の版元になっているとは知らなかった。しかしこの本、4,500円というとんでもない定価がついている。今の4,500円でもずいぶんな大金だが、25年前の4,500円はもっと大金だ。いったいこの本を、どこの誰が購入して、どう使ったのだろうか。それがまったくわからない。むしろこれは、自費出版に近い扱いではないのだろうか。

 中身は映画初期の歩みから始まり、名作名画のモンタージュ分析、さらには著者自身による想定シナリオと想定モンタージュからなる。シーンが引用されている映画は以下の通り。

『アメリカ消防士の生活』 エドウィン・S・ポーター
『大列車強盗』 エドウィン・S・ポーター
『國民の創生』 D.W.グリフィス
『母』 フセヴォロド・プドフキン
『ストライキ』 セルゲイ・エイゼンシュテイン
『戦艦ポチョムキン』 セルゲイ・エイゼンシュテイン
『全線―古いものと新しいもの』 セルゲイ・エイゼンシュテイン
『羅生門』 黒澤明
『夜と霧』 アラン・レネ

 モンタージュの組み立てを分析するために映画のシーンを抜き書きしていくことは、勉強としては重要かもしれないが、それを読んだところでどれだけの勉強になるのかはよくわからない。映画をビデオソフトやDVDで簡単に観ることができる時代には、映画からこうして再現された文章より、実際に映画そのものを観た方が手っとり早く、かつ正確なことがわかるのではなかろうか。特にただシーン分析に終始している『羅生門』や『夜と霧』などは、それを特に強く感じさせる。

 モンタージュ理論はロシアで発達したものだし、エイゼンシュテインの「衝突のモンタージュ」はその後の映画に強い影響を与えている。この本でもプドフキンとエイゼンシュテインの作品について述べている部分が多い。『戦艦ポチョムキン』のDVDは購入したのだが、『母』『ストライキ』『全線』なども観ておいた方がいいのかな。『アメリカ消防士の生活』も「映画史」的には観ておいた方がいい作品なんだろうけれど……。まあそんなわけで、この本を一読するとAmazonのカートがさらに古い映画のDVDで埋まっていくという仕組みになっている。

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2006.02.12

魔術師メリエス―映画の世紀を開いたわが祖父の生涯

魔術師メリエス―映画の世紀を開いたわが祖父の生涯
マドレーヌ マルテット・メリエス Madeleine Malthete Melies 古賀 太
フィルムアート社 (1994/04)
売り上げランキング: 612,182
 リュミエール兄弟と共に映画の父と讃えられ、代表作『月世界旅行』(1902)で映画史に永遠にその名を残すであろう幻想映画の開拓者、ジョルジュ・メリエスの伝記。著者のマドレーヌ・マルテット・メリエスは幼いころにメリエスと生活を共にしていたという孫娘だが、祖父の業績を一方的に礼賛するのではなく、その人間的な欠陥(女性関係は相当でたらめ)や映画作家としての限界(最後は時流に取り残されて破産)なども、愛情のこもった筆致で丁寧に描写されている。これを読むとメリエスの本職はあくまでも魔術師であり、映画も彼にとっては魔術の一種でしかなかったのではないかと思えてくる。彼がパテやゴーモンなどの大手資本と提携できなかったのも、彼の魔術師としての立場ゆえだったのではなかろうか。

 メリエスは世界で最初のインディペンデント映画作家のひとりであり、最後までインディペンデントであり続けた。彼は1896年から1912年まで映画を作っていたわけだが、その映画作家としての全盛時代はおそらく10年に満たないだろう。1897年に世界最初の本格的な映画製作スタジオを建設し、1906年ごろにはもう観客から飽きられている。メリエスの何かが変わったというより、これは観客の嗜好が幻想からリアリズムに変化して行った結果なのだろう。

 巻末には500本以上にもなるメリエスの作品リストがあるが、そのほとんどは現在失われている。しかしそのうちの100本以上が現在は発見されていて、この本の著者であるマドレーヌ・マルテット・メリエスは、世界各地でメリエス映画の上映会を行っている。その様子は「メリエス・マジック・ショー」というタイトルで記録され、映画ガイドブック「死ぬまでに観たい映画1001本」の特典DVDになっている。アメリカでは「Melies the Magician」というドキュメンタリーの特典になっているようだ。この伝記を読めば、メリエスの実際の映画を見たくなること請け合い。僕も何枚かDVDを持っているが、その作品の多くは今でも驚きと喜びに満ちている。

Melies the Magician
Melies the Magician
Facets 2002-01-15
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starReal movie magic
starA good introduction.
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2006.01.28

図解映像編集の秘訣

図解映像編集の秘訣―映画とテレビ番組、コマーシャルから学ぶ映像テクニックのすべて
日本映画・テレビ編集協会
玄光社 (1999/03)
売り上げランキング: 8,072
 映画史に出てくるような編集理論ではなく、実際に映画やテレビの現場で今現在使われている編集技法について紹介した本。実例が数多く紹介されているのでわかりやすい。これを見ると、映画や映像というのはその大部分が編集によって作られているのだということを実感する。しかしこの本のターゲットはあくまでも、実際に映画や映像を作っている人たちや、その世界を目指している人たちだろう。ごく基本的なことから書いてあるので普通の映画ファンが見ても「なるいど編集とはこうしたものか」ということはわかるのだが、映画ファンが映画編集について知りたいのなら、浦岡敬一の「映画編集とは何か」の方が面白いと思う。

 「図解映像編集の秘訣」のよさは、むしろ一般向けではないところにあるのだ。これを読んでその技法を実際に試すだけの環境を持っている人なら、それがプロであれアマチュアであれ、映画作りであれパソコンでの動画編集であれ、これはとても役に立つ手引き書だと思う。でも僕のようにそうした立場にない人も、これを読めば映画やテレビを見ながら、「この編集にはどんな意図があるのだろう?」とか、「この編集はこれでいいのだろうか?」などと批判的に映像を見ることができるようになるかもしれない。

 アクションにおけるダブりやコマ抜きといった技法は普通にテレビで映画やドラマを見ていても頻繁に使われているものだし、アクションつなぎの編集点や、あるシークエンスをを語るためにどのような素材がどんなふうに編集されているかなど、この本を読むとついつい意識しながら映像を見るようになるはずだ。それはこの本が「理論」ではなく、ひたすら「実践」について語っているからだと思う。

映画編集とは何か―浦岡敬一の技法
浦岡 敬一 山口 猛
平凡社 (1994/07)
売り上げランキング: 179,736
おすすめ度の平均: 4
4 日本の編集の第一人者・浦岡敬一氏の回顧録

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2006.01.27

ある映画作家の旅―ロバート・フラハティ物語

ある映画作家の旅―ロバート・フラハティ物語
フランシス・H. フラハティ Frances Hubbard Flaherty 小川 紳介
みすず書房 (1994/07)
売り上げランキング: 430,381
 ドキュメンタリー映画の父と呼ばれるロバート・フラハティの映画作りを、彼の同伴者であり私生活のパートナーでもあったフランシス・フラハティが綴った本。フラハティの映画作りにつきて語ってはいるが、これはフラハティの伝記ではないし、映画の解説でもない。フラハティが映画とどう向き合ったか、映画を通して被写体となった人たちとどう付き合ったかを記録したを、ごく私的な思い出語りのようなものだ。この本の中ではフラハティが映画作家として自由に撮影編集することができた4本の映画に限定して、その裏話が語られている。その4本とは、『極北の怪異(ナヌーク)』『モアナ』『アラン』『ルイジアナ物語』だ。しかしこれは、決してそれらの映画のメイキング本ではない。映画製作とフラハティの思い出についての、私的エッセイといった感じだ。

 本書を訳したのは、日本のドキュメンタリー映画界で独特の地位を築いた小川紳介。これは彼が死の直前に訳したものだという。本書の原稿がまとまる前に訳者が亡くなったため、訳注などは手つかずの部分も多い。この本全体の4分の1ほどは、映画評論家の山根貞男が書いた「見ること/見せることの度合い――ロバート・フラハティと小川紳介」という長文の解説で占められている。

極北の怪異 (極北のナヌーク)
アイ・ヴィー・シー (2003/07/25)
売り上げランキング: 27,228

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2006.01.19

映画技法のリテラシー〈1〉映像の法則

映画技法のリテラシー〈1〉映像の法則
ルイス ジアネッティ Louis Giannetti 堤 和子 堤 龍一郎 増田 珠子
フィルムアート社 (2003/11)
売り上げランキング: 29,549
 バランスの取れた映画技法と映画理論の入門書。入門書といってもかなりのボリュームがあり、この1冊で原著の前半部だけだ。(後半は「映画技法のリテラシー〈2〉物語とクリティック」として別の1冊にまとめられている。)映画学校の学生が技法と理論の概要を学んだり、大学の教養コースで映画を学んだりする際にテキストとして使うようなものだが、この手の本としては、取り上げられている映画の実例が新しいのがいい。ほとんどの映画入門が映画史に残るような古典を手本としているのに対して、この本はそうした古典にも十分目を配りつつ、1990年代以降のなるべく新しい作品を取り上げている。これは現代の学生などにとって、とっつきやすいものだろう。映画を、フォトグラフィ、ミザンセヌ、動き、編集、サウンド、演技などをキーワードに細かく分析していくことで(2巻では、ドラマ、ストーリー、脚本、イデオロギー、理論などが取り上げられる)、映画をより深く掘り下げて観察することができるようになる仕組み。

 著者は「リアリズム」と「フォルマリズム」をこの本全体を貫くキーワードとしているが、これはなかなか便利な用語。各章の中で取り上げられている個々のキーワードは、それぞれにリアリズムとフォルマリズムに二分でき、通常の映画はその中間のどこかに位置することになるわけだ。

 映画の技法や用語を、実例を通して深く学んでいけるよい本。初めて出てくる専門用語はその場で詳しく説明されるほか、巻末には用語集もあって、用語の説明がじつに簡潔にまとめられている。

映画技法のリテラシー〈2〉物語とクリティック
ルイス ジアネッティ Louis Giannetti 堤 和子 堤 龍一郎 増田 珠子
フィルムアート社 (2004/07)
売り上げランキング: 75,269

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2006.01.14

私のチャップリン

yodogawa

 1977年にPHPから出版された淀川長治のチャップリン・エッセイ。これはチャップリン論であると同時に、著者のチャップリン体験記であり、チャップリンの評伝であり、関係者のインタビュー記録であり、チャップリンにまつわるエピソードのメモであり、各作品のデータブックでもある。著者曰く、これはチャップリンの雑記帳なのだ。著者の「まえがき」が泣かせる。

 これはチャップリンの伝記ではない。いうならばチャップリンの雑記帳である。しかしこの雑記帳は私の指の一本一本をむしりとってゆくように痛くつらくはがゆいものであった。

 著者のチャップリンに対する崇拝ぶりが、ダイレクトに伝わってくるような文章。この「まえがき」だけで、この本の意図がわかろうというものだ。

 チャップリンの秘書だった高野虎市さんに会った話。彼の口添えでチャップリンの長年の共演者だったエドナ・パーヴィアンスに会った話。そしてもちろん、著者が人生の中で2度、チャップリン本人に会ったときの話。どれも行間から著者の感動や感激が伝わってくるようだ。映画監督の牛原虚彦との対談では、牛原監督がチャップリンのスタジオで研究生として働いていた時代のエピソードも知ることができる。チャップリンの人となりや、映画作家としての完全主義ぶりがうかがえる貴重な資料だ。

 この本はPHP版が絶版になった後、筑摩書房から文庫化されたのだが、これも現在は絶版品切れになっている。しかし古書店やAmazonのマーケットプレイスで探せば、すぐ手に入ると思う。

私のチャップリン
私のチャップリン
posted with amazlet on 06.01.16
淀川 長治
筑摩書房 (1995/04)
売り上げランキング: 924,191
おすすめ度の平均: 3
3 チャップリン愛に満ち溢れた本。

