2014年9月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ

« 2010年6月 | トップページ | 2010年8月 »

2010.07.30

映画|死刑台のエレベーター

Shikeidai2010 1957年のオリジナル版を先日観たばかりなので、どうしたって細部まで比較してしまうリメイク版。一番気になったのは半世紀以上前の映画が、はたして現代の日本を舞台にした作品になり得るのかという疑念だった。例えば夜間にビルの電源を落としてしまうという設定。エレベーターに非常呼び出しボタンすらないこと。携帯電話の不在。外壁がガラス張りのオフィスビルでは、外壁を伝って侵入する密室トリックは使えない。そして何より、拳銃をどこから手に入れるかという問題がある。しかしこうした要素は、いとも簡単にクリアされていたように思う。映画を観ていても、まったく気にならなかった。ところがこの映画は、それ以外のところが気になるのだ。完全に秘密にしてきた実行犯の男と不倫相手の社長夫人の関係が、最後の最後に明るみに出てしまうというのがオチなのに、今回の映画ではふたりの関係をまず社長が知っている、同僚の男も知っている、要するにみんなバレバレなのだ。これじゃ最後のオチがなくても、早晩ふたりの関係は明るみに出てしまったと思うよ。

公式サイト
IMDb
映画瓦版

映画|名前のない女たち

Namaenonai パッケージに名前さえ表記されることなく、数万円程度のギャラでカメラの前でセックスする企画ものAVの女優たち。中村淳彦の同名ルポルタージュを原作にした劇映画で、地味なOLがスカウトマンに誘われるままAV女優になる様子を描いている。原作はAmazonのレビューなどを見てもかなり評価が高いのだが、映画のデキは普通だと思う。図式的で類型的なメロドラマになっている部分が大きくて、性を売ること、それを消費することの闇の深さは描き切れていないように思える。でも面白かった。鳥肌実が怪しげなプロダクション社長を好演。主演の安井紀絵さんが映画上映前に簡単な挨拶。試写室には10分前に到着したのだが、既に満席で補助席だった。

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.29

映画|ロストパラダイス・イン・トーキョー

Lostparadiseintokyo 幹生の実家の父が亡くなり、父と暮らしていた兄・実生は幹生が引き取ることになった。実生には知的な障害がある(映画を観る限りでは自閉症らしい)。実生の性的なケアを依頼するためアパートの部屋に風俗嬢を呼んだ幹生は、やがてマリン(ファラ)というその女と不思議な関わりを持っていくことになる。障害者の性の問題、秋葉原に出没する自称アイドルたちの話題など、アクチュアルな話題を盛り込みながら、人間にとって「安住の地」とは何か、人間の自由とは何か、人間の幸福とは何かという普遍的なテーマに迫っていく。基本的には低予算のインディーズ映画。べたべたにリアルでうっとうしい話が延々続いたと思ったら、最後の最後にパッとファンタジーめいた展開へとジャンプする痛快さ。

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.28

映画|リトル・ランボーズ

Sonoframbow この邦題じゃ中身がよくわからない。原題は『ランボーの息子』で、スタローン主演映画『ランボー』に感激した小学生たちが、自分たちでアクション映画を作る話だ。映画ファンなら誰でも好きな、「映画についての映画」のひとつであり、マニアックな映画ファンならずとも一度や二度は必ず観ている『ランボー』に対するオマージュとリスペクトを捧げた映画でもある。映画の製作年次は2007年と少し古めなので、おそらくこの映画に惚れ込んだ配給会社の人が、わざわざ買い付けてきたのだろう。洋画の興行がいろいろと難しい状況で、スター俳優などひとりも出ていないマイナーなイギリス映画を買ってきても商売としては難しそう。それでもこの映画を日本に紹介したいという、その心意気にちょっと感動したりもする。ただし僕自身はこの映画を観ても、特に大きな感動とかはないんだよなぁ……。いろんな要素が取り込まれていて、それらが映画の中でうまくまとまり切れていないような気がする。
(原題:Son of Rambow)

