映画|レ・ミゼラブル
ビクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」は何度も映画化されているが、これは1985年に初演され、今なお世界中でロングランしている舞台ミュージカル作品の映画化。吹替を使わず、出演する俳優たちが実際に歌っているというのが売りだが、そのために必ずしもミュージカル向きの声量を持っていない俳優も歌わされている。ジャン・バルジャン役のヒュー・ジャックマンはミュージカル俳優でもあるが、ジャベール警部を演じるラッセル・クロウは声量が足りないように思う。これはフォンティーヌを演じたアン・ハサウェイなども同じ。ただしこの映画は朗々と歌って観客にメッセージを伝えるのではなく、俳優の感情表現の延長で歌を聴かせるという作りになっている。アン・ハサウェイが歌う「夢やぶれて」は最初かすれた声でささやくように歌われ始め、そこに感情が乗って力強い歌声に変わっていく。クロースアップで彼女の微妙な表情をとらえながら、感情の揺れ動きがそのまま歌として聴かせる演出は感動的だ。
(原題:Les Misérables)
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