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2013.04.24

映画|フィギュアなあなた

13042403 石井隆監督のエロチック・ファンタジー。石井作品だから当然バイオレンスもあるのだが、今回はそれがファンタジーのフィルターにかけられているのであまりギョッとすることはない。むしろギョッとさせられるのは、ここに出てくるエロチックな妄想の部分だろう。佐々木心音のおっぴろげジャンプには胸が躍る以前に、呆れ果てて開いた口がふさがらない。映画監督はここまであからさまに、己の欲望をストレートに表現してしまっていいものなのだろうか。多少なりとも恥じらいというものはないのか。若いグラビアアイドルにあられもない格好をさせて、それを舐めるようにカメラで撮影してゆくシーンの連続は、ポルノと呼ぶにしては即物的な視点に過ぎる。タイトル通り、ここにあるのは生身の女の肉体というより、ひとつのフィギュアであり生けるオブジェなのだ。そんなヒロインになりきった、佐々木心音の根性には感心する。石井監督にここまでいじめ抜かれて、よく頑張りました。

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映画|アンコール!!

13042402 妻を失った頑固ジイサンが、妻の所属していた老人コーラスグループに参加。意外な美声を披露してコンクール出場を目指すという、コメディタッチのヒューマンドラマ。主演のテレンス・スタンプ本人が何曲か歌っているが、ラストでしっとりと歌い上げられる「眠りつく君へ」(ビリー・ジョエル)が感動的。ヴァネッサ・レッドグレイヴが歌う「トゥルー・カラーズ」(シンディ・ローパー)も良かった。素材としては地味なのだが、大スターの存在感で最後まで見せ切ってしまう映画でもある。日本でリメイクするなら誰が主役になるのがいいだろうか。頑固で憎まれ口ばかり、息子との関係がギクシャクして心を痛めているが、それを修復することができない不器用な男。高倉健や菅原文太クラスの俳優が出てくれないと、これはもたないだろうなぁ。日本でリメイクするとなると、ドラマに織り込んでいく楽曲を何にするかがまた悩ましいけれど、こういうのをごちゃごちゃと頭の中で考えるのは楽しいものです。

(原題:Song for Marion)

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映画|旅立ちの島唄 〜十五の春〜

13042401 沖縄本島から360キロ離れた南大東島は、明治に開拓されたサトウキビの島だ。島には小中学校があるが高校はない。そのため島の子供たちは中学を卒業すると、親元を離れて沖縄本島や本土の高校に進学する。この映画はそんな南大東島で暮らす、中学3年生の少女を主人公にしたドラマ作品。思春期の少女がたった1年で子供から大人へと成長してゆく姿を、バラバラに暮らす家族の姿とからめながら丁寧に描いていく。重たいドラマだが、音楽演奏シーンなどを効果的に使っていて印象は軽やか。子供が大人になるための「通過儀礼」の物語とも言える。爽やかな青春映画。主演の三吉彩花が素晴らしく、両親役の大竹しのぶと小林薫もベテランらしい好サポートを見せる。

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2013.04.22

映画|グランド・マスター

13042201 ウォン・カーウァイ監督が描く、伝説の武術家でブルース・リーの師匠だった葉問(イップ・マン)の伝記映画。葉問の伝記はドニー・イェンの『イップ・マン』二部作があって大ヒットしているのだが、『グランド・マスター』はそれより実話に近いのかもしれない。映画の予告編ではもっと激しいカンフーバトルになるような気もしたが、物語は1930年代の佛山から始まり、1960年代の香港で終わる実録大河ドラマだった。バトルシーンは、一応あることはある。しかしあまり強い印象を残すものではない。武術指導がユエン・ウーピンだから、どうしても先行する他の映画と似てしまうのだ。実録だからあまり荒唐無稽なこともできない。映像はきれいなのだが、なんだか眠たい映画だなぁ……という印象。要するに痛快娯楽活劇ではなくて、芸術映画なのだなぁ。芸術文芸畑のアン・リーが『グリーン・デスティニー』が撮った例もあるが、この映画については良い意味でも悪い意味でもウォン・カーウァイの映画であった。『楽園の瑕』(1994)に戸惑った、当時の映画ファンの気持ちがわかるような気がする。ちなみに僕が一番戸惑ったのは、エンディングに近い場面で流れてくるエンニオ・モリコーネの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のテーマ曲。いいのか、これで!