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2005.12.26

エイゼンシュテイン

eisenstein

 映画史に残る古典的名画『戦艦ポチョムキン』の監督、セルゲイ・ミハイロヴィッチ・エイゼンシュテインの伝記。革命前のロシアに生まれ、革命の動乱で家族が離散し、革命の中で新しい演劇運動に身を投じ、やがて映画の世界に移り、『戦艦ポチョムキン』という一世一代の作品で国際的な名声を博したエイゼンシュテイン。しかしその彼の目の前で、革命は専制に取って代わり、新しい芸術運動は音を立てて崩れ落ちていく。エイゼンシュテインが理論化したフォルマリズムは政治的非難を浴び、リアリズムこそが政治的に正しいとされる社会の中に、エイゼンシュテインの居場所はなくなっていく。これはエイゼンシュテインという一人の芸術家の視点から見た、ロシア革命史でもあるのだ。著者は映画監督の篠田正浩。

 20世紀思想家文庫の第3巻として岩波書店から発行されていたもので、現在は絶版になっているのを僕は古書店で見つけて手に入れた。この初版は1982年で、定価は1,500円。このシリーズでは他に、トーマス・マン、チョムスキー、ハイデガー、ピカソを取り上げているのだが、作家もいれば思想家も映画監督も画家もいるという、ちょっと変わったシリーズだ。しかもそれらを「思想家」としてとらえようとしているところが面白い。

 エイゼンシュテインは映画に関する論文を数多く発表して、キネマ旬報社から未完の全集も発行されていた。(現在も部分的には手に入るが大部分は品切れ状態。)エイゼンシュテインの思想を解説していく著者の筆致は、さすがに早稲田大学文学部卒という感じ。日本の古典文学や歌舞伎の伝統を踏まえつつ、エイゼンシュテインの理論を日本人向けにアレンジしているのだ。しかし僕は日本の古典の素養がないので、この置き換えでも意味がよくわからない部分が多かった。

戦艦ポチョムキン
戦艦ポチョムキン
posted with amazlet on 05.12.27
アイ・ヴィー・シー (2003/06/20)
おすすめ度の平均: 4.5
4 お勉強になる映画のtop
5 今も生命力溢れる映画

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2005.12.18

何が映画を走らせるのか?

何が映画を走らせるのか?
山田 宏一
草思社 (2005/11)

 エジソン、リュミエール、メリエスから始まる映画110年の歴史を俯瞰しつつ、その歴史のひだに分け入り、細部をクローズアップしていく映画史エッセイ。もともと月刊誌に読みきり連載していた原稿を集めているので、ひとつひとつの記事は比較的短め。映画マニアや研究者向けではなく一般向けの読み物なので、解説もじつに丁寧で読みやすい。長期の雑誌連載をまとめていることから記事に一部重複もあるのだが、それが著者の好みを反映しているようで楽しい。その時々の時事的テーマを扱っていることから、いささか古びてしまった話題もなくはないのだが、それはそれで記事を書いている時の「今」が見えるという意味で悪くはない。

 著者が映画や映画史についての直接持論を述べるというのではなく、他の資料(伝記・自伝・インタビュー・評論など)からの引用を活用しながら、テーマになった事柄を解説していくというスタイルが多い。しかしテーマは著者が選んでいるのだし、引用している資料も著者が準備しているのだから、これは引用の形を借りて、やっぱり著者なりの意見を述べているのだけれど……。著者のインタビュー集「映画とは何か」からの引用も多い。

 原稿は大まかに雑誌掲載順に掲載されているのだが、取り上げている話題によって少しずつ前後している。しかし巻末に「映画は女で作られる」という記事が掲載されているのは、かなり意図的なものだろう。スクリーンに登場する女性の「美」について語ってきたこの記事の締めくくり部分に、こんな文章がある。

 いまはもうスターの時代ではなく、女優もスタートしてよりは普通の人間として生きたいという時代だから、「美しい」などという陳腐で大げさな紋切り型の表現でスターを崇め、美女を礼賛すること自体が反動的ともみなされたねないものの、それは、とりもなおさず、情熱につきものの不合理性(狂気と言ってもいい)があられもなく映画を輝かせていた時代も終わったということなのかもしれない。

 映画史の中では消えてしまったジャンルや消えてしまった表現というのが多いのだが、じつはスター女優をスクリーンの中で現実離れした美しさに輝かせるという伝統も消えてしまったのだ。ディートリッヒやグレース・ケリーのようなスクリーンの美女が、映画に登場することは二度とないのかもしれない。

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2005.12.12

グリフィス―ハリウッドに巨大な城塞(バビロン)を築いた映像魔術師

4889912525グリフィス―ハリウッドに巨大な城塞(バビロン)を築いた映像魔術師
向後 友恵


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 1992年に発行された、「アメリカ映画の父」と呼ばれるD.W.グリフィスの簡単な伝記。「2時間で一気に読める伝記エンターテイメント」ということで、中身はひどく駆け足で、記述も資料に沿ったものというより小説に近い。登場人物の台詞は、ほとんどが著者の創作、もしくは複数の資料から自由に引用して作られた(再構成された)会話ではないだろうか。グリフィスの生い立ちから不遇な晩年と死までを大づかみに紹介している点では便利な本だが、グリフィスを人種差別主義者と一刀両断にしてしまうあたりは、テレビの伝記バラエティ番組「知ってるつもり」とさして変わらないのかもしれない。「アメリカ映画の父」としてのグリフィスには、もっと語らなければならない部分があるはずなのに……。

 グリフィスが映画史のビッグネームになっているのは、単に『国民の創生』や『イントレランス』で長い映画を作ったからではない。彼はそれまでのサイレント映画の技法を集大成し、改良し、より発展させのだ。グリフィスに至って、映画の技法は完成したと言ってもいい。クローズアップやモンタージュ、カットバック、クロスカッティング(平行モンタージュ)などの技法は、グリフィス以前にも存在した。しかしそれらの技法はまだ思いつきのように使われていて、映画話法の中でどの技法をどんな場面に使えばどんな効果を生み出すのか、誰もはっきりとは知らなかったのだ。グリフィスはそれを整理して、映画で物語を語る方法を一気に進歩させた。その結果が、『国民の創生』や『イントレランス』といった作品につながっていく。

 公民権運動が一定の成果を上げた後の価値観から、グリフィスの人種差別を非難するのは簡単だろう。確かにグリフィスは黒人を一人前の人間とは認めなかった。しかしそれは、当時のアメリカの一般的な価値観だったに違いない。当時のアメリカで黒人がどのように扱われたのかをまったく無視し、『国民の創生』の差別的な描写だけを非難するのは、グリフィスの評伝としてはバランスを欠いたものだ。グリフィスは1910年代のアメリカという地理的・社会的な制約の中で映画を作っていたわけで、彼がいかに偉大な映画監督だったとしても、そうした物理的制約から自由になることはできない。アメリカ映画はグリフィスの後も何十年にも渡って、先住民であるインディアンを西部劇の悪役にしてきたではないか。黒人が一般映画で主役になるのは、シドニー・ポワティエの登場以降のことではないか。そうしたことを無視してグリフィスを非難するのはアンフェアだろう。

 もちろんグリフィスの生涯を描くには『国民の創生』について語らなければならないし、この映画について語る際は、その人種差別的な描写について批判的なコメントをしなければならないのは当然だ。しかしこの本の中では、グリフィスが映画史の中で果たした「功績」についてはほとんど言及しないまま、彼の「差別主義者」という側面には批判の追求をゆるめない。グリフィスのネガティブな面を描くなら、それ以上に映画技術の発展に寄与した、彼のポジティブな面にもしっかりと光を当ててほしい。

 これが映画史の本ではなく一般向けの本だから、著者は「映画技法」などという専門的な部分をはしょって、人種差別というわかりやすい部分をクローズアップしたのだろうか? 著者のあとがきを読むと、必ずしもそうではなさそうだ。著者曰く『人権について、あらゆる差別について、改めて考えるために、今、D・W・グリフィスを語ることは、価値ある試みのひとつでしょう』とのこと。この著者は十分に自覚した上で、「人種差別主義者グリフィス」について書いている。人権運動家ならそれも結構。でもこれは「映画の歴史を語る」ことではないと思う。

 本書の巻末に、川本三郎が「映画の父と帽子」とうい短文を寄せている。そこにはグリフィスの映画史における功績や、彼の映画人としての誇りが簡潔に紹介されている。いささか映画『グッドモーニング・バビロン』に頼っている部分はあるものの、グリフィスをポジティブに評価したこの短文の方が、映画史におけるグリフィスをより正確に写し取っているように感じる。

B0000TXOSQ國民の創生
リリアン・ギッシュ D・W・グリフィス


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2005.12.11

闇のなかの夢想―映画学講義

yaminonaka

 1982年12月発行。「死霊(しれい)」で知られる作家・評論家の埴谷雄高(1909~97)と、小説家の小川国夫(1927~)による映画対談。ほとんどが映画史初期のサイレント映画についての話題ということもあり、年長の埴谷雄高が語り、小川国夫が聞き役という形になっている。埴谷雄高の書いたあとがきによれば、この対談は本書に取り上げられたよりずっと長く続き、後半は小川国夫が語り手になる「戦後編」になるのだという。しかし戦後の映画については他にもたくさん本が出ているから、むしろこの対談の面白さはこの戦前・サイレント映画編にあるのではないだろうか。

 僕は埴谷雄高の読者ではないし、埴谷雄高が映画評論をしていたこともまったく知らなかった。しかしリアルタイムで古い映画を観ている体験と、その記憶力の確かさには舌を巻く。ところどころに記憶の不確かな部分や勘違いが見られるが、それは小さな欠点だろう。(勘違いとしては、例えば『丹下左膳』と『丹下左膳余話・百万両の壺』の取り違えや、ドライエルの『吸血鬼』とロン・チェイニーの怪奇映画の混同など。)

 映画の発明からサイレント映画の発達、各国の映画事情などを時代を追って語っているので、これは映画史の講義になっている。大正から昭和にかけての映画を個人の体験で語っているので、一般の映画史にはまったく登場しないような映画や映画人がところどころに登場するのが面白い。映画史を巡る雑談風の対談なので、映画について掘り下げて語っている部分はあまりないのだが、文学と映画の比較はこの顔ぶれなればこその話題かもしれないし、古典的な芝居の演出と映画演出の違いという話も面白かった。

4309607624埴谷雄高作品集 12 映画論集 (12)
埴谷 雄高


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2005.12.05

ル・シネマ―映画の歴史と理論

4788508265ル・シネマ―映画の歴史と理論
ユセフ イシャグプール Youssef Ishaghpour 三好 信子


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 映画史と映画理論の本だが、それほどのボリュームはない。初心者向けのガイドブック程度のものだろう。しかしこれが、読むのにひどく苦労させられる本だった。訳がよくないのかもしれないが、それより内容が問題だ。これは映画史や映画理論の概説書というより、映画史や映画理論についてのエッセイと呼んだ方がいいのではないだろうか。映画を「現実のイマージュ」「イマージュの現実」と定義し、リュミエールの「眺め」とメリエスの「魔術」の混成物として分析していく語り口は大胆で力強い。しかし語られている内容のほとんどが著者の思索で占められているため、具体性のまるでない観念的な言葉の羅列になっている。

 もちろんここで具体的に何かを語り始めれば、それだけでこの本は何倍にも膨れ上がってしまうだろう。この本は著者の思索をエッセイ風にまとめているがゆえに、このボリュームで済んでいるのかもしれない。映画にまつわることばのひとつひとつは、アフォリズムのような鋭さを感じさせる。読んでいてすごいとうならせる部分もある。しかしまったくチンプンカンなところも半分ぐらいあって、全体としてはまるで歯が立たなかったという印象が残る。

 映画史と映画理論は著者の中で強く結びつき、互いに響きあっている。この本は一度読むだけでなく、何度も読み返すことで、著者の主張はよりくっきりと浮かび上がってくるのかもしれない。いずれ再読したいが、それまでは本棚の肥やしだ。