公式サイト
IMDb
映画瓦版

映画|ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う

Nudonoyoru2
 1993年の『ヌードの夜』から17年後の続編。監督・脚本は前作と同じ石井隆で、主演の竹中直人もそのまま前作と同じ役を演じている。ただし話は独立しているので、前作を観ていなくても問題ない。僕も前作は観ていない。主人公を悪夢のような事件にいざなう運命の女を佐藤寛子という女優が演じているのだが、とにかく脱ぎっぷりがいい。ここまで大胆に脱げるということは、演技にも迷いがないということでもある。ヒロインが狂気の発作に襲われたかのように叫び、走り回るクライマックスは、相手役の竹中直人もたじたじ。この映画をきっかけに大ブレイクする女優だと思うのだが、くれぐれも脱ぎっぷりだけが評価されてその手の映画が続きませんように。脱ぐことも身体表現のひとつだから、もちろん今後も必要があればどんどん脱いでくれていいのだが、次はこの女優の脱がない芝居を観てみたい。もうヌードはこの映画でお腹いっぱい。しばらくはいいです。そう思わせるぐらい迫力のあるヌードでありましたなぁ……。この映画の出演女優では、真中瞳さんが久々にスクリーンに復帰しているのも見どころ。一時は引退したと言われてましたが、現在は芸名が東風万智子(こちまちこ)になってます。こちらも今後の活躍に期待。しっとりした、大人のいい女になってます。

■公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.26

映画|不食の時代 〜愛と慈悲の少食〜

Fusyokunojidai 生菜食を中心にした少食と断食で、ありとあらゆる病気を治してしまう西式甲田療法についてのドキュメンタリー映画。しかしこれはドキュメンタリーというより、甲田療法のPR映画でしかないと思う。甲田療法の信奉者だけが登場してインタビューに応じ、それに反対する意見は一切受け付けていない。生命エネルギーのオーラがどうしただの、輪廻転生がどうしただのという話が出てくるとほとんどオカルトチック。紹介されている話にウソはないと思うのだが、本当のことだけ紹介してもそれが本当の意味での本当になるとは限らない。懐疑的な視点を少しでも持ってしまうと、この映画はまったくいただけないプロパガンダ映画になってしまう。結局この映画に足りないのは、作り手自身の考えや主張なのかもしれない。プロパガンダならプロパガンダでも構わないのだが、そこに作り手の確信や信念があればそれは優れたドキュメンタリーになるかもしれないのだが……。

公式サイト
■IMDb
映画瓦版

映画|ANPO

Anpo 1945年の敗戦から15年後の1960年。国会周辺は日米安保条約に反対し、岸内閣の退陣を求める人々で埋め尽くされた。映画はこの60年安保闘争を軸に、日本にとっての戦争、日米関係、沖縄問題などを、安保闘争と画家や写真家たち芸術家の活動という切り口から紹介していく。安保闘争はこの10年後にも70年安保という形で再燃するのだが、これは60年代末の「学生の反乱」を巻き込む形で成立していて、60年の全国民的な政治闘争とはだいぶ異なったものになっている。60年安保では国民が大同団結して「戦争協力なんてゴメンだ」「安保絶対反対」の声を上げたのに、結局は条約が自動更新されてしまった。このことによる挫折感が、50年たっても日本人の中に根深い政治不信を植え付けているように思えてしまう。