(原題:一代宗師 The Grandmaster)

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2013.04.18

映画|欲望のバージニア

13041801 1930年代初頭の禁酒法時代に、バージニア州で密造酒を造っていたボンデュラント兄弟の実話を映画化。大不況時代のアメリカで、自分たちの食い扶持を稼ぐため稼業として密造酒造りに精を出していた男たちにとって、取り締まり当局との関係は持ちつ持たれつだった。だがそこに新任検事の特別補佐官レイクスは、賄賂の大幅アップを要求。これに従わない者たちを、捜査権限を使って容赦なく叩き潰していく。ボンデュラント兄弟はこの要求を突っぱねたことから、レイクスに徹底的にマークされることになるのだった……。禁酒法時代に捜査当局と対立する男たちと言えばアル・カポネのようなギャングたちが有名だが、この映画は都市部の酒密売で巨万の富を築いた男たちではなく、都会を遠く離れた山の中で密造酒造りをしていた無名の男たちが主人公。彼らは法を破ってはいるが、ギャングではなく、本質は農民なのだろう。

(原題:Lawless)

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2013.04.17

映画|私のオオカミ少年

13041701 父親を亡くした少女が、引っ越し先の田舎の村で出会ったのは、言葉を喋れない不思議な少年だった……。「オオカミ少年」と言うから嘘つき少年の話かと思ったら、これは少年が狼男だったというお話。映画が始まる前に宣伝会社の前説で「女性の方は涙に備えてハンカチをご用意ください」などと言っていたのだが、映画を観てなるほどと思った。物語の設定自体はいささか古風すぎるし不可解なところもあるのだが、SF風、あるいはファンタジー風のメロドラマとしては面白く観られる。でもこれって、韓国版の『トワイライト』みたいなものかもな……。映画を観ていて一番不思議だったのは、物語の時代背景が47年前になっていること。なぜ47年前なんだろうか。特にその必然性があるエピソードはなかったと思うけどなぁ。

(原題:늑대소년)

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2013.04.11

映画|イノセント・ガーデン

13041102 『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク監督が、ハリウッドで撮ったサスペンス・スリラー映画。資産家一家の父親が交通事故死し、それと入れ替わるようにやってきた父の弟。家族の周辺にいる人々が少しずつ消えて行き、最後には主人公さえ消えてしまうという不思議な構成の物語だ。ストーリーは面白いのだが、登場人物たちが全員感情を押し殺し、作り笑いや作られた無表情さを装っているような映画でもある。ミステリーがあり、スリルもあれば、サスペンスもある。出演している俳優たちも立派な顔ぶれ。しかしこの映画にはエモーションがない。ほとばしるような、感情の爆発がない。ヒロインのインディアを演じるミア・ワシコウスカは、小さなイモムシがサナギになりチョウへと変身するように、この映画の中で大きく華麗に(?)変身を遂げる。しかしその変身の過程に、劇的なものが感じられない。最後の最後に、いつの間にか変身していた感じだ。

(原題:Stoker)

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映画|セレステ∞ジェシー

13041101 タイトルは「セレステ・アンド・ジェシー」と読む。原題が「セレステ・アンド・ジェシー・フォーエバー」なので、「フォーエバー(永遠)」にかこつけて無限大記号を使っている。プレスやポスターのタイトルロゴでは、「&」が横に倒れて「∞」に見えるような形のデザインにして、「∞」の下に小さく「and」とフリガナ(?)が添えてある。ちょっとシャレてるけど、記事などでタイトルをどう表記すればいいのかわかりにくい。映画の中身もちょっとわかりにくい。友達夫婦みたいなカップルが、「夫婦でいるといろいろ面倒なこともある。ケンカもあるし、互いの仕事についても口出ししたくなる。これならいっそ別れて友達同士になった方がマシ!」ということで別れて親友になる話だ。なぜここで「夫婦はやめて恋人同士に戻る」という選択肢がなかったのかは謎だけど、まあとりあえず友達の関係にまで後退する。この選択をリードしたのは妻のセレステで、夫のジェシーはそれに賛成したものの、じつはまだ妻に未練たらたらで復縁の機会を狙っているのだが……。別れた夫は妻を忘れるために別の女性と交際を始め、そうなって初めて妻は自分が夫との暮らしを望んでいたことに気付く。ありがちな気持ちのすれ違い。僕の感想は一言でいえば「あんたらバカじゃないの?」である。でも人間は得てして大まじめに、真剣な気持ちでバカなことをしでかすのである。そのバカっぷりには共感してしまう。僕もバカだからね。