4588005073エリアス・カネッティ―変身と同一
ユセフ イシャグプール Youssef Ishaghpour 川俣 晃自


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2005.11.28

ジョージ・ルーカス

ジョージ・ルーカス
ジョージ・ルーカス
posted with amazlet on 05.11.29
ジョン バクスター John Baxter 奥田 祐士
ソニーマガジンズ (1999/09)

 ようやく読み終えたジョージ・ルーカスの最新伝記。この本では『スター・ウォーズ エピソードⅠ/ファントム・メナス』公開と、『インディ・ジョーンズ4』の計画、ルーカスによるプレシディオの土地買収と再開発計画までが扱われている。『レターマン・デジタル・アーツ・センター 』(LDAC)と呼ばれるプレシディオの新しい施設は、今年(2005年)6月にオープンしたばかり。この施設で新しい映画作りが本格化すれば、その際はまた新しいジョージ・ルーカス伝が書かれるに違いない。それまでは、とりあえずこの本が最新のルーカス伝になると思う。

 既に2冊のルーカス伝を読んだ上でのこの本なので、新しい話題はほとんどなかった。それでもある本には書かれていることがこの本には書かれていなかったり、この本にしか書かれていないこともあるなど、やはり何冊か読むとそれぞれ対象への迫り方に温度差がある。この本は先行するルーカス伝のどれよりも辛辣で、批評家やジャーナリスト、ルーカスとかつて一緒に仕事をした人たちからの手厳しい批判の声なども、数多く盛り込まれている。しかしそれらは決して暴露趣味ではなく、バランスのとれた記述という印象だ。

 こうしたルーカス伝を読んだら、『スター・ウォーズ』の旧三部作が無性に観たくなった。というより、旧三部作のDVD-BOXに特典として収録されているドキュメンタリー「夢の帝国 スター・ウォーズ・トリロジーの歴史」が見たくなったのだ。で、買ってしまいました!

 「夢の帝国」にはルーカス伝の主要人物で存命中の人たちがほとんど登場して、ルーカスや『スター・ウォーズ』について語っている。ジョン・ダイクストラやゲイリー・カーツなど、ルーカスと袂を分かつように離れて行った人たちも勢ぞろいしているのには驚いた。キャリー・フィッシャーの毒舌ぶりはルーカス伝の中にもたびたび引用されているが、それはこのドキュメンタリーの中でも健在。マーク・ハミルなど主要キャストがすっかり年老いているのに対して、アラン・ラッドJr.がほとんど変わっていないのにも驚いた。(ルーカスも基本的に変わっていないのだが、だいぶ太って貫祿が付いた。)

 『スター・ウォーズ』のDVDにオマケで付いてくるドキュメンタリーだから、「夢の帝国」はルーカス・フィルム公認の『スター・ウォーズ』裏話であり、伝記「ジョージ・ルーカス」に比べると表現は多少マイルドにはなっている。ルーカスの人間嫌いや孤独癖、受けた恨みを決して忘れない執念深さなど、いわば彼のダークサイドについてはほとんど語られていない。しかしそうした面も、ユーモア混じりにちょっとずつ触れている部分があるので、「ジョージ・ルーカス」を読んだ上でこのドキュメンタリーを見れば、面白さは3倍にも5倍にもなる。

スター・ウォーズ トリロジー DVD-BOX
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2005/06/25)
売り上げランキング: 5,226
おすすめ度の平均: 4.49
5 スター・ウォーズ トリロジー DVD-BOX
5 スター・ウォーズ トリロジー
5 スター・ウォーズ トリロジー DVD-BOX DVD

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2005.11.13

映画映像史―ムーヴィング・イメージの軌跡

4093874859映画映像史―ムーヴィング・イメージの軌跡
出口 丈人


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 映画の誕生から現代までを、ほぼ10年ごとに区分しながら綴る映画史。映画技法の発達や作品タイトルを列記するだけでなく、その時代の観客にとって新しい技術や映像がどんな意味を持ったのかや、テレビやビデオといった他の映像メディアの登場と映画の関わりなどにも目を配っている。映画ビジネスの形が大きく変化していく1980年代以降の映画についても、作品と作家を中心に映画を語っていくという点でかなり保守的ではあるが、全体に読みやすく、解説も的確なものという印象を受けた。

 ただし映画を「映画史」というくくりで語れるのは、やはりせいぜいが1960年代までなのだという事実を再認識させられる本でもある。1970年代以降は作家名や作品タイトルの数ばかりが膨張して、「映画史」の上での新しい動きはほとんど何も出てこなくなってしまう。70年代以降の、特にハリウッド映画については、「映画産業」や「映画ビジネス」という視点から、もう少し記述すべき点があるようにも思うけれど……。

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2005.11.10

ワールド・シネマ・ヒストリー

4771015244ワールド・シネマ・ヒストリー
Andrea Gronemeyer アンドレア グローネマイヤー 犬伏 雅一


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 映画の創成期から現代までの歴史的流れを、平明に綴った「映画史」の本。ハリウッド映画やフランス映画、日本映画など、特定の国の映画史についてなら新書サイズの本がいくつも出ているのだが、世界映画史について、しかも現代までを網羅したものは、ありそうでなかなかないのだ。そうした点で、これは便利な本だと思う。

 各章ごとに、それぞれの時代の映画以外の主な出来事が年表式にまとめられていたり、映画史や映画技術にまつわるキーワードが簡単な用語集のようにまとめられているし、映画音楽、テレビ、製作などについては、映画史の流れとは別にコラム形式で歴史的な流れを紹介しているのはわかりやすい。

 ただし難点もある。それは主として翻訳とブックデザインという、原著者にはまったく責任のない領域での問題だ。映画タイトルや人名が、日本で普通に使われているそれと違っているのが、まず不親切だ。知った上でやっているなら余計なお世話だし、知らずにやっているなら編集者の校閲ミスだろう。「ローランド・エメリッヒ」を、「ローラント・エンマーリッヒ」などと書かれてもピンと来ないし、『いつか晴れた日に』を『分別と感受性』などと書かれても困るのだ。本来の発音を優先するならそれでもいいし、原題の直訳で通すならそれでもいい。しかしこの本の場合、態度が徹底していなくて表記がじつに気まぐれだ。

 目次では明確に章の分割がなされているのだが、本文ではそれが不鮮明なのはデザインの悪さだろう。このため映画史の大きな“まとまり”がつかみにくく、全体にノッペリと平板な印象の映画史になってしまっているのは残念だ。個々の映画作品や作家の評価はさておき、全体の記述はそれほど大きな偏りのないもの。それだけに訳文やデザインといった部分で、批判せざるを得ないのは残念。

 原著にない90年代後半以降の世界映画事情を、本文の続きとして訳者が補っているのは余計なお世話という印象が強い。これは「訳者あとがき」のような部分で、著者の記述と明確に分けて記述すべき内容だったように思う。

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2005.11.07

ハリウッド 巨大メディアの世界戦略

4532148669ハリウッド 巨大メディアの世界戦略
滝山 晋


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 「垂直統合」をキーワードにしてメディア・コングロマリット化していくハリウッドの映画映像産業の姿を、2000年時点での最新事例を交えながら分析報告した本。この本が出た当時と今とでは、メディア産業をとりまく情勢がずいぶん違ってしまっている部分もある。例えばタイム・ワーナーを事実上買収したAOLは、その後のネット・バブル抱懐で大きくつまずき、今ではタイム・ワーナーから切り離して売却するという話が取り沙汰されている。セルDVDの市場が大きくなり、レンタルビデオが圧迫されるという事態も起きている。しかし全体の「流れ」そのものは、この本の指摘した通りに推移しているはずだ。

 しかしこの本を読めば読むほど、5年たって業界がどうなっているのか、この本の続編にあたる報告を読みたいという気持ちは強くなる。本書の最後は音楽配信ビジネスについて書かれているが、この分野で現在はアップルが一人勝ち状態になっている。そのアップルを経営するスティーブ・ジョブスは、ディズニーとピクサーの提携を解消して独自路線に進むという話があるし、ハリウッドと距離をおく大物プロデューサーで監督のジョージ・ルーカスが、『スター・ウォーズ』の新三部作を終えた後、今後のコンテンツ産業をどんな方向に導こうとしているのかにも興味がある。

 ただしそうした話は、もう「映画」とか「映像産業」とか「ハリウッド」という括りでは語れないのかもしれない。すべては「コンテンツ・ビジネス」という大海に飲み込まれていくのだ。

4502379603コンテンツビジネス・ハンドブック
中央青山監査法人 中央青山=


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2005.11.02

ルーカス帝国の興亡―『スター・ウォーズ』知られざる真実

4594024955ルーカス帝国の興亡―『スター・ウォーズ』知られざる真実
ゲリー ジェンキンズ Garry Jenkins 野田 昌宏


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 ジョージ・ルーカスの評伝「スカイウォーキング」は、彼が『ジェダイの復讐』に取りかかるまでの物語だったが、本書は『スター・ウォーズ』の最初の三部作を撮り終えて半ば引退状態にあったルーカスが、アナキン・スカイウォーカーを主人公にした新しい三部作で再び監督復帰を発表するところまでを描いている。「スカイウォーキング」で鴛鴦夫婦ぶりを見せていたルーカス夫妻は離婚し、映画青年の理想を求めてハリウッドを離れたはずのルーカスは、新しい自分の城にこもって世捨て人のような生活をしている。衝撃的な暴露本というわけではないが、ルーカスという人間のいささか偏屈なパーソナリティにまで踏み込んだ本になっている。

 「スカイウォーキング」に比べて特別目新しい内容があるわけではないのだが、『スター・ウォーズ』の最初の2作を製作したゲイリー・カーツに対する評価は、この映画の方がバランスが取れているように思う。また完成した『ジェダイの復讐』の内容的な評価や関係者のコメントも、ルーカスを批判する手厳しいものになっている。これに比べると、「スカイウォーキング」はいかにもルーカス礼賛なのだ。まあ当時は映画界全体が、そういう雰囲気だったのかもしれないけどね。

 ルーカス伝はこの他にもう一冊、ジョン・バクスターの「ジョージ・ルーカス」を購入済み。あまり立て続けにルーカスばかりもナニなので、間に何冊か別の本をはさんだ後に読んでみようと思う。

ジョージ・ルーカス
4789713725ジョン バクスター John Baxter 奥田 祐士

ソニーマガジンズ 1999-09
売り上げランキング : 452,706


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2005.10.27

スカイウォーキング 完全版―ジョージ・ルーカス伝

4789711897スカイウォーキング 完全版―ジョージ・ルーカス伝
デール ポロック Dale Pollock 高貴 準三


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 デール・ポロックによるジョージ・ルーカス伝記。原著が1983年なので、情報としてはかなり古くなっている。また初版のせいか、誤字脱字誤植などがかなり多くて、読んでいて首をひねる部分も多かった。(強調のための傍点が、すべて文字化けしていたりする。)『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』までのルーカスについては、それなりに情報が網羅されていると思う。記述はかなりルーカス・サイドに寄っているのだが、これはこれでルーカスの「神話」を作った本として、歴史的な価値があるかもしれない。

 この本は89年に「ジョージ・ルーカス―ハリウッドを超えた映像帝国若き成功」というタイトルで邦訳が出版されたあと、93年にも「スカイウォーキング―ジョージ・ルーカスの栄光と軌跡 エンターテイメントバイブル」というタイトルで再度翻訳出版され、この「スカイウォーキング 完全版―ジョージ・ルーカス伝」が3度目の出版。情報はその後まったくアップデートされていないので、おそらくこの本が改めて邦訳されることはないと思う。(現に『スター・ウォーズ』の新3部作が発表されても、新訳は出なかった。)