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.23

映画|ソルト

Salt CIAに突然情報提供を持ちかけてきたロシア人スパイから、ロシアの潜入スパイだと名指しされたCIA職員のイヴリン・ソルト。彼女は身柄を拘束しようとする同僚たちの手を逃れ、どこに向かうのか? 彼女は本当にロシアのスパイなのか? それともこれはロシアのスパイを自称する男の陰謀なのか? アンジェリーナ・ジョリー主演のサスペンス・アクション映画。アンジーのアクション映画には『トゥームレイダー』シリーズなどもあるが、これはそれよりずっとリアリスティックな設定の映画。とはいえ内容的には荒唐無稽。潜入スパイものとしては韓国映画『シュリ』の方がずっとリアルだったと思うけど(潜入スパイが情報機関に接近して大統領暗殺というところまで同じ)、まあそれはそれでハリウッド映画だし……。Wikipediaによればこれはもともとトム・クルーズ主演の『エドウィン・A・ソルト』という映画として企画されていたそうで、それが二転三転してアンジー主演映画になったらしい。
(原題:Salt)

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.21

映画|TSUNAMI ツナミ

Tsunami 韓国の海岸リゾート地ヘウンデ(これが原題)を、高さ100メートルという巨大津波が直撃するディザスター映画。映画中盤まではヘウンデで暮らす人々の生活ぶりを描写していくのだが、何しろ映画のタイトルからして「津波が来る」ことは明らかだし、その規模が「メガ津波」なのも明らかなので、ここに登場する人たちは殺されるために登場してくるだけの人たち。そんなわけで、ドラマ部分はちょっとねぇ……。大災害でいろいろな人間ドラマが交錯する話って、『ディープ・インパクト』とか先行作品がたくさんある。もっとも『ディープ・インパクト』も既に12年前の映画だから、似たようなコンセプトの映画を再度作ってもいい頃合いなのかもしれない。津波のシーンはハリウッドに外注したそうで、映像の迫力は満点。しかし登場するエピソードにせよ、大災害に対する人々のリアクションにせよ、どうも紋切り型で新鮮味がないような気がしてならない。大災害が来たらどうなるかというシミュレーションも甘いし、人間ドラマもすべて食い足りない感じ。チンピラを演じたキム・イングォンは、『シークレット』にも出ていたなぁ……とか、そういうレベルで反応してしまった。
(原題:Haeundae)

公式サイト
IMDb
映画瓦版

映画|死刑台のエレベーター

死刑台のエレベーター 1957年に製作されたルイ・マル監督のデビュー作。勤め先の社長夫人と不倫関係になった男が、夫人と共謀して社長を殺す。自殺に見せかけた完全犯罪。しかし犯行直後に実行犯である男が会社のエレベーターに閉じ込められてしまう。有名な映画だが初めて観た。犯罪スリラーとしてとてもよくできていて、モノクロームの映像と、マイルス・デイビスのサウンドトラックが最高にスタイリッシュだし、最後のオチも秀逸だ。ジャンヌ・モロー扮する社長夫人が男を利用しているわけではなく、本当に彼を愛しているということが映画の最後の最後にわかる。しかしその愛が、無残に引き裂かれていく。まあ自業自得ではあるのだが、こういう味わいこそフランス映画だね。『太陽がいっぱい』にも似たような味わいがある。この映画を日本でリメイクしていて、僕も近日そのリメイク版を観る予定。50年以上前だからこそ有り得た物語を、現代の日本にどう置き換えるのか見ものだ。
(原題:Ascenseur pour l'échafaud)

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.20

映画|シークレット

Secret 1年前に自らの過失で娘を事故死させて以来、キム刑事と妻の関係はすれ違いを続けている。ある日殺人事件の現場で、キムはその場に妻がいた痕跡を見つける。片耳だけのイヤリング、飲みかけのワイングラス、ちぎれたボタン。それらが警察の手に入ってしまえば、妻は事件の最重要容疑者だ。キムはあわててそれらの証拠を隠滅するのだが……という話。話の筋立ては悪くないのだが、そもそも主人公と妻の関係が険悪になっているので、なぜそこまで彼が妻をかばおうとするのかがわからない。刑事が現場の証拠を隠して右往左往という話にするなら、ここにはもっと別のカセが必要だったのではないだろうか。「悲劇とは近くで観た人生で、喜劇とは離れて眺めた人生」だとチャップリンは言ったが、この映画は主人公に共感できないという時点で「離れて眺めた」ものになってしまい、主人公の演じるドタバタがすべて滑稽に見えてしまう。演奏会の会場から妻を救出しようとするシーンなど、典型的な追っかけアクション、スラップスティック・コメディではないか。
(原題:Secret)

