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2013.05.29

映画|ベルリンファイル

13052902 豪華キャストの大型スパイアクション映画なのだが、もうひとつスッキリしないのはなぜだろう。北朝鮮と韓国のスパイ同士がしのぎを削る話で、これ自体は昔からあるパターン。ただこの映画ではハン・ソッキュが演じる韓国側の情報局員が狂言回しで、実際の主人公はハ・ジョンウが演じている北朝鮮側の諜報員なのだ。北朝鮮のスパイが明らかにこの映画のヒーロー。だが韓国ではそれをあまり露骨にも描けないので、ハン・ソッキュを出してきてダブル主演の体裁でそのあたりをぼかしてある。しかしこのぼかし方がどうも言い訳がましい。物語自体を北朝鮮スパイの視点で描き、韓国側をまるっきり脇役か敵役にしてしまった方が、サスペンスとしては盛り上がったような気がするのだ。その上で、最終的にはやはり北朝鮮の非人間性が浮かび上がってくるような映画にすることは可能だったと思うし、その方がずっと残酷な映画になったと思うけどなぁ……。

(原題:베를린 The Berlin File)

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映画|クロワッサンで朝食を

13052901 名奉行大岡越前がある事件の取り調べの参考にと「女はいつまで性欲があるのか」と老母にたずねたところ、母は黙って火鉢の灰を火箸でならしていたという。越前はこれを見て「なるほど、女の性欲は灰になるまで(死ぬまで)続くのか」と悟ったらしい。本当か嘘かは知らないが、わりとよく知られている話だ。でも死ぬまで性欲がある女の人ってどうなんだ?と思ったら、この映画の主人公がまさにそういうタイプだった。ジャンヌ・モローが演じるフリーダという老女は、いつまでも「女」であることをやめない。訪ねてきた昔の恋人に「わたしってモンスターかしら?」とたずねると、彼は一言「そうだな」と答える。この会話にまったく違和感がないのだからすごい。このあとの場面もすごかったのだが、それはさておき、ジャンヌ・モローは年を取ってもチャーミング。しわくちゃの婆さんなんだけど、ふと笑顔を見せたときのその表情に、若かりし日の面影が今もしっかり残っている。輝かしい華やかな笑顔。ああ、ジャンヌ・モローだ!と思う瞬間だ。

(原題:Une Estonienne à Paris)

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2013.05.25

Kindle|電子書籍を出してます

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2013-05-05
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2013.05.24

映画|G.I.ジョー バック2リベンジ

13052401 1作目は観ていないのだが、2作目から見てきた『G.I.ジョー』。いろいろと見どころの多い映画だったが、一番の見どころは断崖絶壁の上をロープ1本で飛び回りながらのチャンバラシーン。これは以前、シルク・ドゥ・ソレイユの映画で似たようなものを見たことがある。おそらくアイデアのもとは同じだと思う。面白かったのは、映画の終盤で悪の組織が「世界中の核兵器を廃絶しよう」という提案を行い、強引に世界中にその提案を飲ませてしまうというエピソード。やり方は物凄く強引なのだが、このエピソードの真意がよくわからない。このぐらい強引にやらないと核廃絶などできないのだから、現実には核兵器全廃なんて無理だよな……という意味なのか。それとも悪の組織が提案する核廃絶自体が、そもそも悪だという理屈なのか。世界中の核保有国の中に、ちゃっかり北朝鮮が入っているのが意味深だ。おそらく北朝鮮の政治指導者たちは、この映画を観て涙を流して喜ぶに違いない。何しろアメリカやロシアやフランスやインドや中国などと共に、自分たちの代表も核保有国の一員として扱ってもらっているのだから。でも北朝鮮の核兵器がミサイルに搭載されるのは時間の問題だろうから、いずれ同じような場面が現実の政治の世界でも見られるようになるのかも。

(原題:G.I. Joe: Retaliation)

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2013.05.17

映画|インポッシブル

13051701 2004年の年末に起きたスマトラ沖地震は、地震による大規模な津波で30万人とも言われる死者・行方不明者を出した。この映画はタイのリゾート地でその大津波に襲われ、家族全員が津波の濁流に呑み込まれながら奇跡的に全員が生き延びて再会を果たした実話の映画化。モデルになったのはスペイン人一家のようで、映画自体もスペイン映画。しかし世界マーケットを意識して、ナオミ・ワッツとユアン・マクレガー主演の英語作品になっている。事実の歪曲だと言うなかれ。ヨーロッパの映画界がある程度の大作を作ろうとすれば、こうやって世界のマーケットに出さないと成り立たないのだ。この点で日本映画は日本語のままでも商売が成り立つのだから恵まれているのかもしれないし、世界に進出する機会が減っているのかもしれない。まあこれは映画自体とは別の話ではあるけれど……。この映画はやはり観ていて痛々しい。スマトラ大地震での津波の様子はイーストウッドの『ヒアアフター』にも描かれていたが、被害の様子をどうしても東北の被災地に重ね合わせて見てしまう。行方不明になった家族を探してあちこちの避難所や病院を回り、掲示板に目を通す人たちの姿は、2年前の日本でも見られたものだろう。奇跡的に家族全員が助かった家族の物語はハッピーエンドが約束されているのだが、この生還は本人たちの努力云々ではなく偶然のなせるわざ。感動的なドラマだが、失われたものの大きさを思うと苦い結末だ。