 僕は同じ本だと思わずに「ジョージ・ルーカス―ハリウッドを超えた映像帝国若き成功」も買ってしまい、同じ内容なのに驚いた。まあよく確認しなかったのが悪いんだけど、出版社が違い、タイトルが違い、発行年が違っていれば、普通は違う本だと思うよな~。

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2005.10.17

ハリウッドとマッカーシズム

4480855610ハリウッドとマッカーシズム
陸井 三郎


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 ハリウッドの赤狩りの中で、映画人や作家たちはいかに生きたか。ハリウッドへの聴聞開始から、初期の反発、有名なハリウッド・テンの告発、そして映画界の屈伏(ウォルドーフ・アストリア宣言)までを時系列に描いたあと、赤狩りと格闘した何人かの人々にスポットを当てていく。取り上げられているのは、ハリウッド・テンのひとりだった脚本家アルヴァ・ベッシー、音楽家のハンス・アイスラーとその姉兄、劇作家のベルトルト・ブレヒト、若い無名の脚本家ベス・タッフェル、探偵小説の巨匠ダシール・ハメット、劇作家のリリアン・ヘルマン、裏切り者エリア・カザン、劇作家アーサー・ミラーだ。

 誰もが知っているダルトン・トランボなどをあえて外し、ハリウッド・テンの中でも無名のベッシーについてページを割いているのが面白い。そしてこのエピソードが感動的なのだ。ハリウッド・テンと共に委員会で喚問を受けたブレヒトが、とんちんかんな問答で委員会をすっかり煙に巻いてしまった話は有名。しかしそれがどのような問答だったのかを、僕はこの本で初めて知った。赤狩りと心中するような晩年を送った、ダシール・ハメットのエピソードは壮絶。その「恋人」と言われたリリアン・ヘルマンが、聴聞会で見せた態度やハメットの死後にしたことも書かれているが、これは彼女の自伝や自伝をもとにした映画『ジュリア』でリリアン・ヘルマンを知っていた人にはショッキングな内容かもしれない。これはひどい話だ!

 まったく無名の女性脚本家ベス・タッフェルのエピソードがオマケのように挿入されているのは、赤狩りによって被害を受けたのは有名人だけではなく、彼らの周囲にいた才能豊かな若者たちも多くが犠牲になったという、赤狩りの広がりの深刻さを示すエピソードだろう。『こうして、多くの高名な先輩たちに愛された一人の若い才能ゆたかな作家が、戦後アメリカ映画史にもほとんどその名の登場しないような形で抹殺されたのである』という著者の言葉には、同じようにして消えて行った多くの無名人に対する思いがあふれている。(トランボを外してベッシーにひとつの章を割いたのも、そんな著者の思いゆえだろうか。)

 この本は1990年初版なのだが、登場する固有名詞などに定訳を用いず、独自に訳している部分があるのは少し気になった。ラリー・パークスが出演したのは確かにアル・ジョルスンの伝記映画だが、そのタイトルは『アル・ジョルスン物語』ではなく『ジョルスン物語』(50年には日本公開)が正しい。ブレヒトが脚本に参加したラングの映画タイトル(Hangmen Also Die)を直訳すれば確かに『首吊り役人も死ぬ』だけれど、これは『死刑執行人もまた死す』というタイトルで87年に日本公開されている。著者は歴史家であって映画評論家ではないわけだけれど、こういうのは編集者がちょっとチェックしておいてほしいのだ。

 ついでに言えば、ブレヒトとワイルのコンビ作が「三文オペラ」だけだったような書き方も気になる。ブレヒト・ワイルには「マハゴニー市の興亡」もあれば「七つの大罪」もあるのでね……。著者がブレヒトと組んだもう一人の音楽家アイスラーを大きく評価しているのはわかるけれど、ブレヒトといえばワイルでしょ!と、ワイル好きの僕は不満に思うのである。

0252071417The Inquisition in Hollywood: Politics in the Film Community, 1930-1960
Larry Ceplair Steven Englund


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2005.10.16

ハリウッドの反逆

4877140107ハリウッドの反逆
エリック・ベントリー 小池 美佐子


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 アメリカの劇作家で評論家のエリック・ベントリーが、1947年から始まったハリウッドの赤狩り取材した戯曲の日本語訳。登場人物たちの台詞は聴聞会の記録から引用されており、当時この騒ぎに巻き込まれた犠牲者たちがどのように振る舞ったかを知る資料としても興味深いものだ。しかし著者は記録から適時証言を要約しているので、これをそのまま資料に使うわけにはいかない。それは同じ著者がまとめた「反逆の30年」という赤狩り資料集にも言えることだ。

 僕は『ジョルスン物語』のラリー・パークスがいかにして赤狩りの犠牲になったのか知りたかったので、この戯曲の中で彼の喚問の様子がかなり詳細に再現されていたのは有り難かった。そしてやはりパークスは、赤狩りの犠牲者としか言えない気の毒な人だと感じるのだ。委員会の脅迫まがいの圧力に抗いながら、最後にはついに屈伏してしまったパークスの孤独と苦悩を考えると気の毒でならない。

 ハリウッド・テンには「第一修正条項委員会」の後押しがあったが、ハリウッド・テンの追放以降、映画業界からの共産主義者追放を決めた「ウォルドーフ・アストリア宣言」のあとには、パークスを支援する人は誰もいなかった。生まれたばかりの小さな子ども二人を抱えたパークスに、それでも証言を拒否して刑務所に行くべきだったと誰が言えるのか。いや、それでも彼は証言を拒否すべきだったのかもしれない。でもそれは、赤狩りが結局は何も生み出さず、10数年後には証言拒否者たちの名誉も回復されたという、歴史の結末を知っているから言えることだろう。たったひとりでその状況に放り込まれたとき、はたしてどれだけの人がパークスほどに頑張れるものだろうか。

 パークスが気の毒なのは、彼がハリウッドで最初の「裏切り者」となった後も、結局彼の名がブラックリストから消えなかったことだ。2年後に彼は委員会に向けて、さらなる忠誠を誓う手紙を書く羽目になった。しかしそれでも、結局パークスは映画界に戻れなかった。

 この本で取り上げられている証言の中では、ライオネル・スタンダーとポール・ロブスンのものが傑出した面白さだった。饒舌な口調で時として委員の制止発言さえ無視し、皮肉でトゲのある言葉を語り続けるスタンダーの姿は痛快そのもの。逆にポール・ロブスンは、しっかりした口調で相手の質問にことごとく「修正第五条(黙秘権)」を行使していく。これもまた爽快だ。

 ただしロブスンは映画にも出ているとはいえ、映画俳優というよりも歌手だろう。「ハリウッドの反逆」という日本語タイトルからは、ちょっとはみ出てしまう人物だと思う。もっともこれは日本語タイトルの問題であって、著者には何の責任もないのだけれど……。

1560253681Thirty Years of Treason: Excerpts from Hearings Before the House Committee on Un-American Activities, 1938-1968
Eric Bentley United States Congress House Committee on Un-American Activities Frank Rich


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2005.10.12

ハリウッド―良心の勝利

440602090Xハリウッド―良心の勝利
山田 和夫


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 1940年代から50年代に猛威を振るったハリウッドの赤狩りについて解説した本。赤狩りの背景となった戦後アメリカの社会情勢から、赤狩りのはじまり、ハリウッドへの赤狩りの波及、第1回聴聞会とハリウッド・テンの抵抗、映画人たちの抵抗と挫折、第2回聴聞会での裏切り続出、その後の赤狩りの影響などを簡潔に記している。もともと講演会の記録を本にしたものなので、言葉づかいも専門的なところはなくてわかりやすく、この問題について初めて接する人にはとっつきやすい本だと思う。1時間もあれば全部読める、簡単なガイドブックのようなものだ。

 著者はハリウッド・テンのような筋金入りの抵抗者や、その後も弾圧に屈することなく抵抗を続けた人たちを殉教者か英雄のように描いている。その筆頭はダルトン・トランボであり、匿名の仕事がアカデミー賞を受賞したマイキル・ウィルスンのような人たちだ。こうした人たちにスポットライトを当てて赤狩りを語れば、「正義は最後に必ず勝利する」というわかりやすいお話になる。この本のタイトルも、そうした著者の趣旨に合致したものだろう。

 しかし赤狩りでブラックリストに載せられハリウッドから追放された人たちのほとんどは、結局映画界に戻れないまま不本意な人生を送ったのではないだろうか。こうした不運な犠牲者たちについて考えると、赤狩りの最後が「良心の勝利」に終わったとはとても思えない。まあこのボリュームの本では、そこまで手が回らなかったということかもしれないけれど……。

 僕はむしろ、赤狩りという巨大な権力の暴力の前に膝を屈してしまった人たちについて、もっと知りたいと思う。赤狩りでは証言を拒んで職を失った人も多いが、保身のために委員会に協力的な態度を取り、その結果「裏切り者」としてハリウッドから追放されてしまった人たちもいる。エリア・カザンは大物だから仲間を裏切ってもスタジオから仕事がもらえたのであって、中途半端なポジションにいる人たちは、証言してもしなくてもブラックリストに掲載されただけで身の破滅だったのだけれど……。そうした人たちにとっては、良心の勝利もへったくれもあるまいに。

真実の瞬間(とき)
B00008ILL3ロバート・デ・ニーロ アネット・ベニング マーチン・スコセッシ

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star人間性を貫きとおすハリウッド映画監督!
starタイトルで大外し

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2005.10.08

ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200

4167256134ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200
小林 信彦


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 週刊文春の依頼で小林信彦が選んだ洋画ベスト100と邦画ベスト100に、70年代に書かれた映画エッセイや、単行本時の書き下ろしエッセイを加えた本。ベスト100は個人選出にしてはかなりバランスのとれたものになっているのだが、それでも時々著者ならではの偏りが出てくるのが面白い。しかしそれより面白く読めたのは、後半の映画エッセイだ。特にプレスリーについての記事が面白かった。同時代を経験した人でないと、なかなかこういうことは書けないだろう。

 僕は著者の小説はほとんど読まないのだが、「日本の喜劇人」や「世界の喜劇人」(これは絶版で古本にすごい値段がついている。重版希望)など、芸能関係の本はよく読んだ。古い映画ファンのおしゃべりや蘊蓄を聞いているようで、どれもすごく楽しい本だ。何よりも、対象に対する愛情が感じられるのがいい。

淀川長治映画ベスト1000
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star「1000」という文字で売りたかったのは分かるが・・
star愛のある批評です
starおなじみの・・・

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2005.09.30

映画プロデューサーの基礎知識―映画ビジネスの入り口から出口まで

4873766206映画プロデューサーの基礎知識―映画ビジネスの入り口から出口まで
キネマ旬報映画総合研究所


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 僕が映画を本格的に観始めたのは今から15年ほど前で、その頃は映画業界の「洋高邦低」が決定的だった。日本映画は観客から完全にそっぽを向かれて、「映画好き」とか「映画鑑賞が趣味」と公言する人たちですら、日本映画など観る前から詰まらないと決めつけていたのだ。(日本映画の興行ベストテンで半数がアニメだった時代のことだ。)僕が高校生のころは音楽業界がやはり同じような状態だった。音楽ファンは洋楽ばかり聴いて、邦楽は一部のアイドルとか歌謡曲程度の印象しかなかった。しかしその後、バンドブームが起きてJ-POPが台頭してくる。僕が「映画業界にも同じようなことが起きないものか……」と思っていたのは、ほんの10年前のこと。しかし当時はまだ誰も、邦画が再び脚光を浴びるなんて思ってもいなかった。

 しかしその後、日本映画は奇跡のように息を吹き返した。洋画に負けない興行成績を収める日本の実写映画も続出し、ミニチェーンで大きな成績を収める邦画も現れている。こうした日本映画界の変化を、リアルタイムに記録したのがこの「映画プロデューサーの基礎知識―映画ビジネスの入り口から出口まで」という本なのだ。僕が映画業界本を読み始めたころに比べて、大きく変化している部分がたくさんあり、非常に面白く読むことができた。