■公式サイト
IMDb
映画瓦版

映画|ナイト・トーキョー・デイ

Nighttokyoday 「東京の音の地図」という原題が、なぜ『ナイト・トーキョー・デイ』という邦題になってしまうのかは疑問。これは田中泯が演じる録音技師が、親しい若い女の死を悼んで綴った物語。映画にはこの録音技師のモノローグが全編についているのだが、映画を観ればわかるように、この録音技師はヒロインの行動すべてを観ていたわけでもないし、彼女から話を聞いていたわけでもない。技師の手もとにあるのは、彼女との会話を録音したいくつかのデータと、彼女との思い出だけ。この技師はそうした小さな手がかりをもとに、女性殺し屋とターゲットになった男の悲恋という物語を作り出したのだ。物語の筋立てが、台詞が、設定が、やたらとドラマチックなのは、きっとこの録音技師がハードボイルド小説や犯罪映画のファンだったからに違いない。録音技師はわずかな現実を「記録」し、そこからひとりの女の愛と死を「記憶」する。娘を失った社長は残されたビデオ映像の「記録」をもとに、娘との関係を「記憶」する。記録と記憶の頼りない関係性が、この映画のテーマかもしれない。
(原題:Map of the Sounds of Tokyo)

■公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.16

映画|ゴスロリ処刑人

Gothloli 謎の組織によって目の前で母を殺されたヒロインが、黒ずくめのゴスロリファッションで復讐するというアクション映画。映画のタイトルにインパクトがあり、ゴスロリファッションの美少女処刑人というアイデアも面白い。これで映画の中身が平均レベルなら、タイトルとアイデアの逃げ切り勝利は確実だっただろう。しかし残念なことに、この映画は中身がショボショボのヘナヘナ。映画が途中からオカルト系統に走ってしまうのはともかく(こうでもしないと美少女ゴスロリ戦士がなぜかくも強いのかという理屈に困るし)、脚本は細部がスカスカだし、演出もヘロヘロで観ていて苦笑するようなレベルだった。徹底的にバカをやって観客の脳髄が麻痺するような大暴走をやってしまうならともかく、この映画はそこまでバカになりきれないまま、へんにスタイリッシュにしたり、叙情的に見せたがったりするスケベ心がある。これが作り手の欲なのか、あるいは羞恥心なのかは不明だが、映画を観ながら「もっとガンガン行け!」と演出の生温さに歯がゆさを感じてしまった。タイトルとアイデアはいいので、同じキャストで物語をリセットして再映画化してもいいと思う。『ゴスロリ処刑人2』とかにするとこのオリジナルの続編みたいになっちゃうので、サブタイトルを付けて区別すればいい。例えば『ゴスロリ処刑人/愛と復讐の堕天使』とか、そんな感じ。ハリウッドもアメコミ原作映画で、何度も何度も物語をリセットしているもんね。

公式サイト
IMDb
映画瓦版

映画|スプリング・フィーバー

Springfever 前作『天安門 恋人たち』の上映を巡って当局と対立し、中国国内での映画製作と上映を禁じられてしまったロウ・イエ監督の新作。いまだ製作上映禁止処分が解けていない中で、家庭用ビデオを使ってゲリラ的に撮影してしまったらしい。撮影や編集に必要な機材が一部の専門家に独占されていた時代と違って、今は映画を作るという意思を持つ人さえいれば、その映画を作るという意思を誰も押しとどめることができないのだなぁ……と思ったりする。これは先日観た『ペルシャ猫を誰も知らない』でも感じたこと。こういう環境になると、誰でも自由に何でも表現できる社会より、むしろ抑圧された社会環境の中から優れた映画作家が登場してくるのかもしれない。なにしろ映画を作ることで、その社会から排除排斥されてしまう覚悟で映画を作るのだ。「なんとなく」では映画が作れない。なぜ今その映画を作るのか、なぜその映画でなければならないのかという強靱な意志の力を持った映画の前に、小手先のテクニックで作られた娯楽映画なんて吹き飛ばされてしまう。
(原題:Spring Fever)