(原題:Lo imposible)

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2013.05.15

映画|トゥ・ザ・ワンダー

13051502 良くも悪くもテレンス・マリックの作品だ。素晴らしい映像美と、その上にかぶせられた出演者たちの心の声のようなナレーション、管弦楽曲。『ニュー・ワールド』から『ツリー・オブ・ライフ』、今回の『トゥ・ザ・ワンダー』までそれは一貫しているように思う。今回の物語はシンプルだ。ヨーロッパで子持ちの若いフランス人女性と知り合ったアメリカ人男性が彼女と恋に落ち、いろいろあって彼女と結婚することになるが、その後は気持ちのすれ違いから別れてしまうという話。基本的に「駄目になっていく男女関係」の話なので、映画を観ていてもちょっと気が滅入ってくる。映画には「なぜそうなったのか」「他に方法がなかったのか」という話がまったく出てこない。描かれているのは「状況」ではなく、既にある状況の中で右往左往している人間の「気持ち」なのだ。この映画は登場人物たちの置かれた状況に寄り添うのではなく、登場人物たちの気持ちにぴったりと寄り添っている。状況説明はないけれど、本人の気持ちだけが垂れ流しなのだ。これって何かに似ていないか? 酔っ払いのよくわからないグチである。気持ちはわかる。でも済まない。お前の言っていることはさっぱりわからないのだよ……。この映画が酔っ払いのグチと違うのは、映像が途方もなく美しいということだ。

(原題:To the Wonder)

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映画|夏の終り

13051501 瀬戸内寂聴について、僕の母親はずいぶん昔だが、「瀬戸内晴美でしょ? あの人の書く小説はイヤラシイ」と言った。本作はその瀬戸内晴美(後の寂聴)が昭和37年に発表した小説の映画化。これを観ると、瀬戸内作品をリアルタイムで読んでいる人たちが「イヤラシイ」と言う理由が、なんとなくわかるような気がするのであった……。本作は原作者の実生活を色濃く反映した自伝的小説で、登場人物にはそれぞれモデルになる人物がいる。宮沢りえが主演した瀬戸内寂聴の伝記ドラマ「出家とは生きながら死ぬこと」では、実在の人物名を小説「夏の終り」の人名と入れ替えており、瀬戸内作品を読む人にとっては、この作品が著者の自伝そのものに近い扱いを受けていることがわかる。主演は満島ひかりだが、この人はこの年でもう大女優の貫禄が出てきている。男女の腐れ縁を描いた作品ということで、この映画を観ていると成瀬巳喜男の『浮雲』を思い出してしまうのだが、満島ひかりに僕は往年の高峰秀子を感じてしまうし、この作品の小林薫にも森雅之を多少感じないわけではない。時代的にも昭和20年代から30年代が舞台だから、少し重なり合うところもあるんだけど……。熊切和嘉監督は『海炭市叙景』に通じる落ち着いたタッチ。監督インタビューを読むと、やはり成瀬巳喜男や小津安二郎の映画をかなり参考にしたとのこと。

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2013.05.02

映画|モネ・ゲーム

13050201 美術品コレクターの大富豪に煮え湯を飲まされ続けている美術品鑑定士が、モネの贋作でコレクターを一杯食わせようとする話。計画はよく練られていたが、騙そうとする側がまるで素人なので話は計画通りに進まない。話をそれらしく演出するためアメリカから呼びよせた女が、コレクターに気に入られてしまったことから話はさらにややこしくなる……。詐欺映画にしては軽やかさに欠けるが、これはもともとそういう男を主人公にした映画なのだからそれ自体が欠点というわけではない。ただ全体として、必要以上にボリュームたっぷりの印象は受ける。配役が豪華であることは別に悪いことではないのだが、話がもたつくので(そういう話だからしょうがない面もあるのだが)その豪華さが重荷になってしまう。豪華キャストの詐欺映画といえば『オーシャンズ11』があるけど、あっちはプロフェッショナル集団だから話がサクサク進んでいく楽しさがある。でも『モネ・ゲーム』はそれがない。まあこれはこれで面白いんだけれど。

(原題:Gambit)

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