 特に大きく変化しているのは、映画の製作資金をいかに調達するかという部分。日本でも映画製作に銀行がお金を出したり、ファンドを作って出資者を募るという状況が生まれてきたのだ。最近よく見かける製作委員会方式のメリットやデメリットも書かれているし、事例として2004年や2005年の最新映画が引用されているのもいい。

 欧米の映画学校ではプロデューサー志望の学生が9割で、残りが監督や脚本、技術職などを志望しているという。日本とはプロデューサーに対する注目度がまったく違うのだ。でも今後は日本でも、少しずつプロデューサー職に対する注目が集まるのではないだろうか。若手のスター・プロデューサーが何人か出ると、日本映画界も大きく変わっていくと思うんだけどね……。

映画プロデューサーが語るヒットの哲学
4822243591原 正人

日経BP社 2004-04-01
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star映画業界志望者におすすめ
starお世話になった日本ヘラルドの歴史書
star「商売としての映画」に注ぐ、溢れんばかりの愛情。

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2005.09.13

バトル・オブ・エクソシスト──悪夢の25年間

4309267998バトル・オブ・エクソシスト──悪夢の25年間
マーク・カーモード 上岡 雅史


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 タイトルは仰々しいのだが、中身は映画『エクソシスト』を紹介したガイドブック。映画の内容に沿って裏話を紹介していく部分がほとんどだが、知っていることも多くてそれほどの刺激はなかった。もっともこれは、僕が本書でも紹介しているBBC製作のドキュメンタリーを見ているからだろう。

 『エクソシスト』のバージョン違いにおいて最大の謎は、さんざん原作者ブラッティの意向を無視してその脚本をケチョンケチョンに批判していたフリードキンが、どうした風の吹き回しで削除シーンを復元したロングバージョンを作ったかだ。しかしこの本は具体的にロングバージョンを作る苦労話には触れるが、なぜフリードキンが心変わりしたかという核心には触れられないままだ。これは今後も、映画『エクソシスト』をめぐる最大の謎として残ることだろう。

 これまで知らなかった話もいくつかあるのだが、その中のひとつは、原作者のウィリアム・ピーター・ブラッティにとって『エクソシスト』と『トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン』『エクソシスト3』が信仰をテーマにした三部作になっているという話。『エクソシスト』のオリジナルタイトルは『レギオン』だったのだが、映画会社の意向でタイトルがヒット映画の3作目になってしまったという話……。

 う~む、これは『トゥインクル・トゥィンクル・キラー・カーン』と『エクソシスト3』も観なくては!

B000B63G54トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン
ステイシー・キーチ ウィリアム・ピーター・ブラッティ スコット・ウィルソン


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2005.08.30

にんげんのおへそ

4167587068にんげんのおへそ
高峰 秀子


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 「にんげん住所録」と一緒に買った高峰秀子のエッセイ集。長短さまざまなエッセイが収録されているが、養母との確執を描いた「ひとこと多い」はかなり強烈な印象。映画の中で見せるデコちゃんのふて腐れた表情の影には、こんな壮絶な私生活があったのだな~、としみじみ。エッセイストとしての鋭利な感覚も、養母との暮らしの中で否応なしに研ぎ澄まされたものなのかもしれない。

 ただ今回読んでいて気がついたのは、このエッセイは必ずしも事実をそのままに書いたわけではなく、かなり作為が入っているということ。例えば魚屋さんで体の不自由な息子を車椅子にのせて歩く母子に会う「午前十時三十分」というエッセイは、ほとんど小説のような印象を受ける。仮にこれが実話だとしても、構成などはかなり手を入れて劇的な印象を強めているはず。

 僕自身は小学生の作文にせよ、読書感想文にせよ、「他人にわからない程度のウソなら書いても構わない」と考えているので、こうした高峰秀子のエッセイ手法には関心してしまう。日記帳じゃあるまいし、他人に読ませる文章はまず面白いことが一番。そのためなら、物ごとの本質を歪めない程度の脚色や演出、作為は許されると思っている。

 映画人にまつわる話は今回の本では控えめ。それでも映画撮影所のスタッフたちについて書かれた愛情深いエッセイ「おへそ」や、名作『馬』の舞台裏について書かれた「馬よ」が印象に残る。次は「にんげん蚤の市」も読もうかな。

にんげん蚤の市
4167587041高峰 秀子

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star惚れたが悪いか

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2005.08.29

にんげん住所録

4167587106にんげん住所録
高峰 秀子


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 女優・高峰秀子のエッセイ集。それまでに出会った数多くの人たちの死にまつわる話が多いのだが、その筆致は軽やかで、読んでいて爽やかな感動がある。特に映画関係者にまつわるエピソードは興味深い。小津安二郎について書かれた「人間スフィンクス」、黒澤明についての思い出を綴った「クロさんのこと」、木下恵介について書いた「私だけの弔辞」は、女優高峰秀子から見た監督たちの素顔がじつに生き生きと書かれていて面白かった。

 「クロさんのこと」は彼女の自伝「わたしの渡世日記」とあわせ読むといい。劇的な駆け落ち未遂事件(?)から何十年もたって、ふたりが言葉を交わす場面がちょっと寂しげでいい。

わたしの渡世日記〈上〉
4167587025高峰 秀子

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おすすめ平均star
starなんでこんな人が可能だったのかなー?
star20代の私でも。
starおもしろかった

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2005.08.10

ドキュメンタリーとは何か―テレビ・ディレクターの仕事

4893091026ドキュメンタリーとは何か―テレビ・ディレクターの仕事
河村 雅隆


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 NHKでドキュメンタリー番組のプロデューサーやディレクターをしている著者による、体験的なテレビ・ドキュメンタリー論。これまでにもテレビ・ドキュメンタリーの本は何冊か読んできたが、その中では一番優等生的というか、保守的というか……。なんだか刺激の少ない本だった。一通りいろんなことは書いてあるのだが、あと一歩が二歩、踏み込みが浅いような気がする。

 この本で面白かったのは、テレビにおける報道とドキュメンタリーの仕事の違いや、記者(放送記者)とディレクターの違いといった視点があったこと。これをもう少し深く掘り下げていくと、もっと読みごたえのあるドキュメンタリー論になったようにも思う。

 ドキュメンタリーとは直接関係ないが、名アナウンサーと組むとアナウンス原稿を書く力が付かないという話は、多少なりともテレビの仕事に関わったことのある僕はなるほどと思った部分だ。僕はプロのナレーターと一緒に仕事をしたことが何度かあるのだが、彼らはどんなに下手な原稿でもそれなりに流暢に読めてしまう。

 海外のドキュメンタリー番組制作は、ほとんどが国際共同制作だという話も興味深かった。こうして話を知ってしまえば「そうだよな。それが当然だよな」と思うのだが、それまでは考えもしなかったことだ。こういうのを、目からうろこが落ちるというのかも。

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2005.06.15

ドキュメンタリーは嘘をつく

4794213891ドキュメンタリーは嘘をつく
森 達也


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 『A』『A2』の森達也監督が、テレビと映画のドキュメンタリーについて書いた本。もともと草思社のPR誌「草思」に連載されていた記事に手を入れたものだが、最初から1冊の本にする想定で書かれていたそうで、ありがちな「雑誌の雑文の寄せ集め」にはなっていない。ドキュメンタリー映画の歴史、日本のテレビドキュメンタリーの歩み、森達也流のドキュメンタリー論など、よくまとまった内容になっていると思う。

 これはドキュメンタリーについて現場の人が書いた本のほとんどに言えることなのだが、ドキュメンタリーとは何か、ドキュメンタリーの表現としてどこまで許されるのか、ドキュメンタリーとフィクションの境界はどこにあるのかなどの事柄について、明確な回答というものがない。それはドキュメンタリーの作り手が常に自分で考えるべきことであり、その考える過程そのものがドキュメンタリーを作るという作業とういことらしい。なんだかスッキリしないのだが、これが現場での偽らざる気持ちなのかもしれない。

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2005.06.01

映像プロフェッショナル入門―映画・テレビの現場のクリエーターのために

4845904578映像プロフェッショナル入門―映画・テレビの現場のクリエーターのために
安藤 紘平


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 映画(映像)製作の技術的な入門書。これを読んでおけば、映画やテレビについての技術的な事柄についての基礎的なことがだいたいわかるはず。少なくとも映画評を書いていて、「えーと、こういうテクニックは何て呼ぶんだ?」と思ったときには、サッと答えが出てくる程度の便利さはある。もちろん、企画にしろ、脚本にしろ、撮影にしろ、演出にしろ、各専門分野にはさらに知らなければならない細かな事柄がたくさんあるわけだが、この本は映画の全体を俯瞰できるという意味で優れたものだと思う。

 映画製作そのものには興味のない一般映画ファンも、技術的なことを知れば映画についての視点が広がり、より映画を観るのがより楽しくなるものだ。僕などはそのために、いろんな技術関連書を読んでしまう。監督やキャメラマン、編集マンなど、各分野のスペシャリストにいての本も面白いけれど、それぞれの仕事がどう有機的につながっているのかを、一歩か二歩引いて全体を眺める視点が欠けていることもある。この本は各分野の詳細には踏み込まず、あくまでも全体像を視野に入れている。カメラアングルで言えば全体を捉えたマスターショットのような記述だ。

 2004年初版の本なので、デジタル技術を使った特殊効果やデジタルシネマなど、最新テクノロジーについての紹介もまだそれほど古びていないのがいい。

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ドキュメンタリー 私の現場―記録と伝達の40年

4140808187ドキュメンタリー 私の現場―記録と伝達の40年
相田 洋


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 「東京大空襲」「核戦争後の地球」「電子立国・日本の自叙伝」など、NHKで数多くの優れたドキュメンタリー番組を作ってきた著者による、きわめて実践的なドキュメンタリー講座。NHK入社から退職までの歩みに沿って、ラジオ番組のドキュメンタリー、初期のテレビ・ドキュメンタリー、ドキュメンタリー映画とテレビ・ドキュメンタリーの違い、技術発達と表現の変化などを、具体例を出しながら紹介していく。また、企画の立て方、構成台本の書き方、取材や交渉の方法、素材の整理方法、編集による演出などは、ドキュメンタリーを作る人にも見る人にも参考になるだろう。

 編集機にフィルムをかけっぱなしにしていた何気ない行為から、それまで気づかなかった新しい編集技法を編み出したエピソード。「ウィークエンダー」に触発されて、「石油・知られざる技術帝国」のスタイルを作ったという話。そして「核戦争後の地球」のために開発した、数々の特撮技術。「自動車」で紹介される、文字によるジャーナリズムと映像によるドキュメンタリーの決定的な違い。どのエピソードも、著者が自らの体験を書いている強みで、読んでいてワクワクするような臨場感がある。

 別々にインタビュー取材した対象人物たちが、画面の中でまるで会話や議論をしているように見える編集の面白さ。これを作るために、取材テープから詳細な台帳を作っているというのには驚かされた。言われてみれば、確かにそうでもしないと、あの「擬似会話」は生み出せない。でもテープのチェックだけで何ヶ月もかかるというその作業を、ほとんどまねする人がいないというのもわかるような気がする。

 ドキュメンタリー番組のメイキング本としては、最近読んだどの本より面白い。その方法論や技術は、劇映画やテレビドラマをみたり作ったりする際も参考になるかもしれない。

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2005.05.19

フランス映画史の誘惑

4087201791フランス映画史の誘惑
中条 省平


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 リュミエール兄弟による映画の発明から現代に至るまで、100年以上に渡るフランス映画の歴史を概説したフランス映画史ハンドブック。映画の歴史はハリウッド中心に語られがちだが、この本を読むと第二次大戦前のフランス映画のものすごさというものが伝わってくる。