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.15

映画|トイ・ストーリー3(日本語吹替/3D版)

Toystory3 第1作目をリアルタイムで観ている身からすれば、もはや隔世の感がある画面のリアリティ。しかしそうした技術発展にも関わらず、映画に一貫した物語が存在するのはキャラクターのゆえだろう。キャラクターは年を取らない。この映画では、それ自体が物語のテーマになっている。かつてはアニメやマンガに夢中だった子供たちも、やがて年を取り、そうした子供向けのオモチャを卒業していく。でもそうした子供たちから、次の子供たちにキャラクターは受け継がれていく。ウッディやバズの物語はとりあえずこれで一段落だが、彼らの物語はこれからさき何十年たっても、世界中の子供たちを、大人たちを魅了し続けて行くに違いない。映画のラストは一応のハッピーエンド。しかしオモチャを受け継いだ子供が大人になったとき、そのオモチャがまた次の世代に受け継がれるかどうかはわからない。オモチャはいつかゴミになる。もし『トイ・ストーリー』の続編が作られるとすれば、長い年月の間にぼろぼろになり、ゴミとして捨てられてしまう「オモチャの死」を描いてほしい。
(原題:Toy Story 3)

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.14

映画|必死剣鳥刺し

Torisashi 松竹で山田洋次監督が映画化した『隠し剣鬼の爪』『武士の一分』などと同じ、藤沢周平の「隠し剣」シリーズの映画化。しかし映画会社が東映になり、監督が平山秀幸になり、主演が豊川悦司になると、そこには一分の甘さもない冷酷非情な「残酷時代劇」の世界が展開する。互いに藩政の腐敗に憤り、藩の風紀をたださんとして、巨大な権力によって圧殺されていく高潔な武士たちの無残な最後。最後は互いに剣で切り結ぶふたりの男が、同じ思いを抱きながらその思いがすれ違い、結局は刀と刀で命の取り合いをするところに追い込まれていくという悲劇。トヨエツもいいのだが、剣豪を演じた吉川晃司がじつにいい。登場してきていきなり藩主を諌めるあたりは、すごい迫力なのだ。池脇千鶴もよかった。登場人物たちの所作などがじつに美しく、時代劇らしい時代劇として見応えのある作品。映画館は年配の客で6〜7割埋まっていたのではないだろうか。少なくとも前日に観た『踊る大捜査線3』より、ずっと混んでいた。

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.13

映画|踊る大捜査線 THE MOVIE 3/ヤツらを解放せよ!

Odoru3 この映画の1作目は面白かった。2作目もまあ面白かった。でも今回の3作目はダメだと思う。作り手自身が、もうこのシリーズに飽き飽きしている様子が、映画のこちら側まで伝わってきてしまう。スクリーンの上で演じられているのは、これまでさんざん繰り返されてきた『踊る大捜査線』シリーズの模倣やパロディでしかない。オリジナルのキャストが揃いも揃って、贅沢な「踊る大捜査線ゴッコ」をしているのだ。続編映画は同窓会映画だから、揃えられるだけのメンバーは全員揃えてしまう。今回の映画では、引退してその後亡くなった(という設定らしい)和久さんまで、残された手帳という形で、あるいは青島刑事の心の中で響く思い出の声として出演している。これまでに青島が逮捕した犯人たちも、大勢再出演している。同窓会映画としてはよくできているが、しかしそれだけだ。僕はもうこのシリーズの続きを期待しない。青島刑事たちの今後を描くのなら、数年後などと言わずに、例えば20年後の青島刑事を描いてほしい。引退を間近に控えた青島刑事が、後輩の若い刑事たちに何を伝えようとするのかが見てみたい。その頃も相変わらずつかず離れず維持を張り合っている、青島とすみれの関係を見てみたい。

