映画|故郷よ
HPのアドレスにkokyouyoとあるので、タイトルは「こきょうよ」と読むのだろう。「ふるさとよ」とも読めるので、こういう映画はタイトルにルビを振っておいてほしい。チェルノブイリ原発事故についての映画だ。物語の舞台になっているのは、原発から3キロほど離れたプリピャチの町。自然に囲まれた小さな町は、住民のほとんどが原発で働いている。その中で映画の主人公になるのは、事故の起こった日に恋人と結婚式を挙げたばかりの若い女性。事故の前日に父親と川辺でりんごの樹を植えた少年。少年の父親の原発技術者。映画は原発事故当日の町の様子と、町民たちがバスに乗せられて強制的に避難させられていく様子が描かれる。それが全体の3分の1ぐらい。それが終わると、映画は10年後の廃墟になった町の様子を描く。町から離れても、町に住んでいた人たちの心はそこから離れられない。事故で結婚したばかりの夫を亡くした女性は、原発ツアーのガイドをしている。幼い少年は青年になり、事故の日以来行方不明になった父を探している。家族と別れた原発技師は精神に異常をきたし、町に戻る道を見失って今も旅を続けている。原発事故という見えない脅威と、それが破壊してしまう人々の暮らしは、日本の福島原発事故にも通じるものだ。映画に登場するプリピャチの廃墟は本物。その印象を一言で表現すれば「むごたらしい」と言うしかない。
(原題:La terre outragée)
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