 ただし本書がフランス映画を大きなまとまりとして語れるのは、1950年代までに限られている。50年代末から60年代に登場したヌーヴェル・ヴァーグ以降は、個々の作家について断片的に語ることしかできなくなってしまうようなのだ。そもそも「ヌーヴェル・ヴァーグ」が一体なんなのか、それすらもこの本を読んでしいてはわからない。映画のテーマにしろ表現手法にしろ、ヌーヴェル・ヴァーグはあまりにも広範囲に拡散しているからだ。

 僕の印象からすると、フランス映画にはフランス映画なりの「まとまり」というものが今でも存在していると思うのだが、この本はヌーヴェル・ヴァーグ以降のフランス映画についてその「まとまり」をつかみかねている。ヌーヴェル・ヴァーグが提唱した「作家主義」というドグマにからめ捕られて、フランス映画を一個のカタマリとして見ずに、個々の作家の特徴を描写することにばかり熱心になっているようにも思う。ただしこれは、作家論や作品論という固有名詞の世界を映画史という普遍的な世界に定着させるには、1970年代以降というのがまだ余りにも近い過去に過ぎるということなのかもしれない。

 僕自身はフランス映画にまったく不案内だったので、フランス映画史というひとつの地図をこの本によって手に入れられたという意義は大きい。フランス映画が好きな映画ファンは、読んで損のない本だと思う。

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2005.05.09

ジブリマジック―鈴木敏夫の「創網力」

406212680Xジブリマジック―鈴木敏夫の「創網力」
梶山 寿子


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 「映画道楽」はスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー自身による本だったが、こちらは外部のジャーナリストという他者の目を介したジブリと鈴木プロデューサーについての本だ。この本が書かれたの2004年は、鈴木氏にとってジブリ以外のプロデュース作品である『イノセンス』が公開されているし、『ハウルの動く城』の製作も大詰めになっていた。そんな現場に密着して鈴木流のプロデュース術を実況しつつ、過去のできごとについても整理して語っていくとうい構成になっている。

 ただし著者が対象である鈴木氏に接近しすぎていて、鈴木氏のスポークスマンになっているような印象も受ける。取材を通して鈴木氏や彼の率いる「鈴木組」の人脈に惚れ込んでしまい、まるで自分自身も鈴木組の一員になったかのような錯覚を抱いてしまったのだろうか。すいすい読めてしまうのだが、それが逆にちょっと気になったりもする。

 まあ鈴木プロデューサーにしろジブリにしろ、世間の注目を浴びる割りにはその内情が外部に紹介されることもまれだったので、今の時点では勝手に広報活動を買って出てくれるスポークスマンがいるのも悪いことではないだろう。ジブリとうい得意なアニメーション・スタジオについての歴史的な評価は、10年後、20年後にまた別の人が行えばいいのかもしれない。とりあえず同時代の内部リポートとして、この本は重要なものだ。

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映画道楽

4835615409映画道楽
鈴木 敏夫


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 スタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫さんが初めて書いた映画本。自分自身の映画体験、ジブリの歩み、プロデューサー業の中身、アニメーション映画の現在、映画の未来などについてざっくばらんに語っている。編集者のインタビューをもとに記事が作られているので、文章は語り口調でとても読みやすい。しかも文字が大きく紙も厚めときているから、半日もあれば読めてしまうはずだ。

 ジブリ作品最大のキーパーソンとも言える鈴木氏が、何を考えながら映画を作っているのか。普段は見えにくいプロデューサー業の中身が、本人の口から語られているのは面白い。しかし本人であるがゆえに、周囲の人たちを傷つけかねない微妙な部分については語れないだろう。楽屋裏話としては情報量不足。しかしその分、鈴木氏の「映画論」は面白く読める。時折ものすごく鋭い分析や批評があったりして、ハッと目を見開かれるような部分がいくつもあった。

 例えば小津安二郎の映画は現実の日常よりはるかにスローモーなことで独特のファンタジー世界を成立させていたが、最近の日本人は動作や喋り方がスローモーになって小津映画の世界に近づいてきたという指摘(P.180)。これは「え~、そうなのか?」と思うのだけれど、若いアニメーターたちと日常的に触れ合っている鈴木氏の発言だけに説得力がある。映画の中のヒーロー像について語る中で、山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』の主人公は昔なら渥美清が演じただろうという指摘(P.198)には「なるほどな~」と思った。ル・グィンの「ゲド戦記」を宮崎駿が映画化したがっていた話は有名だが、それには特に触れないまま、「ゲド戦記」の映画は作っても当たらないと断言するのも面白い(P.206)。たぶんジブリの内部では、一時期真剣に検討されていたのでしょうね……。

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2005.04.29

昭和映画史ノート―娯楽映画と戦争の影

昭和映画史ノート―娯楽映画と戦争の影
内藤 誠


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 1冊の本ではあるが、中身はいくつかの文章の寄せ集めになっている。第1章は太平洋戦争中にわずか2年だけ存在した国営の日本映画学校についての記録。第2章は戦前に多くのファンを集めて忽然と消えた大都映画と、アクションスターとして一世を風靡したハヤブサヒデトについて。第3章は戦後の黄金期を前に表現に苦悩する溝口健二と、女性解放映画3部作について。第4章は水の江滝子と石原裕次郎について。昭和の映画について書かれた著者なりの記録や随想で、これは著者にとっての「昭和映画史ノート」なのだ。だが「娯楽映画と戦争の影」という副題はやや大げさ。

 個人的には第1章の日本映画学校についての記述が興味深く、第2章の大都映画についての記事も面白かった。このふたつの章は手軽に読める資料としての価値も高いと思う。でもそれ以外は、著者の溝口論であり、著者の石原裕次郎論だと思う。

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テレビ制作入門―企画・取材・編集

テレビ制作入門―企画・取材・編集
山登 義明


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 NHKで数多くのドキュメンタリー番組を制作してきた著者が書いた、実践的な番組制作ガイドブック。番組制作を企画・取材・編集の三段階に分け、各部分ごとに考え方や注意点、制作のヒント、過去の実例などを示していく。内容はどれも具体的で観念的な部分もなく、非常にわかりやすいものだ。

 テレビ・ドキュメンタリーについて書かれた本だが、実例や証言としてドキュメンタリー映画が引き合いに出されることが多い。これは「ドキュメンタリー」という仕事については、テレビも映画もあまり考え方に差がないからだろう。実際に最近は、テレビ向けに取材した素材を再編集して、劇場向けのドキュメンタリー映画を作るような例も多い。この本は「ドキュメンタリーの作り方」について書かれた本なので、映画とテレビの共通点が強調されているのだが、ここでテレビ・ドキュメンタリーとドキュメンタリー映画の細かな「違い」に焦点があたれば、それはメディアとしての映画とテレビの違いについて論じた映像メディア論にもなっただろう。この本にはそのヒントがある。

 第4章はそれまでの具体的なドキュメンタリー制作ガイドから離れて、ドキュメンタリーとは何か、ドキュメンタリーとフィクションの違いはどこにあるのかなど、映画とテレビの違い、欧米と日本のドキュメンタリー表現の違いなど、ドキュメンタリーについてのより大きな議論の種が蒔かれている。「テレビ制作入門」からさらに一歩踏み込んだこれらの記述に、ドキュメンタリーという表現についての著者の視点が一番多く盛り込まれていると思う。

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2005.04.26

女が映画を作るとき

女が映画を作るとき
浜野 佐知

平凡社 2005-01
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おすすめ平均
日本を代表する映画監督、浜野佐知
「浜野佐知」伝説、誕生!

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 女性監督として300本のピンク映画を撮り、『第七館界彷徨―尾崎翠を探して』で一般映画デビューした著者が、「女性が映画を作る」というテーマを多角的に論じた本。その中身は、自分がいかにして映画監督になったかという自伝であり、女性が映画製作を通して「女」というセクシャリティについて語る女性映画論であり、社会の中での女性の立場について論じる著者なりのフェミニズム宣言であり、日本と世界の女性映画祭の紹介であり、女性がなぜ映画を撮らねばならないのかを論じた女性監督としてのマニフェストでもある。

 僕自身は1990年代以降に映画を本格的に観始めたこともあって、日本に女性監督が少ないことは十分に理解しつつも、男性・女性という分け方で映画について考えたことはなかった。しかし時代がほんの少し違うだけで、置かれている状況が大きく変わっているのだ。著者が経てきた道のりはまさにイバラの道。しかしそれでも、道があるだけはましだった。それ以前には、なにをどうあがいても女性は監督になれない時代が存在したのだ。

 このほんの中で一番読みごたえがあるのは、著者と高野悦子さんとの対談だった。そこではこの本の中で論じられているテーマが、ほぼすべて語り尽くされているようにも思う。時間がない人は、まずここから読んでしまうことをおすすめする。

 映画ファンはもちろんのこと、これから映画業界を目指して勉強している人たちに、男女限らずぜひとも読んでもらいたい本だ。

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2005.04.24

日本映画史100年

日本映画史100年
四方田 犬彦


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 日本映画100年の歩みを概説する本だが、新書という制限もあり、個々の作品の紹介や批評の分量が少なく、タイトルや人名の羅列になっているのはある程度やむを得ない。またこうした記述スタイルは、著者が意図的に選んだものでもあるのだろう。何も語っていないように見えて、よく見ると記述の端々にちくりと針で刺すような批評性が顔を見せることもある。それが的確なものとはとても思えないこともあるが、そこから著者と読者の距離感を読み取るのが読書の楽しみでもある。僕とこの著者はまったく趣味が合わない。記述には的外れなところもあるように思う。しかしそのことが、本を読んでいる側に自覚できることが大切なのだ。何も私見を交えない客観的な記述のような顔をしたまま、平気で偏った記述をする人も多いのだ。(新聞などはその筆頭。)

 この著者ならではの記述だと思わせるのは、4章の「戦時下の日本映画」と、5章の「植民地・占領地における映画制作」という部分。ここでは日本映画史とアジア映画史の接点という視点を示し、今後の映画史研究の座標軸を提示している。しかし8章以降(1960年代以降)の記述は著者の同時代的な思い入れと個人的な評価の比重が高すぎて、映画史の本としてはバランスを欠いたものになっているように思う。

 例えば50年代の時代劇監督やスタッフがテレビ時代劇に流れてブームを作ったことなど、テレビと映画の関わりや人的交流についてひとことぐらい記しておくべきことがあったのではないだろうか。日本の映画人がアジアと交流を持っていたことも重要だが、テレビとの交流はそれよりずっと重要だと思う。

 いずれにせよ、これは日本映画100年の歴史を俯瞰してながめたひとつの見取り図であり、各分野の詳細についてはさらに別の本や研究にあたってみる必要があるだろう。(4/24)

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2005.04.12

放送業界大再編―デジタル放送が巻き起こす地殻変動

放送業界大再編―デジタル放送が巻き起こす地殻変動
西 正


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 執筆時期が最近ということもあり(2004年6月30日初版)、内容的にはまさにたった今のことが書かれている。地上波デジタル放送の実施を既定事実とし、地方ローカル局の再編も当然起きるであろうという前提で書かれているこの本は、ケーブルテレビやブロードバンド放送まで視野に入れて、テレビが今後進んでいく道を解説している。

 光ケーブルを使ったブロードバンド・インターネットが猛スピードで家庭に普及し始めているが、そこに流す中核コンテンツはやはりテレビだろう。ブロードバンド・テレビと、地上波や衛星のデジタル・テレビ放送、ケーブルテレビは、競合するのか棲み分けていくのか。未来予言ではないので「こうなる!」という結論が書かれているわけではないが、著者の見た大まかな見取り図は示してある。(4/12)

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2005.04.04

テレビの21世紀

テレビの21世紀
岡村 黎明


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 この本の直前に「地方テレビ局は生き残れるか」という本を読んだのだが、順番としては一般向けのこちらを先に読むべきだった。内容的には重なり合う部分も多く、しかもそれがより噛み砕いてわかりやすく書かれている。テレビの歴史、現在の問題点、未来への提言など、内容的にもバランスのとれたものだ。(4/4)