公式サイト
IMDb
映画瓦版

映画|ルイーサ

Luisa 数十年にわたって判で捺したように決まりきった生活を続けているルイーサは、ある日突然、飼いネコが死に、勤め先を首になって途方に暮れてしまう。このままでは一文無しで、ネコの葬式も出せない。彼女は地下鉄で見かけた物乞いたちの姿を見て、見よう見まねで自分も物乞いを始めるのだが……。堅実な生活を守っていたヒロインが、いきなり物乞い生活に転落するというギャップがまず面白いし、ヒロインも含めた登場人物たちひとりひとりのキャラクターが、生き生きとした人間的魅力に溢れる人物として描き分けられているのがいい。最初はとっつきにくい印象のヒロインだが、映画の中盤以降は観客の多くが彼女のことを大好きになるだろう。
(原題:Luisa)

■公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.12

映画|ヘヴンズストーリー

Hevens_story 上映時間4時間38分(途中休憩10分が加わる)という大作映画。瀬々敬久監督の新作だが、こういう長い映画が成立し得るのは、園子温の『愛のむきだし』(これは4時間弱)が一定の成功を納めたからかなぁ……などと思ったりもする。実在の事件を連想させる複数の殺人事件をからめつつ、愛と憎しみの葛藤がもつれ合い絡み合いながら展開していくのだが、映画自体はわりと淡々とした雰囲気で、ドラマチックな感動や感情を突き動かされるようなシーンはあまりなかった。しかしほぼ5時間にわたって試写室缶詰状態でもそれが苦痛になることはないし、物語の先を観たいという気にはさせてくれる。映画を観終えた後は達成感もあるし、これはこれで、こういう映画もありかなぁと思う。キャスティングが結構豪華で、中堅どころの俳優がずらりと顔を揃える。村上淳は苦み走ったいい感じのオヤジになってきた。片岡礼子は久しぶりに観たけど、今でもいい女だなぁ。忍成修吾がいい具合に年を取っているのも注目。寉岡萌希は誰かに似てると思ったら、ナタリー・ポートマンですね。異色のキャストとしては、歌手の山﨑ハコがかなり重要な役で登場。演技力云々ではなく、存在感だけでこの役を引き立たせている。

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.10

映画|それいけ!アンパンマン ブラックノーズと魔法の歌

それいけ!アンパンマン ブラックノーズと魔法の歌 劇場版アンパンマンは毎回かなりシリアスなテーマを持ち出してくるのだが、今回の映画でテーマになっているのは幼児虐待。母親が自分の娘を徹底して洗脳し、世間の幸せは本当の幸せじゃない、笑ってはいけない、歌ってはいけない、美味しいものを食べてはいけない、楽しんではいけないと教え込む。だが成長した娘はそのことに少しずつ疑問を持つようになる。昔話「白雪姫」や「ヘンゼルとグレーテル」の中で母親が継母に変えられているように、この映画でも母親は継母に変えられている。その継母は最初から悪い人であり、悪いたくらみがあって子供を育て、自分の利益のために子供を奉仕させ、役に立たなくなると放り出す。でもこの物語構造自体は、一皮剥けば実際の親子関係の写し絵に他ならない。ところで同時上映の『はしれ!わくわくアンパンマングランプリ』を観ていて思ったんだけど、アンパンマンの住む世界は「アンパンマンワールド」で、そこではアンパンマンの名前を冠したレースが行われているって、いったいアンパンマンさまは何ものなんだよ。交換した後の、使い古したアンパンマンの顔の行方はいつも気になる。