(原題:Celeste & Jesse Forever)

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2013.04.10

映画|パパの木

13031002 父が急死して母と4人の子供たちが残された家。家のすぐ脇に立つ巨大な木を、家族は亡くなった父であるかのように感じて、時に語りかけ、その声に耳を傾ける。だが大きくそだった木は四方八方に枝だと根を広げ、家の屋根を突き破り、土台を壊しはじめる。それは亡くなった父の声のようでもあった……。シャルロット・ゲンズブール主演のドラマ作品で、愛する人を失った喪失感と心の傷が、少しずつ癒されていく様子を描く。巨大な木は亡くなった父親の亡霊のように家族を見守るが、それは家族を縛り付け支配しようとする。オーストラリアの自然がとにかく美しいのだが、自然の中で暮らすことの難しさもたっぷり描かれている。僕にはとても、あんな暮らしはできそうにないなぁ……。

(原題:The Tree)

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映画|じんじん

12041001 俳優の大地康雄が自ら企画主演したヒューマンドラマ。大道芸人をしている主人公の姿はどう見ても『男はつらいよ』の車寅次郎だ。この映画は、あり得たかもしれない、もうひとりの車寅次郎の物語に思えてならない。寅さんがどこかの段階でマドンナと結ばれて所帯を持ち、放浪暮らしをやめて堅気の勤め人になったとしたらどうだろう。たぶん寅さんにそんな暮らしは似合わない。新しい暮らしに馴染めないまま、またフラフラともとの浮草暮らしに戻ってしまうだろう。この映画の主人公・立石銀三郎は、そんな寅さんなのだ。佐藤B作が演じる幼馴染みは、寅さんシリーズにおける妹さくらの役回りだ。マドンナは若村麻由美。寅さんである銀三郎は形通りにマドンナに恋をして、形通りにマドンナに振られるのだ。映画の最後に、旅先の主人公の威勢の良い商売の声が響くのも寅さんシリーズと同じ。

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2013.04.09

映画|藁の楯

13040901 「BE-BOP-HIGHSCHOOL」の作者でもあった小説家・木内一裕の同名小説を三池崇史監督が映画化した、バイオレンス描写たっぷりのアクション・スリラー映画。10億円の懸賞金がかけられた連続殺人犯を、福岡から東京まで護送する刑事とSPの奮闘を描く。次々に危機が訪れて、それをひとつクリアするとまた次の危機が訪れて……という話の展開に息つく間もない。話の構成としては、黒澤の『隠し砦の三悪人』に似ているのだ。だが『隠し砦』と違って、この映画には最後の最後まで爽快感がない。護送される容疑者を演じた藤原竜也が、最後の最後まで食わせものなのがいい。ひょっとすると、最後の最後まで観客の予想をいい意味で裏切ったのは彼かも。大沢たかおはともかく、松嶋菜々子でハードボイルドというキャスティングも意外性があっても面白い。伊武雅刀も今回は役者としての底力を見せた。これはハリウッドでリメイクするならどんな配役かな。山崎努の役はクリストファー・プラマーかな……などと思いながら見ていた。