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2005.03.31

地方テレビ局は生き残れるか―デジタル化で揺らぐ「集中排除原則」

地方テレビ局は生き残れるか―デジタル化で揺らぐ「集中排除原則」
鈴木 健二


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 地方テレビ局に出向いて丁寧にインタビューを取りながら、地上波デジタルへの切り替えを目前に控えたテレビ放送業界の現実を暴き出していく。この本を読むと、2011年の地上波デジタル放送への完全な切り替えなどというものが、はたして現実に可能なのかどうか疑わしく思えてくる。そもそも地上波デジタル放送には、そうしなければならない必然性がひとつもないのではないだろうか。デジタルへの変更そのものは既に決定済みなので、11年に放送が全局デジタルになるのは間違いなさそうだが、アナログ放送を平行してアナログ放送を同時送信し続けることを、そうそう簡単にやめられるとは思えない。

 BS放送で番組の全国一斉放送が可能になっている在京キー局にとって、地上波放送の中継局として利用してきた系列のローカル局はいずれ不要になるかもしれない。ただし広告媒体としてのテレビは、必ずしも「全国一斉放送」にのみ魅力があるわけではない。地域別にきめ細かくCMを流したいというスポンサーの方が、実際には多いからだ。しかしそのために、コストの高い地上波放送を続けるというのも割が合いそうにない。

 民放テレビをスポンサーの広告で作るという現在のビジネスモデルは、地上波放送というインフラの特性を前提に作られている。BS、CS、CATV、インターネットなどが放送分野で競合していく時代には、これまでとはまったく違ったビジネスモデルが必要になるのかもしれない。

 地方局再編で九州・四国・中国などの大きな地域ブロックごとに系列の放送局を統合していくか、それとも同一地域(県)ごとに系列を越えてテレビ局を統合していく方がいいのかというのが、この本の大きなテーマにもなっている。国や在京キー局はブロックごとに系列局をまとめていく方向を目指しているらしいが、視聴者からすると小さな地域ごとにまとまってくれた方がいいはず。視聴者にはテレビ局の経営が誰なのかなんて関係ない。むしろローカルニュースとして、自分たちの身近な地域を取り上げてくれないと意味がないのだから……。

 なお著者は「気くばりのすすめ」の鈴木健二とは同姓同名の別人。(3/31)

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2005.03.27

黒沢清の恐怖の映画史

黒沢清の恐怖の映画史
黒沢 清 篠崎 誠


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 タイトルは「黒沢清の」となっているが、中身は黒沢清と篠崎誠の対談集。僕の第一の発見は、黒沢清の発言よりもむしろ、篠崎誠が大変なB級ホラー映画フリークであることを知ったことだった。その結果が『おかえり』とか『忘れられぬ人々』『犬と歩けば チロリとタムラ』にどう結びついているのかがちょっと謎。黒沢清はホラー好きがホラーを作っているのだから、その点では非常にわかりやすいのだけれど……。

 対談の中身は黒沢清の恐怖映画原体験となったミイラ男をめぐる話から始まるのだが、これがユニバーサル映画のミイラ男ではなく、昔の和製テレビドラマだというのが面白かった。映画の恐怖体験は『マタンゴ』だそうだ。その後、話題はユニバーサルのホラーを飛び越えて、ハマーフィルムのドラキュラに向かう。さらにマリオ・バーヴァの怪奇映画を経て、トビー・フーパーのフィルモグラフィーについて熱く語るあたりがクライマックスだろう。この本を読むと、トビー・フーパーがじつに偉大な監督に思えてくる。何しろ黒沢・篠崎のふたりに語らせると、トビー・フーパーのほとんどの作品は「泣ける愛の映画」ということになってしまうのだ。

 その後、ロメロやカーペンターについても少し触れているのだけれど、やはりこの本の中心はトビー・フーパーにつきるだろう。『悪魔のいけにえ』がいかに素晴らしい映画であるかについて、これほど熱く、しかも詳細に、映画演出の細部にわたって語った本はめったにないと思う。(3/27)

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2005.03.25

映画から見えてくるアジア

映画から見えてくるアジア
佐藤 忠男


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 映画評論家の佐藤忠男さんが、いかにしてアジアの映画に出会い、その魅力に引き込まれていったかを綴った本。「○○映画論」といった論文や研究所ではなく、あくまでも一般向けの新書。各国の映画事情や映画人との交流を通して、著者がいかにして世界を理解し日本を再発見したかが語られている。著者の映画との出会いの旅に、読者も同行して一緒に映画を発見していくような楽しさが味わえる好読物だ。

 韓国映画、ベトナム映画、モンゴル映画、イスラム圏の映画について、それぞれ1章がさかれている。海外での映画検閲事情と、検閲制度と戦う映画監督たちの姿。しかし検閲の中で磨かれていく映画表現があるという逆説についても言及される。宗教対立を映画で乗り越えられるかと問う章は楽観的過ぎる気もするが、イラン映画を通してイラン国内の民主主義の高まりについて語る部分は説得力がある。僕自身もイラン映画を通してイランの人々を見知っており、アメリカがイラクに次ぐ攻撃隊諸国としてイランを名指しすることに違和感を持っているからだ。

 『批評家の喜びは、なんといっても人の知らない作品を発見して自分の批評の力でそれを広く認めさせることである(P20)』というあたりは、僕自身もまったくの同感。それと同時に、生涯かけて情熱を傾けられる「アジア映画」というテーマと出会えた著者を、うらやましく思ったりもするのだ。(3/25)

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テレビの教科書―ビジネス構造から制作現場まで

テレビの教科書―ビジネス構造から制作現場まで
碓井 広義


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 テレビの製作現場にいた著者による、実践的なテレビ・リテラシー入門。全体は2部構成。第1部の基礎編では、テレビ・リテラシーの定義、テレビ放送の歴史、ビジネス構造、視聴率などについてわかりやすく解説されている。第2部は実践編で、これは著者が大学で教えている内容を踏まえて、ドキュメンタリー番組を作る作業を再現している。

 小さな本だが、テレビ放送や番組作りの概略を知るには格好のガイドブック。第2部は著者なりのテレビ・リテラシー教育について、実践を通した提言をしようという意味もあるのだろう。こうした映像メディア教育は専門の大学だけでなく、一般の大学と言わず高校などでも、一般教養や社会科の授業に取り入れてほしいものだ。(3/24)

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2005.03.22

映像とは何だろうか

映像とは何だろうか ― テレビ制作者の挑戦
吉田 直哉


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 映像メディアについて肩肘張った理論を説く本ではない。副題に「テレビ制作者の挑戦」とあるように、これはテレビ番組制作の現場で、映像表現の可能性と格闘してきた著者による、実践的な足取りの記録だ。テレビ・ドキュメンタリー初期の失敗談。作り手の意図を離れて一人歩きしていく映像。現場でのさまざまな苦労話。取材後に起きた事件。大河ドラマ演出の新機軸。興味深い話が次々と続いていく、面白い読み物だ。

 14章の「映像にとって廃墟とは」で論じられる廃墟論はわかりにくいが、現在と過去のモンタージュというのは面白い。アイデンティティを「割り符」と訳したという司馬遼太郎のエピソードや、家紋に夢中になった武満徹の話など、小さなエピソードまで興味津々。あっという間に読んでしまった。(3/22)

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2005.03.21

懐かしのアメリカTV映画史

懐かしのアメリカTV映画史
瀬戸川 宗太


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 1952年生まれの著者が、自分自身が少年時代を送った1960年代にアメリカから大量輸入されたテレビドラマを紹介した本。単に作品を時系列に紹介するだけでなく、その当時のテレビ事情、ドラマ制作時のアメリカの世相、日本の社会情勢、映画との関わりなどを通して、ドラマの成り立ちを浮き彫りにしていく。「テレビドラマ・ガイドブック」としては、タイトルの羅列だけで終わっているところもあるのだが、それでもちゃんとドラマの中身や意味合いがわかる仕掛けになっている。巻末には日本とアメリカでのドラマ放送年表が付いているので、何か調べものをするときには便利かもしれない。(3/21)

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2005.03.15

ホラー映画の魅力―ファンダメンタル・ホラー宣言

ホラー映画の魅力―ファンダメンタル・ホラー宣言
小中 千昭


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 「ほんとにあった怖い話」や「学校の怪談」などのテレビシリーズで、実話系ホラージャンルの先鞭をつけた著者によるファンダメンタル・ホラー論。サスペンス、ショッカー、スプラッターなどの要素を、ホラーと完全に切り離し、純粋にホラーとは何かを突き詰めて、その方法論にまで話が及ぶ。著者自身の体験によるホラー映画の名作紹介、著者自身が関わったホラー作品群、そして実作の中で培われ体系化され、業界内では「小中理論」とまで言われている(らしい)ホラー描写のノウハウ集。

 ホラー映画が大好きな人だけでなく、映画が好きな人なら誰でも興味深く読める内容。フェイク(擬似)・ドキュメンタリーの面白さとその効果について語る章では、矢追純一のUFO番組や「第三の選択」といったオカルト番組から、『食人族』や『スナッフ』といった伝説のインチキ映画、ピーター・ジャクソンの『光と闇の伝説 コリン・マッケンジー』、ジュード・ロウ主演の『ファイナル・カット』といった最近の作品にまで触れているのが印象的。つくづくこの手のフェイク・ドキュメンタリーが好きらしい。某局でお蔵入りになったというフェイク・ドキュメンタリーの脚本まで、付録についているのは面白いと思う。ドキュメンタリー番組で定番化しているさまざまな手法が、改めて文字として書き起こされているのを見るとニヤニヤ笑ってしまう。

 恐怖演出の手の内を明かしていることで、この本を読むとホラー映画が楽しめなくなるのではないかと心配する人がいるかもしれない。しかし心配御無用。本当によくできたホラー映画というのは、その仕組み(構造)や仕掛け(演出)がわかっていても十分に怖いのだ。

 著者がホラー演出についてこれほど手の内を明かせるのは、著者自身の活動の場が現在はホラージャンルから離れていることも大きいのだろう。現場から一歩離れたところでホラージャンルを振り返る、幾分冷静な視点が感じられる。これは著者がホラー映画に向けて書いたラブレターのような本であると同時に、「俺はここまでやったんだから、これからホラーを作る人はもっと怖いことを考えてくれよ!」という挑戦状でもある。ホラージャンルに挑む脚本家や監督(演出家)は、この本を踏み台にしてさらなる恐怖で観客を震え上がらせてほしい。(3/15)

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2005.02.20

スクリーンの中の戦争

スクリーンの中の戦争
坂本 多加雄


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 映画評論や映画批評を専門としているわけではない著者が、自身の専門である政治思想研究の立場から映画について論じた本。『パール・ハーバー』と『トラ・トラ・トラ!』から現代ハリウッドの歴史に対する怠慢と商業主義について論じたかと思えば、『太陽の帝国』でアジア近代史における日本の立場を、『地獄の黙示録』と『エマニエル夫人』から欧米人のアジアに対する憧れを、『タクシー・ドライバー』から日常の中に潜む庶民のファシズムを、『明治天皇と日露大戦争』から日本人にとっての近代化と戦争の記憶を、『真空地帯』と『拝啓天皇陛下様』から日本人にとっての軍隊を、『陸軍』と『破れ太鼓』から木下惠介の戦争と戦後を、そして『東京物語』で小津安二郎と日本人を論じている。どれも映画についての一流の批評になっている。

 映画をシーンごとに分析して解釈していく第2章(『太陽の帝国』)、第4章(『タクシー・ドライバー』)、第8章(『東京物語』)は読み応えがある。映画ファンが映画を観ながら頭の中で「このシーンのこの台詞にはこんな意味がある」「この小道具にはこんな象徴的意味が込められている」などと分析しながら映画を読み解いていく作業が、紙の上で見事に再現されているのだ。その分析や解釈が正しいのか、その意見に賛同できるのかという点は別にしても、ここはこの本の中で最も面白い部分だと思う。