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.08

映画|アウトレイジ

映画 アウトレイジ 北野武の新作をやっと観た。バイオレンス描写がいろいろと話題になっているのだが、それがエスカレートしすぎてむしろ暴力を巡るファンタジーになっている。バイオレンスシーンの中にどぎついユーモアがあり、全身鳥肌が立って毛穴が開くような戦慄と同時に、観ていてつい口元がゆるんで笑い出してしまいそうなシーンが連続するのだ。例えば椎名桔平がラーメン屋の主人を拷問するシーンは最高だった。厨房に乗り込んでいく前の若い店員とのやり取りや、緊迫して殺気がみなぎる店内に事情のわからない客がふらふら入り込んできてしまうくだりには吹き出しそうになる。組織の上下関係の中で無茶な命令を飲まされたり、命令通りに仕事をしているのにその責任を取らされたりと、ここで行われている話はまるでサラリーマン社会そのもの。この話のモチーフは、要するに巨大組織のリストラ話なのだ。末端同士を競わせ、争わせ、そのあげくに難癖を付け、成果を取り上げて、最後は潰してしまう。椎名桔平が最高に良かったのだが、その最後が登場するヤクザたちの中では一番トホホなところに、北野監督のこの映画に対する製作意図のようなものが見える。みんなかっこ悪いのだ。三浦友和も、最後のあの格好には悲しくなっちゃうよなぁ……。

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.05

映画|ベンダ・ビリリ! 〜もう一つのキンシャサの奇跡

屈強のコンゴ魂 アフリカ・コンゴ民主共和国の首都キンシャサの路上で暮らすホームレスやストリートチルドレンたちが、ガラクタ楽器を持ち寄って自作の楽曲を演奏。小児麻痺の後遺症で車椅子の彼らは、観光客から小銭を恵んでもらって生活する毎日。しかしたまたま別の仕事でコンゴを訪れていたフランスの映像作家が、そのパワフルな演奏に魅了されて「こいつらのCDを作るしかない!」と決意する。それから5年。CDが発売されて彼らは一躍世界中の脚光を浴びることになる。この映画で一番衝撃的なのは、彼らがいよいよワールドツアーに出かけるというその日の様子。彼らはツアーに出かけるその日まで、路上で暮らしている。コンクリートの上に敷いた段ボール。道の片隅に作ったテント小屋。まるっきりのホームレスなのだ。それがいきなりワールドツアーに出て、大喝采を浴びる。
(原題:Benda Bilili!)

公式サイト
IMDb
映画瓦版

2010.07.02

映画|おにいちゃんのハナビ

Onihanabi 白血病治療で半年ぶりに退院した女子高生が自宅に戻ってみると、そこでは高校を卒業した兄が引きこもりになっていた。妹は兄を部屋から出そうとあれこれ画策して、ようやく部屋から引っ張り出すことに成功。兄は妹に即されるようにアルバイトをはじめるなど、少しずつ普通の日常生活を取り戻していく。だがそんな妹の身体を、少しずつ病魔が蝕んでいった……。ジャンルとしては「難病もの」ということになるのだろうが、「難病です」「死んじゃいます」「可哀想です」ということをあまりゴリゴリ前に押し出さず、限られた時間の中で妹が兄を助けるという物語になっている。日本文化の根っこにある「妹(いも)の力」を感じさせる物語。そこに新潟というローカリズムが組み合わさって、じつにいいムードなのだ。兄妹を演じた高良健吾と谷村美月もいいのだが、両親を演じた大杉漣と宮崎美子が素晴らしい。大杉漣が息子と並んで食事をするシーンに、僕はもう泣いてしまうのだ。クライマックスで父親が息子を抱きしめるシーンは、泣けるやら笑えるやらの名場面。夜空に大輪の花を咲かせる花火が主役とも言える映画なので、これは暗い映画館のスクリーンの中で観るのがいいはず。DVDだとたぶん感動は半減すると思う。

公式サイト
IMDb
映画瓦版

« 2010年6月 | トップページ | 2010年8月 »