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2008.02.23
エディソン・チャンの問題点
『インファナル・アフェア II 無間序曲』や『頭文字(イニシャル)D』で知られる香港のスター俳優で歌手でもあるエディソン・チャンのパソコンから、彼が女優たちと撮影したプライベート写真が流出した事件。写真を撮影したチャン本人は問題の責任を取って香港映画界からの引退を表明したけれど、あられもない写真が公開されてしまった女性たちは取り返しの付かない被害を受けている。写真の一部はネットで検索すれば誰でも見られるわけで、僕も「こりゃひどい」と憤慨しつつGoogleで検索したりしているわけだ。女優たちのイメージダウンと今後の活動への差し障りは避けられないだろうし、何年も前に撮られた写真が今回流出したことで、婚約破棄や離婚危機など私生活がダメージを受けているという報道もなされている。
この事件ではエディソン・チャンを非難する声が大きいのだが(だからこそ引退表明となった)、出来事のひとつひとつを見る限り彼ばかりを一方的に責めることもできないと思う。例えば交際相手のヌードや性行為の内容を写真やビデオに撮影することは、デジカメやカメラ付き携帯が一般化している現在広く行われていることなのではないだろうか。流出している写真を見る限り、カメラの存在は取られている女性たちの方も知っていたはず。顔の近くでクローズアップ撮影されたものもあれば、フラッシュ撮影されたものもある。ベッドの上の行為にせよ撮影にせよ、それらは双方の合意の上に行われていたものなのだ。
今回の写真流出は、撮りためた写真が保存されていたパソコンが修理に出され、そこからデータが同意なしにコピーされて外部に流出したとも報じられている。もしこれが事実だとすれば(いかにも事実っぽいけれど)、これは個人情報漏洩の典型的なパターンではないか。今回はそれが「人気俳優と女優のセックス写真」だったから大スキャンダルに発展しただけのこと。官庁や医師や弁護士や教員などが使っているパソコンが修理に出されても、そこから同じように外部秘のデータがコピーされて流出する可能性はあるはず。今回はパソコン修理業者から逮捕者が出たりしているようだけど、使用者に情報を流出させる意図がなくてもファイル交換ソフトやウィルス感染などから容易に外部に情報が漏れ出すことはよく知られている。
「わたしは恋人とのセックス写真を撮る趣味はないから大丈夫」と考えている人がいるなら、それはちょっと甘いのではないか。セックス写真に限らず、今どき誰のパソコンにだって、外部の第三者の目に触れては困るようなデータがひとつやふたつ入っているだろう。それは職場から持ち帰った仕事の一部かもしれないし、仕事やプライベートに利用しているアドレス帳かもしれない。オンラインバンキングのパスワードや、ネットで利用している有料サイトのアクセスキーかもしれない。僕のパソコンに恋人とのセックス写真は入ってないけど、こうした「他人に見られちゃまずいデータ」は山ほど入っているよ。
それを踏まえた上で、今この瞬間にパソコンが故障したとする。その時、業者に依頼せずに自分で修理できる人がどれだけいる? 使っているハードディスクの中には秘密の情報がいっぱいだ。業者は修理に際して、安全のためにもハードディスクのデータを一度バックアップするかもしれない。パソコンは戻ってきても、業者がコピーしたデータがどうなるのかまで、使用者は把握しようがないではないか。業者に修理依頼をする前に、ハードディスクのデータをすべて消去できればそれがいい。でもパソコンが起動できないとデータは消去できないから、機密情報はそっくりそのまま業者の手に渡るのだ。
もちろん業者には守秘義務があるし、コピーしたデータは必要なくなれば消去すると説明するだろう。ところがだ、大手パソコンメーカーのパソコンリサイクルでも「回収前に専用ツールを使ってHDDのデータを完全に消去しておいてください」と言っていたりする現実もある。一度手から離れてしまったら、第三者の手に渡ったデータがどうなるかは誰にも責任が持てないのだ。
今回の事件に話を戻すなら、外部に漏れては困る写真を保存してあるパソコンを、容易に修理業者に出したエディソン・チャンの不注意は責められるべきだ。しかし「じゃあ故障したパソコンはどうすればいいの?」と問われると、これがよくわからない。どうすればよかったんだろうか? おそらく情報の漏洩を防ぐことを最優先するなら、そもそも外部秘の情報が入ったパソコンは業者で修理してはいけないのだ。データはこまめにバックアップを取っておき、パソコン本体が壊れたらHDDをハンマーで叩きつぶした上で修理に出すしかない。
エディソン・チャンを非難する人は、そこまで徹底して自分の持つ情報を守っているだろうか? しかし少なくとも僕はそこまで徹底していない。僕だってパソコンが壊れたら、業者に修理に出すだろう。だからエディソン・チャンの不注意を責めることは難しいのだが、だからといって被害を受けた人たちに対して彼がまったく何の責任もないのかというと、それはまた違うような気もする。過失による交通事故で、死傷者が出たような話なのかもしれない。
今回被害にあった人はまったくお気の毒。しかし写真撮影に合意があったことも含めて、写真を流出させた者だけを一方的に責めることができないのもまた事実。一番の防衛策は、写真を撮らせないということなんでしょうけどねぇ……。
10:50 午前 | 固定リンク
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