 著者は2002年10月に亡くなっており、これは著者の坂本多加雄にとっての遺稿集だという。そのため本来ならビデオやDVDで確認すべきところがおろそかになっていたり(例えば『ロボコップ3』についての記述)、他の資料を参照すればすぐわかることが調べず放置されていたり(例えば『地獄の黙示録』のラストシーンのバージョン違いについて記述がないし、『地獄の黙示録・特別完全版』については存在さえ触れていない)、映画解説本としては不備に思える点も多い。おそらく編集者はこうした欠点に気づきながら、あえてそのままにしたのだろう。映画本としては解説や資料の部分で補足しておいてほしかったところだが、必ずしも映画ファンやマニア向けではない一般向けの新書としては大きな欠点とも言えないだろう。

 ひとつの映画の見方を教えてくれる本としては非常に優れた本。語り口調の文体は読みやすく、映画が好きな人ならおそらく半日ぐらいで読めてしまうと思う。これはオススメできます。(2/20)

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2005.02.10

日本映画 ぼくの300本

日本映画 ぼくの300本
双葉 十三郎


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 先に出版された「外国映画ぼくの500本」の姉妹編。双葉先生の星取表は☆☆☆☆★★が最高点なのだが、日本映画編にはこの最高点がない。ほとんどが☆☆☆★★★どまりで、せいぜいが☆☆☆☆まで。でもまあ、こうなってしまった理由は肌合いの問題なので、仕方がないかな~とも思う。このあたりの事情は、第2部を読むとなんとなく察せられるのだけれど……。

 第2部は「外国映画~」を踏襲して私的な日本映画史になっているが、日本映画も大きな「映画史」の流れの中にあるわけだから、外国映画編の時よりも話は小さくなる。しかしその分より「私的」な要素が強まって、得点関係なしに選ばれたお気に入りの映画、監督、男優、女優、脚本家、キャメラマンなどが紹介されているのは興味深い。「ぼくの採点表」には日本映画についての記述がないので、それを補完する意味でも貴重な本となっている。(2/10)

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2005.01.30

外国映画ぼくの500本

外国映画ぼくの500本
双葉 十三郎

文芸春秋 2003-04
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 映画評論家の双葉十三郎さんが「ぼくの採点表」(全5巻)から高得点の洋画500本を選び出して、ユニークで切れ味鋭い短評と共に紹介した映画ガイドブック。こうしてずらりと映画が並ぶと、自分がいかに映画を観ていないかなをつくづく思い知らされる。これから先、この500本のうちのどれだけを僕は観ることができるだろうか。まあ観る努力をしなければ、それこそ永久に観られないわけだけれど……。

 しかし本当のところ、僕がこの本で一番楽しみ共感したのは第2部の「ぼくの小さな映画史」だった。これは双葉先生による小さな自叙伝であると同時に、双葉流の簡単な映画史、映画論、映画評論(批評)概論にもなっている。映画ガイドの部分をいちいち読むのは時間がかかると思っている人も、この第2部だけは読んでおいて損がないと思う。(1/30)

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2004.08.09

誇りと偏見―私の道徳学習ノート

誇りと偏見―私の道徳学習ノート
誇りと偏見―私の道徳学習ノート
佐藤 忠男

[:犬:] 人間が「誇り」や「自尊心」を持つのはいいことだが、それは得てして「傲慢」なものになってしまう。映画評論家の佐藤忠男が、自分自身の戦争体験、戦後体験、映画体験などを通じて、人間の自尊心やセルフイメージの問題を問う本。特に何らかの結果や提言があるわけではなく、著者自身が自問自答していく姿が描写されている。考えるためのヒントを数多く与えてくれるが、性急に結論を求めたい人には物足りない本だろう。映画評論としては、黒澤明論、チャップリン論、北野武論、小津安二郎論などが見どころか。著者インタビューをする予定なので、そこで何か面白い話を聞ければ追記することにする。(8/9)

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2004.06.23

黒澤明と『七人の侍』―"映画の中の映画"誕生ドキュメント

黒沢明と『七人の侍』―
黒澤明と『七人の侍』―"映画の中の映画"誕生ドキュメント
都築 政昭

[:しょんぼり:] 『七人の侍』の製作裏話としては、他の書籍で紹介されている話以上の物はほとんどない。かといって、これまで語られてきたエピソードの集大成というほどのボリュームもない。著者は最後に当時の映画批評家がこの映画を正しく評価しなかったと言って責めているが、それはあまりにも黒澤びいき過ぎるのではないか。この著者は何でもかんでも、黒澤明を好意的に解釈しすぎている点があり、それが非常に鼻につく点も多い。(6/23)

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2004.06.16

興行師たちの映画史 エクスプロイテーション・フィルム全史

興行師たちの映画史 エクスプロイテーション・フィルム全史
興行師たちの映画史 エクスプロイテーション・フィルム全史
柳下 毅一郎

[:楽しい:] 「映画は見せ物から始まり、今現在も見せ物である」という著者の主張には賛成だし、紹介されているエピソードも面白い。だが80年代以降のメジャーによるエクスプロイテーション映画として、無数の続編映画やシリーズ映画がある事にまるで触れていないのは手落ちかも。(6/16)

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2004.06.14

アメリカ映像文学にみる愛と死

アメリカ映像文学にみる愛と死
アメリカ映像文学にみる愛と死
日本マラマッド協会

[:嬉しい:] ハリウッド映画を「アメリカ文学」という文脈から読み解く試み。著者により映画へのアプローチ方法に違いがあり、それが質のバラツキにもなっているのだが、全体としては好読み物になっている印象。でも『トラ!トラ!トラ!』を黒澤明の監督作だと断言してしまうような、初歩的なミスがそのまま放置されているのは困りもの。(6/14)

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2004.06.02

黒沢明と『赤ひげ』―ドキュメント・人間愛の集大成

黒沢明と『赤ひげ』―ドキュメント・人間愛の集大成
黒沢明と『赤ひげ』―ドキュメント・人間愛の集大成
都築 政昭

[:嬉しい:] 黒澤の意図を何でも「愛」「ヒューマニズム」「ドストエーフスキー」で解説してしまうのはどうかと思うが、映画製作の裏側を完成した映画と比べながら語っていく筆致には迫力がある。黒澤明の完全主義ぶり、作品作りに対する妥協のなさ、スタッフワークの素晴らしさ、役者たちの層の厚さなどが伝わってくる。『赤ひげ』は黒澤映画の集大成で到達点。本を読んでいたら映画が観たくなる。実際、DVDでさわりだけ観てしまった。(6/2)

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2004.06.01

黒沢明と『天国と地獄』―ドキュメント・憤怒のサスペンス

黒沢明と『天国と地獄』―ドキュメント・憤怒のサスペンス
黒沢明と『天国と地獄』―ドキュメント・憤怒のサスペンス
都築 政昭

[:グッド:] メイキング本としてもなかなか読み応えがある。中でも特急こだま号での撮影状況を再現していく部分は、読んでいても完成した映画と同じくらいハラハラドキドキさせられた。文章から撮影現場のギリギリの緊張感が伝わってくるようだ。(6/1)

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2004.05.31

黒沢明と『生きる』―ドキュメント心に響く人間の尊厳

黒沢明と『生きる』―ドキュメント心に響く人間の尊厳
黒沢明と『生きる』―ドキュメント心に響く人間の尊厳
都築 政昭

[:しょんぼり:] 映画のメイキング本としては物足りない部分も多いのだが、作品の企画意図を『白痴』と比較しながら論じる所などは多少の新しさがあるのかも。作品のテーマについては、この著者は完全に読み間違えをしているように思える。しかしそれもまた、映画の受け止め方のひとつなのだろう。(5/31)

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2004.05.15

クロサワさーん!―黒沢明との素晴らしき日々

クロサワさーん!―黒沢明との素晴らしき日々
クロサワさーん!―黒沢明との素晴らしき日々
土屋 嘉男

[:楽しい:] 『七人の侍』から『赤ひげ』まで、黒澤映画の常連だった土屋嘉男が、黒澤明との思い出を綴ったエッセイ集。他の黒澤本にはあまり書かれていない、ユニークなエピソードが数多く紹介されている。三船敏郎や左卜全など、黒澤映画でお馴染みの人たちについてのエピソードも面白い。現在は文庫化されている。(5/15)

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2004.05.14

時代劇(チャンバラ)への招待

時代劇(チャンバラ)への招待 PHPエル新書
時代劇(チャンバラ)への招待 PHPエル新書
六人のチャンバリスト 逢坂 剛 川本 三郎 菊地 秀行 永田 哲朗 縄田 一男 宮本 昌孝

[:しょんぼり:] 時代劇が好きだ!という気持ちは伝わってくるものの、読み終わっても「だからどうしたの?」と言いたくなるような中途半端さだけが残る本。研究書でもなければ、エッセイ集でもなく、作品ガイドでもない。なんのつもりでこんな本が企画されたのか疑問だ。(5/14)

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2004.04.06

モンスター・ムービー

モンスター・ムービー
モンスター・ムービー
石田 一

[:楽しい:] ドラキュラ、フランケンシュタイン、ミイラ男、宇宙からの侵略者など、映画に登場して観客を震え上がらせたモンスターの数々について解説した、モンスター・ムービーのガイドブック。単なる作品紹介ではなく、著者ならではの考察や批評が入っているのがいい。読み応えありだ。(4/6)

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2004.02.13

これもまた別の話

これもまた別の話
これもまた別の話
和田 誠 三谷 幸喜

[:楽しい:] 和田誠と三谷幸喜の映画対談第2弾。前作との間に三谷幸喜が映画を1本監督したこともあって、映画作りの裏側にまで話がおよぶディープな対談となった。このシリーズは表紙のイラストまで和田・三谷の共作だという。本体表紙にどちらがどのイラストを描いたかの種明かしがある。(2/13)

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2004.02.09

それはまた別の話

それはまた別の話
それはまた別の話
和田 誠 三谷 幸喜

[:楽しい:] 和田誠と三谷幸喜が毎回1本の映画について語り合った、キネマ旬報の同名人気連載を単行本化したもの。ふたりとも筋金入りの映画ファンであるうえに、映画監督や脚本家でもある。映画の裏表を徹底解剖していく様子はじつにスリリングで興味津々だ。(2/9)

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2004.02.05

下落合シネマ酔館

下落合シネマ酔館
下落合シネマ酔館
赤塚 不二夫 やまさき 十三

[:おばけ:] ギャグ満画の巨匠・赤塚不二夫と、「釣りバカ日誌」の原作者・やまさき十三が酒杯を傾けながらとめどなく語り続ける映画談義。往年の名作名画をリアルタイムで観てきた人の話はそれなりに面白い。構成者がかなり遊んでいるのも、読み物としては二重丸。現在絶版。(2/5)

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2004.02.01

シネマ今昔問答

シネマ今昔問答
シネマ今昔問答
和田 誠

[:ハート:] サイレント映画から最新作まで、和田誠が800本以上の映画について語ったプライベートな映画史。西部劇、海賊映画、伝記映画、ミュージカル、スラップスティックなど、すたれてしまった映画ジャンルについての愛着が伝わってくる好著。(2/1)

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2004.01.28

映画100年のテクノグラフィー

映画100年のテクノグラフィー―American movie‐state of the art
映画100年のテクノグラフィー―American movie‐state of the art
柳生 すみまろ

[:おばけ:] 映画100年の歩みを、映画を生み出した技術を切り口にして解説したユニークな映画史。ジャストシステムという会社の都合もあるのだろうが、こういう本があっという間に絶版とはもったいない。(1/28)

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2004.01.09

映画史を学ぶクリティカル・ワーズ

映画史を学ぶクリティカル・ワーズ
映画史を学ぶクリティカル・ワーズ
村山 匡一郎

[:グッド:] 映画誕生から100年の歴史を、キーワードや人名を手がかりにして解説していく本。知っているけどうまく説明できないことが、コンパクトにまとめられている。通読した後も事典として使えるのは便利。(1/9)

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