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2012.12.31

映画|レ・ミゼラブル

Lesmiserables ビクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」は何度も映画化されているが、これは1985年に初演され、今なお世界中でロングランしている舞台ミュージカル作品の映画化。吹替を使わず、出演する俳優たちが実際に歌っているというのが売りだが、そのために必ずしもミュージカル向きの声量を持っていない俳優も歌わされている。ジャン・バルジャン役のヒュー・ジャックマンはミュージカル俳優でもあるが、ジャベール警部を演じるラッセル・クロウは声量が足りないように思う。これはフォンティーヌを演じたアン・ハサウェイなども同じ。ただしこの映画は朗々と歌って観客にメッセージを伝えるのではなく、俳優の感情表現の延長で歌を聴かせるという作りになっている。アン・ハサウェイが歌う「夢やぶれて」は最初かすれた声でささやくように歌われ始め、そこに感情が乗って力強い歌声に変わっていく。クロースアップで彼女の微妙な表情をとらえながら、感情の揺れ動きがそのまま歌として聴かせる演出は感動的だ。

(原題:Les Misérables)

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2012.12.26

映画|天使の分け前

Angels_share コンスタントに新作を発表しているイギリスのベテラン監督ケン・ローチの新作。裁判所から社会奉仕を命じられた素行不良の青年が、自分のために親身になってくれる監督官や仲間たちとの出会いを通して更生していくまでを描く。ただし「いいこと」を通して更生するのではなく、「悪いこと」をすることで更生するという部分に皮肉のパンチが効いている。しかしこれは、それだけ若者たちの置かれている現実が厳しいということでもある。普通の方法ではもう、底辺の生活から抜け出せないのだ。主人公のロビーを演じたポール・ブラニガンはまったくの演技初心者だったそうだが、存在感のあるいい芝居をする。社会奉仕の監督官ハリー役のジョン・ヘンショーもうまい。映画を観ているとスコッチウィスキーが飲みたくなる。

(原題:The Angels' Share)

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映画|ベラミ 愛を弄ぶ男

Belami モーパッサンの長編小説「ベラミ」を、『トワイライト』シリーズでイケメン吸血鬼を演じたロバート・パティンソン主演で映画化した文芸ロマンス映画。主人公の男はイケメンで人当たりがいいという以外に何の才能も取り柄もないが、人並み外れた自尊心と上昇志向の持ち主。彼が出会った女性を次々手玉に取りながら、ブルジョワ階級内で富と権力を手中にして行く。ユマ・サーマンが演じるマドレーヌという女性のキャラクターが出色。人並み外れた学識と才能と野心を持ちながら、19世紀末のフランス女性は社会的な地位が低かった。彼女は自分の夫を傀儡にしてジャーナリズムを操作し、政治家たちを操って政界の黒幕のように振る舞う。周囲の男に愛を求めないという点で、彼女は一番主人公に似ているのだ。もっとも彼女はヴォードレック伯爵のことを心から愛していて、その点で主人公にない弱味を見せてしまうのだが……。愛することは弱味を見せること。しかし人はそんな弱味のある人間を好きにならずにいられない。

(原題:Bel Ami)

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2012.12.25

映画|塀の中のジュリアス・シーザー

Cesare_deve_morire イタリアの刑務所で行われている演劇実習プログラムをモチーフにしたドラマ作品。映画が撮影されているのは本物の刑務所で、出演者もほとんどが本物の囚人と元囚人。彼らが刑務所のあちこちを使って、シェイクスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」の稽古をする様子が綴られていく。ほとんどドキュメンタリーのように見える場面もあるが、映画は台本に沿って演じられるフィクションだ。劇中ではイタリアのさまざまな方言が使われているそうだが、残念ながら字幕ではそのあたりのニュアンスがわからない。それでも登場する役者たち(囚人たち)の面構えは一癖もある者たちばかり。シーザー暗殺後のアントニーの演説は戯曲のクライマックスだが、映画の中ではその後の戦闘シーンにアイロニカルな迫力があって面白かった。かつて社会の中で本物の暴力を振るっていた男たちが、芝居の中で小道具の剣を振るって戦争を行うのだ。しかし本当の修羅場をくぐったことがある連中の演技は迫力がある。

(原題:Cesare deve morire)

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