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2013.04.03

映画|ウィ・アンド・アイ

13040302 学年最後の1日を終えて帰宅のためのバスに乗る高校生たち。映画は学校で終業のベルが鳴るところから始まり、バスが高校生たちを乗せて動き出し、最後の高校生を降ろすところまでを時系列に描いていく。ロードムービーであり群像劇。そして観客たちは高校生たちと一緒に1時間半以上もバスで長旅をすることになる。アメリカの高校生たちは、こんなに長距離のバス通学をしてるのだろうか。なんだか大変だなぁ……という気持ちにもさせられる。高校生集団が少しずつ人数を減って行く中で、身にまとっていた重いヨロイのようなものを下ろして、裸の自分をさらけ出していく。しかしこの高校生たちの乱暴狼藉には目を覆いたくなる。まるでパーティ会場だ。大声で叫ぶ。食べ物をまき散らす。他の乗客をからかい、禁煙の社内でタバコをプカプカ。こんなバスには絶対に乗りたくないなぁ……。

(原題:The We and the I)

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映画|愛さえあれば

13040301 『ある愛の風景』や『未来を生きる君たちへ』のスサンネ・ピア監督による、ちょっとほろ苦い味わいのする大人のためのラブコメディ。主演はトリーネ・ディアホルムとピアース・ブロスナンだが、この映画をブロスナンの視点で見るとあちこちに不自然な点が出てきてしまう。これはデンマーク映画なのだから、デンマーク人のヒロインの視点で映画を観ればいい。そうすればこの映画は、それなりに面白く観られるはず。映画としての弱点はブロスナン扮する実業家の男が、なぜヒロインに惹かれたのかなのだ。どちらかと言えば欠点の多いヒロインだから、なおさらそう思ってしまう。でもヒロインの視点でこの映画を観れば、そうした欠点には目をつぶれるはず。だってイケメンのお金持ちが自分に惚れてくれて、嫌な気分になる女性なんていないでしょ? 理由なんてどうだっていいじゃん!

(原題:Den skaldede frisør)

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2013.04.01

映画|箱入り息子の恋

13040102 年齢35歳。彼女いない歴35年。童貞。趣味はカエルの飼育とゲーム。特技はカエルの鳴き声の物まね。そんな主人公が初めての見合いで出会った相手は、色白美人の深窓の令嬢。だが彼女は子供の頃から目が見えなかった。彼女の父親は「お前のような男に娘が守れるのか!」と息巻くが、彼女の母はこの見合いにむしろ乗り気であれこれと二人のために世話を焼く。何度かのデートを重ねて関係を深めて行くふたり。だがこのことが、彼女の父にばれてしまい……。これは面白かった。今年になって観た映画の中ではナンバーワンで、たぶん今年この後にどんな映画を観ても、これが5本の指からこぼれ落ちることはないだろう。吉牛(吉野家の牛丼)でこれほど泣かせる映画がこれまであっただろうか。「そんなものはない!」と断言しよう。そしてそんな映画はこれからも「絶対に現れない!」と断言できるのだ。恋をするって素晴らしい。年甲斐もなく、素直にそう思える映画だ。

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映画|極道の妻たちNeo

13040101 家田荘子原作の人気シリーズ「極道の妻たち」の最新作。タイトルは「妻(おんな)たち」と読ませていたのに、略称が「ごくつま」だった作品だが、今回は原作と同じく普通に「妻(つま)たち」と読ませる。主演は黒谷友香で、敵役に原田夏希。製作配給は東映ビデオで、基本的にはビデオ市場向けの作品を劇場公開するというスタイルだろう。「極妻」という素材にも、こうした劇場公開の手法にも「今さら」という感じがするが、映画の内容はそれ以上に「今さら」の感が漂うものになっている。ヤクザ組織内の内輪もめで、昔気質のヤクザだった夫を殺されたヒロインが、復讐のためにドスを振るって大暴れ。いったいこれはいつの時代の、どこの話なんだろうか。映画の中だけに登場するファンタジーとしての関西。(今回の映画は舞台が京都になっているらしい。)普段は洋装のヒロインが、殴り込みの時だけなぜかわざわざ和服に着替えて乗り込んでいくのも不自然かつ不合理だが、このあたりは様式美と言うことか……。老舗看板シリーズの復活だが、これはこの1本で終わりそうだなぁ。

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